立海大附属


□私にできる願い事
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「今日は七夕だよね」

7月7日の朝練前、部長様の一声と共に、青々とした笹がレギュラー達(遅刻の赤也除く)を出迎えた。




私にできる願い事






「えーっと……?」

ドアノブを握ったままブン太がそう言ったきり、一同は静まり返った。

部屋の天井に届くか届かないかといった丈の、新しい笹。ご丁寧に、色とりどりの笹飾りも付いている。

そんな、およそ部室に似付かわしくないものが、扉を開けた途端に目に飛び込んで来たのだ。絶句するのも無理はないと分かってほしい。
誰にだ。誰かにだ。


ブン太を筆頭に、部室に入ろうとして硬直したレギュラー達は、幸村の

「早く扉閉めてくれないかな」

という静かな一言で動き出した。


「どこから来たんだよぃ、これ」

着替えながら(さすがに長時間突っ立っていると真田の説教を食らいそうだった)ブン太が訊くと、真田が昨日の晩、近所の人に持たされたのだとか。


「狭いぜよ。俺のロッカー侵食されとる……」
「まあそう言わず。季節感は大切ですよ、仁王くん」

ブン太が着替え終わったあたりで、柳が時に精市、と幸村を呼んだ。


「短冊は、付けないのか?」
「さすが柳、よく気が付くじゃないか!」


すると幸村はその言葉を待っていたかのように目を輝かせて自身の鞄をあさり始める。


ブン太はそれを、また幸村君の気まぐれイベントが始まる、くらいに軽く考ええていた。



しかし、そうはいかなかった。

結果から言えば、ブン太は、この気分屋部長のおかげで、この日一日をもんもんと過ごすことになる。




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