公式CP推しなんですっ!

□01
1ページ/3ページ


時間は深夜を跨ぐか跨がないか、そんな頃。私、佐伯忍は、目の前の強敵から目を逸らせないでいた。


『くあぁ、眠い、だがしかし眠ることは許されないのである・・・!』


目の前の強敵、もとい書きかけの卒業論文をジッと睨みながら、キーボードへと手を向かわせては触ることなく離す。そういったことばかりしているせいか、当たり前のように文字数は増えることなどなく、時間だけが過ぎていくの繰り返し。
そろそろこの長きに渡る戦いにも終止符を打とうと、一度身体を伸ばしてみるも、そんなことで終えられるのであれば今頃こんな夜遅くまでノートパソコンとにらみ合っていることもないわけで。


『もぉー!授業がなくてバイトと遊びに専念できると思いきや、とんだ落とし穴だよ・・・』


三年までに必要単位をすべて取り終えていた忍は、四年生では授業がゼミのみになるため、バイトをぎりぎりまで入れ、暇な時は思い切り遊ぶと決めていた。しかし、卒業するために必須条件である卒業論文を甘く見ていたようで、提出期限が迫っているこの時期に頭を抱えながら資料片手に画面とにらめっこしているというわけである。


『はぁー、今日何してた?昼間やっとけばこんな遅くまで・・・あ、映画見てたわ・・・』


今日の昼間、最近再熱した作品の映画を某レンタル屋で一気に借りてきたことを思い出した。
ちなみに、朝から夕方まで一気に見ていたこともあり、今画面を見るたびに目がシパシパするのはこのせいである。
忍は、周りの重度なオタクとは違い、適度に漫画やアニメを嗜んでいる(それでも他の一般人に比べれば、漫画の所持数も見ているアニメの種類も多いが)。毎年公開しているかの作品を、時間があったからと、友人に誘われたからという二つの理由で公開初日に連れられ映画館へと足を運んだのが運のツキ。


『はぁ・・・とんだ沼だったぜ・・・』


中学だか高校だかの時に一度沼へ突き落とされ、一度なりを潜めていた熱が再上昇してしまったのである。
今年の映画、【純黒の悪夢】はなんでも黒の組織がメインで出てくるとのことで、『最近原作もアニメも見てないけど話に着いて行けるか』という心配をしていた。


結果は杞憂に終わったわけだが。


それどころか、やはり一部分からないところがあったにはあったため、途中で諦めていた漫画を大人買い(ネットって便利だね☆)して一気に読み、再度映画館へ向かう・・・。
これが無限ループの始まりである。


『正直、ここまではまるとは思わなかったのである』

・・・などと供述しており。かくして、コナン沼にあっけなく落ちた彼女は、今日もハッピーオタクライフを満喫するべく、歴代の映画一気見をしていたわけである。


『よし!今日はたぶんこのままだらだらしてるだけになりそうだし、寝よう!』


その行動力を、もう少し卒業論文制作に分けてあげられないものか。そう叱ってやる人間は、一人暮らししている彼女の近くにはおらず、忍は嬉々としてノートパソコンの電源を落とすと部屋を明るくしていた電気を切り、背もたれとなっていたベッドへと潜り込む。


『明日の自分にバトンターッチ!おやすみなさーい』


明日も、今日と同じように卒業論文に頭を悩ませる一日を送ると疑っていなかった自分を、盛大に殴りたいと思う出来事が起こるなんて思いもせず・・・。











次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ