寂しがりの夜想曲
□ご挨拶しましょう
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チュンチュン
何ともありきたりな目覚めを促す鳥の声、なんて文句は言わないでおこう。
私のベットが沿う壁にある窓から差し込む太陽の光に思わず目がくらみそうになる。
時間を知ろうとチェストから愛しのスマホちゃん引っ張ると、ぐんっと引かれてしまった。
もそもそと掛け布団から顔を出すと充電器のコードのせいだった。
「しょーがない」
いくら休日とはいえど午前には起きて生活のリズムを作れと上司に怒られたのを思い出して、布団から抜け出す。
スマホの画面を軽くタップすると、大きく表示されるデジタル時計。
10:48
「おー、ギリセーフってトコ・・・・・・」
朝特有のかすれた声で呟き、背筋を伸ばす。
バキボキ言うのは仕方ないよ、働く女はみんなそうだもの。
って誰に言い訳してんだ私。
ぼさぼさになっている髪を手ぐしで解かしながらリビングにつながるドアノブを捻る。
「「あ」」
ふとすぐ目に着いたのは、赤く小さなカウチに腰かける猫っ毛にYシャツ姿の昨晩の男性。
「お、おはようございます・・・!」
「・・・早いのか?」
「あ、スミマセン・・・」
わ す れ て た !!
昨日とは違って意識のはっきりした表情で首を傾げる男性に私は焦りまくり。
「あのっ!か、かかかか顔洗ってきますっっ!!」
「あ、ああ・・・!」
綾乃 の どもる こうげき!▼
いけめん は おどろいた ようだ▼
綾乃 は どうする
にげる
わらう
☛ かおをあらう
脳内で昔のドット絵ゲームのように選択肢を出して洗面所に引っ込む私。
「あー・・・びっくりしたぁ・・・」
未だに飛び上がりそうになった驚きのせいでバクバクとなる心臓を抑える。
洗面所にある鏡を見ると、髪はぼさぼさ、寝起きの所為で悪い目つき。
「うっわぁ・・・最悪だ。こんな顔で出てたのかよ・・・・・・」
とりあえず、顔を洗わなくては。
髪をとかし顔も洗い、我が家なのになぜか恐る恐る洗面所からリビング(ウチの一番広い部屋)へ出る。
やっぱり彼はカウチに腰かけたままだ。
低いカウチだからか猫背になってしまっている彼の姿に申し訳なくなる。
ふと、彼が形の言い唇を開く。
「すまない」
「・・・え、あ、ハイ。・・・・・・えっ何がですか!?」
「いや、昨晩のことだ」
「は、はぁ・・・・・・?」
彼はなんだか申し訳なさそうに頭を下げる。
「女性の、しかも独り暮らしの家に上がり込んで・・・」
「あ、いえ!私がお誘いしたんですし!ってなんだかアレだな・・・。えっと、とりあえず大丈夫です!行く宛てないって
昨晩おっしゃってましたし、なんかとても大変そうだったので・・・!」
「あ、ああ。まあそうなんだが・・・・・・」
やっぱり申し訳なさそうに床へ視線を反らす彼に私もいあたたまれなくなる。
っていうか、そんなカーペットガン見されると「やっべ掃除したっけ」とか心配になってくる。
この空気を変えたくって、思わずバッと顔を上げて言う。
「あ、あのっ!お名前、聞いていいですかっ!?」
「・・・・・・・・・」
驚いたように目を見開く彼だけれど、少し呆れたように小さく笑ってくれる。
「名前を聞かずにどう呼ぶと言うのだ」
「あ・・・・・・!そ、そうでした!あははは・・・」
笑ってくれた。
そんな些細なことが少し嬉しくって、私も思わずはにかむ。
彼はカウチから床へと正座に座り直したので、つられて私も正座する。
「私は桜庭綾乃といいます。気軽に呼んでください!」
「ああ。俺は斎藤一だ。これからよろしく頼む」
「いっいえいえ!!こちらこそ!」
つられて私も頭を下げると、「・・・俺が世話になる側だ、あんたまで頭を下げなくていい」と斎藤さんが呆れ気味に言う。
私は恥ずかしくって苦笑いしてから、よしっ、と立ち上がる。
「じゃあ朝ご飯にしますね!遅くなっちゃって申し訳ないんですけど・・・・・」
「ならばブランチと言うのが正しいのではないか?」
「あ、・・・そうでした。すみません・・・」
「あんたが謝ることではない」
「あぅ・・・。そう、ですね」
彼はきっちりとした人なのだろうか、私なんかダメ出しされてぐうの音もでない。
改めて思うのは、私結構ガサツらしいから直さなきゃ、とか、斎藤さんの身の回りの物買いにいかなきゃ、とか。
案外この生活を楽しみにしているのかも。
イケメンだしイケメンだし(←大事なとこでもないけれど繰り返して言いました)。
というか、最初は迷惑だなぁとか言っちゃったし。
・・・・・・帰るところがないって、どういうことなんだろうか・・・。
そんな事を思いながら、お気に入りの胸元にヒヨコのプリントがあるエプロンをしながらキッチンに立った。
よろしくお願いします
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(ところで斎藤さん、何かリクエストありますか?)
(・・・豆腐があれば、味噌汁を頼む)
(了解です!(昨日のお酒にも効くし・・・))