鬼道さんと女子高生book
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「苗字! ちょっと待て!!」
放課後、彼氏の家に向かおうとするあたしを引き止めたその声は決して優しい物ではなく寧ろ怒りに満ちていた。
そしてその声と共にあたしに集まる周りの痛い視線。
声も聞こえてくる。またかよ。や、懲りないな。と言う声。
「髪を黒染めしてこいと言っただろ!」
「知らねーよ」
「お前、その口の聞き方はなんなんだ! 大体お前みたいな奴がいるから我が校の評価はだな」
「ぐちぐちうっせーんだよ、クソジジイ!!」
これで何回目だろうか?もう数えきれない。毎日こうして注意されるのが日課だったりする。
それでも学校にはちゃんと行ってるあたしを少しは褒めて欲しいくらいだ。
雀だろうか? どこからかチュンチュンと鳴いている声がする。
その鳴き声すらもあたしを落ちこぼれと言って馬鹿にしているように聞こえるのは気のせい?
クソジジイこと、うちの学校の生徒指導を担当している教師を無視しそのまま歩き続ける。
周りの視線はもうあたしのほうなんて向いてなくて……。
孤独だな、なんて少しあたしらしくない事を考えてしまった。
「遅かったな」
「クソジジイ」
「またあいつかよ」
彼氏の家は学校から歩いて約30分。決して短くはない。
彼氏はと言うと、どうやら今日は学校を途中でバックレたよう。
お気楽なヤツ……そう思ったがあたしも同じようなもんかもしれない。
部屋は奇麗とも言えないが汚いとも言えない。
が、勉強道具なんて見当たらなくゲームやエロ本が目についた。
カーテンは閉め切っていてあまりいい雰囲気ではない。
今から目の前にいるこいつとやるのか……そう思うとここから逃げ出したい衝動に駆られた。
「シャワー入ってくるわ」
「うん」
そう言う彼氏はバスタオルだけ持って部屋を出て行く。
しばらくすると少し遠くの方から水の音が聞こえ始めた。