短編(書く方)

□calling you
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calling you



近くて遠い
貴方と私の距離

震える手で受話器を握り締める。
合格発表の時より緊張する。
今から私はクラスの男の子に電話を掛ける。
男の子に電話を掛けるなんて初めてだし、ましてや想いを寄せる相手にだなんて。

『悪いけど、音斗葉が藤原に今日の連絡事項を伝えといてくれるか?』
先生の言葉が頭の中でリフレインしている。
日直が欠席者に連絡するのはクラスで決まったことで今更拒否する理由なんてない。
だけど、よりによって私が藤原君に電話をすることになろうとは。

いや、嬉しいんだけどね…

思い切って番号を押す。
長めのコール音
そういえば私は藤原君について電話番号しか知らないなぁなんて考える余裕もある。
『はい?』
「あ、あの…藤原君と同じクラスの音斗葉ですけど、」
『あぁ、音斗葉さんね?ちょっと待ってね。』
受話器の向こうで藤原君を呼ぶ声。
お母さんだろうか。
というより私の事を知ってるみたいだった。
…会った事あったかな…

『はい。もしもし?』
「あ、もしもし。藤原君?」
『藤原さん家の基央君です。』
藤原君てこういう事も言うんだ。
クールなイメージだったからすごくびっくりした。
「あの、今日の連絡なんだけど、」
『うん。あ、ちょっと待って…はい、どうぞ。』
「そ、そんなにないんだけど、時間割り変更が1限と3限が交替になって、英語の小テストがあるみたい。範囲は教科書のP125〜P129。」
『ありがとう。こんだけ?』
「うん。」
『…』
「…」
変な沈黙が流れる。
どうにかしないと。
「あ、あの…」
『ん?』
「大丈夫?」
『今はだいぶね。ちょっと喉痛いけど。』
「そっか。お大事にね。明日は来れそう?」
『うん。』
「良かった。じゃあ、またね。」
『また明日ね、音斗葉さん。』

電話を切ったあとも会話が頭に焼き付いて離れなくて恥ずかしかった。
今思えば"明日は来れそう?"とか"良かった"なんて…

******

翌日藤原君は学校に来た。
昨日の事を思いだすと変に意識してしまう。
「おはよう。音斗葉さん。」
「え!?あ、お、おはよう…」
いつの間にか藤原君が机の前にいた。
「あのさ、昨日電話ありがとね。」
「日直だったから…」
なんでこう可愛げのないことしか言えないんだろう。
「あぁ。そっか、そうだよね…」
藤原君の声のトーンが心なしか低くなった気がした。
「喉、大丈夫?」
「んーまだ痛いかも。」
そういえばポケットに飴を入れてたかもと思いブレザーのポケットに手を突っ込む。
出て来たのはイチゴ味の飴だった。

「…いる?」
「ありがとう。」
藤原君は飴を食べてにっこり笑った。
「おいしい。」
「私それ好きなの。」
「あ、最後の1個だったとか!?」
私は思わず笑ってしまった。
「何か変な事言った!?」
「ううん。優しいんだなぁと思って。まだあるから大丈夫だよ。」
「そっか。」
なんだ。
結構普通に喋れるじゃん。
そう思った矢先藤原君を呼ぶ声。
「あ、悪ぃ…」
「どうぞ、どうぞ。」

会話は途切れてしまったんだけど、藤原君との距離はちょっと位縮まった…かな?



*後日談*
「音斗葉」
「ん?」
「お弁当持ってきた?」
「え、と…購買派なの。」
「良かった。これ、こないだのお礼。」
渡されたイチゴサンドには"ふじわら専用"と書かれていたとか。


―――――――――――――LINER*NOTES
駄文メーカーの音斗葉ですので、ここでバラシを。
最後の後日談の"ふじわら専用"はファンの皆様なら御存じの藤君がイチゴサンドに書くというあのサインでございます。
このお話の中にはもう一つ意味がありまして、まぁ"好きだよ"的なあれですね…(またしても上手く書けないorz)
"お前は俺のもんだ!"的な。
…いやぁ言われてみたいもんですね(笑)
めっせーじ/##ENQ1##


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