短編(書く方)

□ナイトドライブ
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ナイトドライブ



―赤から青に変わる間にキスしない?

キスしよう。



「いい。」
「は?」
チラッと横を向くと、紅は目をキラキラと輝かせていた。
今にも胸の前で手を組みそうなほどだ。

紅は車のテレビで最近始まった恋愛ドラマを観ている。
ゲームキャラの様にきれいな顔をした人気アイドル扮する主人公がヒロインに向かってキザなセリフを言ったとこだった。

「こういうのが好きなわけ?」
「素敵」
そう言う紅の目はドラマに釘付けのまま。

さっきから隣りで運転してる俺は恥ずかしくてしょうがない。
普通、そんなこと言うやついないって。

先日韓国の恋愛ドラマのストーリーを『ありえない』と一蹴したその姿からは想像できないハマりっぷりだ。

「何、怒ったの?」
CMになって紅が話しかけてくる。
「怒ってないよ。」
「ふーん。」
「…」

CMの時間なんて以外と短く、ろくな会話にならないまま紅の視線は画面の方に戻るわけで、つくづく不器用だなと思う。


暫くして番組はニュースへと切り替わった。
どうやらドラマは終わったようだ。
「満足した?」
別に深い意味なんてなくて、ただ感想を聞いただけだった。
「やっぱり怒ってるでしょ。」
「別に怒ってねぇって。」
今度はものすごく疑わしそうな目で見てくる。(そういう気がするだけなんだけど。)
「そ。」
紅はそっぽを向いてしまった。

車内の空気が急に重くなる。沈黙が流れ、ニュースキャスターの真面目な態度が余計に空気を重くしている気さえした。

それから数十分間沈黙は続いた。
一番困るのは信号待ちの時で、色んなことを考えてしまう。
今紅は何を思っているのだろう。
紅にも憧れるものがあったんだ。
次から次へと浮かんでくる。
紅はといえば頬杖をつきながら車窓を景色を眺めている。

何回目かの信号待ちの時、自分は無茶な怒りというかそれに似たモノをぶつけられている気がした。

だいたい自分が悪いことをした覚えは無いし、怒っていると思い込んでいるのは紅のほうだ。
なんとかして一矢を報いてやろう、そんな気になった。

「紅」
「…何?」
「あれ、月蝕かなぁ」
運転席側の窓の上の方を指す。
月蝕なんて嘘。
「月蝕ぅ?聞いてないけどなぁ。どこ?」
紅がこっちに寄った隙をつく。

「な、ちょ!?」
「赤から青に変わる間にキスしない?」
「は、え?」
「キスしよう。」
「待っ…」
紅の言葉になんか耳を貸さず、キスする。

信号は青になってたけど、珍しく他に車は無かった。

「もう1回、しとく?」
「い、いいっ!!」
「それは素敵ってこと?」
「違っ…」

紅の意思なんて無視なんだけどね。


「素敵?」
「負けました。素敵ですょ。藤君にはかないっこないですょ。」
「分かったならいい。」
「…やっぱり怒ってたんじゃん…」
「もっかい、」
「しません!!」


―――――――――――――LINER*NOTES
今回は堂本剛さんのナイトドライブという曲から思い付きました。
冒頭に書いたフレーズがすごく好きなんですよね(*^_^*)
それプラスちょっとSな藤君と。

私の中じゃSな藤君に敵う人ってそうそういないんじゃないかなと思います(笑)
めっせーじ/##ENQ1##


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