立海大附属
□嵌められたのは…?
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「すみません、みょうじ先輩……」
「え? ……ああ、違う違う、赤也君のことじゃないから」
嵌められたのは……?
なまえがついたため息が聞こえたのだろう、向かいの赤也がすまなそうに謝ってきた。
手のひらを振ってなまえはそれを否定したのだが、赤也はしゅんとしたままだ。
荒々しくテニスをしている姿からは想像のつかない態度を、彼は不意打ちで見せる。
実際、反則だと思う。時折見せる気遣いは不器用なくせに温かく、萎れる姿は年相応に可愛いげがある。
かと思えば不意に男らしい顔付きになったりと、とにかく感情豊かで素直なのだ、この後輩は。
「……で、できた?」
訊くと頷くので、なまえは今まで赤也が奮闘していたルーズリーフを受け取る。
場所は音楽室、時は部活動後。
今、なまえと赤也は、机を挟んで向かい合い、顔を付き合わせている。
何のために?
答えることは敢えて控えるが……
ちなみに、なまえの手の中にあるプリントには、なまえの英字が並んでいる。
赤也から受け取った手製の問題を流し見て、なまえは目を見開いた。
……これは何と言ったものか。
なまえは頭を抱えた。
教えた事の内、三分の一くらいは理解できているようだ。まあそれは良いとしよう。が、
「yesterdayの綴りが違うってのは、どうだろう……」
なまえが呆れを通り越した驚きから呟くと、赤也は「えっ、」と言ってなまえの手からルーズリーフを引ったくり、食い入るように覗き込んだ。
「え、うそ、違うっスか!?」
え、そう言われても……。
なまえは赤也の教科書の適当な箇所を開き、指して見せた。
「こうね、yesterday。目に焼き付けて。―――じゃ、新しいの一枚あげるから」
なまえがルーズリーフを取り出すと、赤也は次に何が来るか予想できたらしく、ひくりと口の端をひきつらせた。
「はいこれ半面、正しい綴りで埋める!」
うー、と唸りながらも言われた通りにルーズリーフに向かう赤也を横目に、なまえは先ほどの問題の採点にかかった。
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