Love at first sight.


□7.ドッヂボール
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・伊吹視点



期末テストも終わって、夏休みまであと数週間。
今日あたしたちはA.B.C組合同でドッヂボール大会をしている。

各クラスでチーム1と2に分かれてひたすら試合をする。
あたしと詩音と…あと柳くんはチーム2だ。


それでさっきはB組のチーム2と試合をしてたんだけど…







「当たれって酷くない詩音!?」

「酷くないしー! 伊吹1人だけだったんだから当たったほうが早く終わるじゃんか!!」

「うっ…で、でもっ真正面から向かわないと!」

なにその剣道精神。

「てゆーか柳くんが外野に行かなかった…ら…」

「…うわ、」






隣を見てみると、柳くんが他のコートを見ながらノートに何か書いている。
またデータを取ってるみたいだった。

丸井くんと、ジャ、ジャ……ジャックく「ジャッカルだ」…ジャッカルくんの。







「…ああ、ちょうどいいな。平田、相手コートを見てくれ。」

「え?うん…」





柳くんに言われてジャッカルくんたちの相手コートを見ると、目に映ったのは…







「あ、直衛だー」

「…………」

「あ、なっちゃんもいる!」

…………

「…柳くん、あの、目閉じてください。」

「…もっと真っ先に目に映るやつがいるだろう。」

「え…あ、」






誰のことだろうと視線を泳がせていると、コートの隅に立っている幸村くんと目が合った。

こっちに向かって微笑みながら手を振っている。


…えーとこれは…柳くんにだよね…







「…平田?」

「なに?」

「振りかえさないのか?」

「…ん? あれ柳くんに向けてでしょ?」

「いや、あれは明らかにお前にだろう。」

「え、嘘。なんで?」

「……俺に聞かないでくれ。それよりも早く…」

「あ、うん…」






おそるおそる顔の横で手を振りかえしてみた。






「…これでいいかなぁ?」

「なぜ俺に聞く?」

「だって…柳くん……モノシリ。」

なんでカタコトなんだ。…安心しろ、大丈夫だ。」







あれを見てみろ、という柳くんの言葉と一緒に指差された方向をみると、幸村くんがすごい早さで手を振っていた。






「……どうだ?」

「え…うん。手首のスナップすごいね。

「…………」





あれくらいできたら技のキレがよくなりそうだなぁ…
ちょっと練習しようかな。

…こうか、いや…このぐらいかっ!!


すると不意に手を誰かに掴まれた。





「?詩音?」

「伊吹…なんか勝手に勘違いしてる人がいるから止めようか。

「は?」






よく意味がわからなかったけど、詩音が真剣な顔をしてるから止めた。
……勘違いしてる人って誰だろう。



ぼんやりとそんなことを考えながら柳くんの方をみると…さっきとは比べ物にならないぐらいの早さでノートを書いている。

え、早っ…腕が見えないよ?






「や、柳くん…一体なに書いてるの…」

「…………」






…なんかブツブツ呟いてて聞いてくれないし…



直後、試合終了の合図の笛が鳴り響いた。
どっちが勝ったんだろう…
ジャッカルくんたちのチームかな、強かったし。


コートに目をやるとそこには、
ボールを片手で掴んでる幸村くんが立っていた。



あれ…C組って前半負けてた気が…







「……伊吹、」

「なっちゃーん! おつかれ!」

「すごいのに好かれちゃったね。」

「…へ?」

「次あたし達と試合?」

「え、っと…柳くーん!」

「なんだ?」

「次ってなっちゃん達と試合?」

「いや、次の試合はC組のチーム2とだ。」

「ありがとー……違うって。」

…柳ってドラ●もんみたいだね。じゃっ。」

柳くんは青くないよ。じゃあねー」







すかれてるって…なんだろ。
やだなぁ…




心読まれちゃったのか…
(×⇒透かれる ○⇒好かれる)

いやまぁ大したことは考えてないけどさ…なんか嫌だ!







「伊吹早くー!」

「はーい…」





とりあえず試合に集中しよ…




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