短編(書く方)
□お一人様限定。
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お一人様限定。
結局早い者勝ち。
真面目で勝てるのは亀だけなわけで。
あ、たまに隅っこに売れ残ってたりするけどね。
「見てみて!チョコ!チョコもらった!」
「あぁ、あれか、チョコレート会社の陰謀。てか陰謀の日って早まったの?」
今日は1月下旬。
お菓子会社の策略とか言う(非リア充が広めたような)陰謀の日ではない。
この目の前に居る増川という男、簡単に言えば腐れ縁。
幼馴染だ。
犬のように構わずにはいられない顔つきのおかげで母性本能をくずぐられるのかしょっちゅう女子に餌付けされている。
(加えて言うならば噛んでばかりで噛み噛み王子なる異名を持つ。)
「あんたねぇ、お菓子ばっか食べてたら太るよって太ってないんだな、すんませんでした。」
そいでもってこの体型!
何食べても太らないんだから腹が立つ!
藤原の方がガリガリだけどいい勝負だ。
「お、チョコじゃん。何音斗葉から?」
「んーん、隣のクラスのおんにゃ、女の子。」
「またかよ!お前ホントお菓子には苦労しねーなー」
直井がお菓子に手を伸ばすも、腕のリーチを活かしそれを阻止するヒロ。
相変わらずにぎやかだ。
うるさい。目の前でやるな。
「音斗葉はあげないの?」
「誰に?何を?」
「ヒロに、チョコを、バレンタインに。」
藤原はあいつ、実はすげぇ期待してるよと言う。
「毎年あげてるよ。」
「50円チョコじゃなくて、ね。」
苦笑された。
…そんなこと言ったって。
2月に入るとお菓子作りの本をあちこちで見かけるようになった。
授業中、没収される子までいる始末だ。
「その熱意を勉強に向けろっての。」
「紅ちゃんなにげに成績いいもんね〜」
「一言多い気がするんですけど。」
ヒロにお菓子を作ってあげる…。
ないないない。
考えただけでもおぞましい。
「50円あったら10円ガム5個も買えるじゃん。」
「作るの嫌だったら、食べてよ。」
「私が?」
「味見ぐらいならいいでしょ?」
友人の頼みとあらば断れない。
だけど私はこのことをひどく後悔することになる。
「なんっっっっっで私がチョコ作ってんの!!」
はじめは味見だけの約束だったのに、あれよあれよという間に結局チョコを作ってしまった。
「だれにあげるの!こんなにたくさん!私さすがにこんなに食べないよ?」
「え〜…じゃあお父さんとか、友達に配ったら?増川くんたちならきっと食べてくれるよ。お菓子好きみたいだし。」
はめたな、こいつ。
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「…と、いうわけで。“作りすぎたので”どうぞ。お納めください。」
「やったー!!」
「さんきゅー」
「お、トリュフいいねぇ。」
放課後、集まっていた4人に事細かに説明して渡した。
もうすでにみんなチョコをもらっているようで何個か可愛らしくラッピングされた箱が見える。
ま、わたしはタッパに詰めてるだけなんだけど。
「あれ、ヒロ食わねーの?おいしいよ。」
「なくなっちゃうよー」
「あ、ホント?結構これ時間かかってさー。私も1個…ヒロ?」
ヒロは黙って何かを考えているようだ。
「俺、」
「何?」
「50円チョコ欲しい。」
「何で?おんなじチョコじゃん。」
子供か!というツッコミは飲み込んだ。
「おrぇさ、」
((((あ、噛んだ。))))
「なんでもいいんだよ。俺だけのがいいんだよ。」
「はい?」
「俺のために、紅がくれるのがいいんだよ。」
なんっだ、ソレ。
泣きそうな顔…いつもか。
私の何がいけないというのか。
「じゃあなんだ、明日持ってくるよ、」
(伝わってねーなー)
(流石、音斗葉。)
(これ、一生伝わんないんじゃない?)
「んーん、これでいい。」
ちゅっと軽いリップ音がした。…ような気がする、のだけれど頬が嘘じゃないというように、熱い。
「は?!ちょ、何、?!え、アンタ、今!!今!!」
(っげ!)
(アイツ、やりやがった!)
(下!下向け!見るな!)
「おいしーね。」
ヒロは私の唇に残っていたチョコを…
「…ふっざけんな!」
痛いよ!と叫ぶけれど、こうでもしなきゃ、私もうやってけない。
3人に見られたと思うと恥ずかしい!
あぁ、恥ずかしい!
なにこれ公開処刑じゃん!
(俺さー本命チョコもらったけどなんか悔しいわー)
「いひゃい、いひゃいってばー」
「この口か!この口がなけりゃ!!」
(お似合いだね。)
―――――――――――――LINER*NOTES
初かいわれ(G)夢でした。
ふにゃんとした雰囲気なので、男勝り?なヒロインにしてみました。
勢いに任せて駆け抜けたようなお話になりました。
トリュフって、チョコパウダーかかってましたよね?
あれなかった?
私甘いの弱いので、間違ってたらすいません。
しかしヒロさん以外の言葉、誰が誰だか分からないですね〜…;
精進します…
めっせーじ/##ENQ1##