フラグクラッシャー(笑)
□渡りに船
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入学式を難無く終えた次の日。
今日も空は憎たらしいくらいの快晴で、風が気持ち良かったです。(あれ、作文?)
「ねぇ、梨緒ちゃんはもう入る部活決まった?」
『部活?』
「うん! 部活!」
部活、か……。懐かしい響きだな。そういえば昨日も担任が仮入部期間になる前に決めておけー、的な事を言っていたような。言っていなかったような。うろ覚え春。
ふむ。
部活と言えば青春。青春と言えば部活。これからの学生生活が充実したものになるかどうかのターニングポイントとも言えよう(と、長年の経験から私は思っている)。
返ってくる答えは分かっているが、参考までに隣で返事を待っているさつきちゃんに聞いてみた。
『さつきちゃんはもう決まってるの?』
「私? うん。幼なじみがバスケ部に入るみたいでね、私もマネージャーとして入ろうかなぁって」
『そうなんだ……ちなみにその幼なじみは男の子? 女の子?』
「男子だよ。名前は……「おい、さつき!」大ちゃん!」
後ろ側のドアからさつきちゃんを呼ぶ声がして、もしかして……と、嫌な予感がちらつきながらもそちらを見れば、そこにはガングロ(死語)のエース様が立っておられました。てかデッカ、これでつい数週間前までランドセル背負ってたとかマ?
「お、いたいた! ちょっと聞きてぇ事があんだけどよ」
そう言ってガングロくん、もとい青峰大輝は、違うクラスにも関わらずずかずかと入ってきてさつきちゃんの目の前までやって来た。
因みに私はというと、青峰氏には私が視界に入っていないようだったからほけーっと二人を眺めていた。
『(はー……こうして見ると二人とも美男美女のカップルみたーい。まだ中学生に成り立てだから幼さが残ってたりして初々しさが際立つけど、これが2年、3年もするとああなるんだねぇ……)』
……なんてばばくさい考えをしていると、私の視線に気付いたさつきちゃんが「どうしたの?」なんて覗き込んで来るもんだから、その仕草に思わず胸をときめかせてしまった。
『え、な、何でもないよ。それよりその人は? さつきちゃんの……彼氏?』
「な! ちちち、違うよ! こいつはただの幼なじみ! ほら、さっき話してた……」
『あ、そうなんだ』
顔を赤くして否定するさつきちゃん可愛かったです。
「おい、さつき。こいつ誰だよ」
「昨日、友達になった子がいるって言ったでしょ? その子だよ。名前は高橋梨緒ちゃん」
「あー、そういえばそんなことも言ってたな……」
さして興味もなさそうにこちらを見てくる青峰大輝。
てか興味ないならこっち見んなし。観覧料取るぞ。嘘だけど。
「大ちゃん、話ってこれだけ?」
「おう。サンキューな!」
ニカッと笑って教室を去っていく青峰。
あぁ、あれが所謂ピュア峰なるものか。確かに可愛い。
「ごめんね、話中断させちゃって」
申し訳なさそうに眉を下げてくるさつきちゃん。『全然気にしてないよ』と告げると、「良かったぁ」と、老若男女誰もが一瞬で惚れるであろう微笑みを見せてくれたもんだから、お姉さん心の中で発狂しちまったよ。
『部活だけど、まだ具体的には決まってないから色々と見学してみようかなって思ってるんだ』
「そうなんだ。あ、もし梨緒ちゃんさえ良かったら一緒にバスケ部のマネージャーやらない?」
それはなんとも素敵で甘美なお誘いだけれども、それはつまり自分から死亡フラグを設立しろと言われているようなものだから『考えておくね』と、当たり障りのない返答をしておいた。
……私の顔、引き攣ってなかったかな……?
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