ポケモン


↓古 ↑新
◆ドーブル 





絵の依頼が来た。


真っ白な紙に流麗な筆でひとつだけ、私の故郷を描いてほしい。


そう書いてあった。



裏返してみても差出人の名はない。


いつまでに、という期限の指定もない。



ただ、太陽と砂の香りが鼻先をかすめた。




依頼を受け取ってから幾日か過ぎたが、絵は描かなかった。


描けなかった。


紙から薫る太陽、砂。


依頼主の故郷が乾燥地帯であろうことは読みとれたが、如何せん情報が少なすぎる。



いづれ描く日が来るのだろうと砂の手紙に封をする。


,

2009/07/04(Sat) 00:55 

◆ライボルトとリザードン 




赤の中にリザードンはいた。

彼の体内から流れでる血は彼の皮膚より赤く、さめていた。


「死ぬの?」


片隅にいたライボルトは倒れて動かない彼に聞いた。


「………」


「死ぬの?」


「……………」



閉じていた瞼がふるえ、睫毛が重たそうに持ち上がる。


霞む視界はライボルトを捉えた。



「死んだら埋めてあげる」


あんたの屍見たら若宮は悲しむだろうから。


でも、と常と変わらない口調でライボルトは続けて言う。


「あんたが死んだことに気付かないなら、若宮は悲しまないよ、ね」


_

2009/07/04(Sat) 00:06 

◆リザードンとカイリュー 




リザードンをはじめとする火の民の寿命は長くもないし短くもない。

戦に出ない火の民は大抵が60の歳月を数えてから死んで逝く。


100を越えることはない。




君はあと何年生きられるの、とカイリューが聞いてきたからそう答えてやった。


じゃあ龍は何年生きるんだと聞く。



「わからない、なぁ」


私より前に生きてた龍は皆戦で死んでしまったから。


今生きてる龍の中では私が一番年長だよ、と付け加えた龍は表情が見えない。



年齢を聞くのはやめた。



ひどく龍がおそろしい。



-

2009/06/30(Tue) 21:33 

◆ライボルトとフライゴン 




ライボルトはフライゴンが好きだ。

もちろん愛には違いないけど、親愛や主に対する敬愛の念のそれだ。


だからできる限りフライゴンの役に立ちたいし、悲しませるなんてもってのほか。


だけど今、目の前で哀しみに浸るフライゴンにライボルトは何もできない。

フライゴンを悲しませたのはライボルトではないし、したがってライボルトが慰めても傷をふさぐことはできない。




「何が若宮を泣かしたの」


フライゴンは何も言わない。


この方が悲しむことなんて限られている。




「リザードン、」



フライゴンの眼がかすかに揺れる。

2009/06/29(Mon) 15:37 

◆↑の続き 



「やっぱり、ね」



せきを切ったようにぼろぼろと涙の滝が決壊する。

それでも声すら出さずに泣くところがこの方らしいと言えばらしいけど。

フライゴンの眦の辺りをぬぐってやりながらライボルトはためいきをついた。


何だってあんな、ライボルトからみたらちゃらんぽらんな奴に大事な主が泣かされなくてはいけないのか。

正直リザードンを殺したくてしかたがなかったけど、今は静かに号泣する龍をなだめるのが先か、とライボルトはぼんやりと思った。



-

2009/06/29(Mon) 15:37 

◆アブソルとカイリュー 



一目みて、それは確かに生き尽くして死んだものであると感じた。


椿の大樹であった。


もっとも今は生きていた時の精気をなくし緑を枯れさせてはいるが、それでもなおずっしりと腰をおろし天を刺すようにそびえ立っている。


「…見せたかったものとは、この樹か」

「そうだよ、アブソルはこういうの好きかな、と思って」


静かに問答が響くなか、椿の大樹はおし黙り続ける。

だがそれは何かは知らず安堵感のようなものがあり、名残惜しさのようなものもあり、けれども少しもべとつかない質の良い感動が存在していた。

2009/05/16(Sat) 21:28 

◆↑の続き 



「まこと、寿命というものをよく体現した樹であることよ」

「死んでからもこんなに威厳を保っている樹を見つけたのは久々でね、君に一番最初に見てもらいたかったんだ」


久々、ということは以前別の樹で見たことがあったのだろう。

龍の言う久々、が気にはなったが、百年前か、五百年前か、千年前かのいずれかだろうと仮定して何も問はなかった。

必要がないからだ。

もう一度、天空を刺す椿の大樹を仰いだ。


そしてやはり、隣にいる龍もまた椿の大樹であると実感する。




_

2009/05/16(Sat) 21:27 

◆リザードンとフライゴン 





龍は老いない。


年を幾十年重ねようと、その外見は出会った当初と変わらないのだ。


しなやかで細い緑の両手がしわがれた己の右手を包む。



緑の手、則ちフライゴンは悲しんでいるように見えない。


薄情だ、と罵るのはお門違いなことなど分かりきっている。


それでも問わぬ訳にはいかなかった。




「…悲しまねぇのか」


思ったよりひび割れた声にフライゴンがゆっくりと顔を向ける。


寝たきりの自分から見たフライゴンはやはり感情が読めない。




「何を悲しむことがございましょうや」

2009/04/17(Fri) 22:55 

◆↑の続き 




フライゴンは眼をしかと見据えて言った。



「死は生けるもの全て必ず訪れるものでしょうに、何をいったい恐れるのです?」

2009/04/08(Wed) 12:29 

◆ライボルトとリザードン 




「何か欠点があるほうが完璧なものより良いっていうけどさ、俺間違いだと思うんだよね」

「なんでだ?」

「あんた欠点だらけで良いとこなさすぎなんだよ」

「こんな色男隣にはべらせて馬鹿言ってんじゃねぇ貧弱カマ保護者」

「貧弱じゃないしオカマじゃない!」

「あ、保護者ってのは否定しねぇんだ」

「若宮の保護者なんて最高のポジションじゃん!いっつもそばに仕えてられるしね!」

「保護者は保護者で終わると思うがな」

「うっさい黙れこのへたれ野郎が!」







----------------
二人は仲良し(^q^)

2009/04/06(Mon) 12:37 

次の10件→
[TOPへ]
[カスタマイズ]



©フォレストページ