短編(書く方)

□心感温度
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心感温度



雨が指先から体温を奪った。
人肌のぬくもりが
こんなにも芯に染み込むとは。



借りてたCDを返しに行った。
藤くんの家の方向に用事があったから、直接でもいいかなと思ったのだ。
軽く玄関先で話して別れた。
その後用事を済ませた。
確かにここまでは晴れていた。

部屋の前でちょうど回想を終わらせ、インターホンに手を伸ばす。

ピンポーン

『…はい。』

寝ぼけたような声。
あれから寝ていたのだろうか。

「あの…傘、貸して欲しいなー…なんて…」
『えっ!?紅ちゃん!?』

ダダダッと音がして、勢いよくドアがあいた。

「濡れてるじゃん!!入って入って!」
「傘あったらすぐだし大丈夫だよ?」
「ダメだって!風邪ひくべ?」

半ば強引に引き込まれた。

「タオルタオル。あ、ほら、上がって。」
「う、うん」

藤くんの指示されるままにしか頭が働かない。

「風邪ひくからさ、シャワー浴びといでよ。」
「え…そんなのダメ!!」

頭が働かなさすぎて、否定を口にしてしまう。
言ってからしまったと思った。

「ふふふ。」

だけど、藤くんは何時ものように口元に柔らかい三日月を描いた。

「でも風邪ひいちゃうし、今回は予測不可能だったし。…俺、何もしねぇよ?」
「そういうんじゃないですっ!!」
「ふふふ。決まり。今なんか着替え持ってくから。デカイかもしんねぇけど、セーターとかでいいかな。シャンプーとか何でも使って。」
「ごめんね…」



「…有り難うございました…」
「あぁ、服大丈夫だった…って、何してんの?」
「えーと、…」

シャワーを浴びたらうっかり顔を洗ってしまった。
つまり、メイクが全部とれてしまった。
私のメイクは濃い方ではないと思う。
だけど、やっぱり、藤くんは男の人だ。
男の人の前でスッピンなんて高校生以来で、恥ずかしい。
手持ちのメイク道具は無くてどうしようも無いのだけど。
だから最後の悪足掻き。
タオルで顔を隠しているのだ。

「ほら、ちゃんと乾かさないと、風邪ひいて寝込むべ。」
「わわわっ」

無造作にぐしゃぐしゃと頭をタオルで撫でられた。
子供がお母さんに頭を乾かしてもらうように。

「メイクしてなくても、十分可愛いべ。」

うっかり気を抜いたら、見られてしまった。

藤原さんはズルい。
私の弱味を簡単に見つける。
お世辞でも可愛いなんていわれたら…

「コーヒーでいい?」
「うん。」

そのうちに部屋にコーヒーの匂いが漂う。
雨の心地よいノイズとシャワー上がりの感覚が私を眠りへと誘う。

あー…いいなぁ、この感じ。

だんだんとまどろみの中に混じっていく。

「はい、おまちどーさま」
「ありがと〜」

うけっとたコーヒーの温かさの程よい痺れ。

「よいしょ。」
「どしたの?」

向かい側に座っていた藤くんが、隣にやって来た。
猫背で寝癖の付いた髪の毛をかいた。
ホント、猫みたいな人。

「なんていうかさ、その…ほら、」
「何?」
「えっと、…怒んない?」
「怒んないよ。」

小さく多分、と付け加えるのを忘れない。

「なんかさ、いいなぁ、って。こういうの。」








「夫婦、みたいでさ。」

あぁ、同じ事を思っている。
私も藤くんと同じ温度だった。

「…真っ赤。」
「ばっ!ちょっ、そんなことねぇって!」
「ふふっ」

私よりも年上なのに、まるで少年のよう。

きっと私はそんなところが好きなんだ。

「おかわりちょーだい」

もう少し、雨宿りしてたいから。

自分じゃない温度は
どうしてこうも
あたたかい。

―――――――――――――LINER*NOTES
ごめんなさい!
私のミスで書き直しました。
でも書き直したほうが気に入ってる←
初期のラストはまた別のところで登場するかもです。

またも謎の関係。
それでもってヒロイン、Sですね、S。

私の勝手なイメージなんですけどね、
藤原さんって恥ずかしげもなく照れることをサラッと言っちゃうと思うんです。
(アレ、なんかタラシみたい?)
でね、口元に手ぇあててやべぇ、恥ずかし。みたいなね。
男らしくて可愛いみたいなね。

いつかそんな私の勝手なイメージを書けたらいいな。

皆さんはどんなイメージですか?
めっせーじ/##ENQ1##


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