堀鐔の日常。
□♥8
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いつものお昼下がり、私はポ●キーを煙草に見立てて口にくわえて歩いていた。
今日は午前だけの授業で、部活も再登校だから神威たちと一緒に下校している。
夏休みが近付いているだけあって、昼時の日差しがとても強い。
手で日光を遮っても、半袖やスカートから出ている部分の日焼けが気になってしょうがない。
「家帰ったらお昼ご飯なるんでしょ?先に食べちゃうと食べきれなくなっちゃうんじゃない?」
「んー、でも今日は体育と保健が連続で疲れたから、当分補給」
「だから太るんだろ。一昨日は1s増えてたし」
「何で知ってんの!?他の人には言わないでよ!!?」
昴流が心配してくれて、神威は余計なひと言や悪態をつく。
夏の暑さにやられてくらくらしそうだ。
「しかし、この暑い中チョコレートは甘すぎないか?」
私が口にくわえたポ●キーを横目に見て、少ししかめ面で言う神威の首や頬には、日光が反射して光る雫が伝っている。
「…冷やせば最強」
「でも、現に今は溶け始めてるよね、チョコ」
「うん、まじで危ない」
昴流も神威もあまり汗かかない方なのに、暑い、と呟きながら伝う汗をぬぐうほどだから、
今年の猛暑は例年とは比にならないのだろう。
私も首のあたりを締め付けるようなリボンを指で解き、Yシャツの第1ボタンを開ける。
「あ゛〜、暑い………」
「言うな、余計暑くなる」
「うん…本当に、どうしようもない暑さだね」
「言うと、自律神経が、なんちゃらって、涼しく、なるみたい………。
こばとちゃんから聞いたー」
暑さゆえに呂律が回らなくなって、言葉が途切れ途切れになる。
女子の夏服の袖は膨らみ仕様なので、その中の空気が湿って暑いので、男子のすっきりした袖口が羨ましい。
まあでも、スカートのほうが足は涼しくて、そこはいいのかもしれない。
「あー、決めた。私、もう今日はお昼マ●クにする」
クーラー効いているし、と思って財布の中身の確認をし始めると、昴流達は驚いた顔で私を見る。
「え!一緒に食べないの!?」
「………昼飯、母さんがなまえに作って貰えって言っていたんだが」
神威たちのお母さんがそういっていると知ると、マ●クに行きにくくなる。
昔からお世話になってたし…。
けれど、私は暑いのは苦手で一刻も早く猛暑から逃れたいのだが、神威たちの家のクーラーは故障中。
あまり彼らのお家にお邪魔したくない。
…そうだ。
「でマ●クいかない!?」
先程の低テンションからうって変ってテンションが上がった私を見て、2人は顔を見合わせて、
「「……………わかった」」
と頷いた。
「よっしゃ、決まりね!」
やった、とガッツポーズをして、
「え、ちょっと!?」
「走るのは疲れる、歩け」
「私は一刻も早く猛暑から逃れたいんですー!」
2人の手をとって最寄りのマ●クへ走った。
「着いたぁー!涼しい!!」
走って来てたくさん汗をかいた私たちを、自動ドアとクーラーの涼しい風が迎えてくれる。
エデンの楽園よりも楽園なんじゃないかな、ここは。
「大声で騒がしい。注目されるだろ」
「おやおやシャイですなぁ、神威君」
「五月蠅い」
「ふ、2人とも、出入り口で喧嘩してると邪魔になっちゃうから、行こう?」
神威に小突かれてムッとして口喧嘩をする私たちを慌てて昴流が止めに入ってくる。
「うん」 「…ああ」
そんな昴流に私たちはなぜか反発できない。
まあ、昴流が正しいからだろうけど。
「なまえは何にするの?」
「んー、ル・グラン トマトにしようと思う。あと、キャラメルラテ」
「神威は?」
「ベーコンレタス」
「昴流は?」
「僕も神威と一緒にしようかな」
「おお、さすが双子!」
お昼時なので席を取り逃がすまいと、とりあえず席の陣取りとして向かう。
お、窓から遠くてソファと普通の椅子の4人用の席を見つける。
「あそこにしようよ!」
「うん」
「なら急がないと」
と走って向かい、椅子に荷物を置く。
「あれ、ソファじゃなくていいの?」
「ん。私荷物番してるから、先に買ってきて」