立海大附属
□ルピナス
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中庭に着いたとたん黒い空気が俺にまとわりつく。
出所を見ると、幸村が噴水のとこに座っとった。
「ゆーきむら、」
「燃え尽きろペテン師。」
「ピヨォッ!?」
「全国のヒヨコに今すぐ謝れ。」
「なんでじゃ…」
「あ゙?」
「すいませんでしたーっ!!」
………あかんあかんあかんあかんあかんあかんあかんあかん…超機嫌悪いんじゃけど。
というか機嫌悪くなるなら喧嘩せんだらええのに…相変わらず不器用な2人じゃのう。
けどま、俺はそんな2人が好きやし、はよ仲直りさせたるか。
「…とりあえず幸村、なまえに謝りんしゃい。」
「なんで俺が? 神の子だから?」
「全く関係ないぜよ!?」
「冗談だよ。……嫌だ。」
「あー…あれじゃ、俺は花のこととかよくわからん。」
「まぁそうだろうね。で?」
「じゃけど…なまえの言うように『リナリア』と『ルピナス』は似とると思うがの。ちょっとは。」
確かに花は全然違うし、葉っぱも全く似とらん。
雰囲気…も違うの…
大きさも…あれ、
よく考えたら全然似とらん。
「……すまんの幸村…全然似とらんぜよ。」
「だろ? 全く…」
あれ、ほんまよく見たら全然似とらん…
なんでちょっとは似とるとか思ったんじゃろ?
なまえにつられたんかの…?
「っていうか見なくても分かるだろ? 全然違う花言葉なんだから。」
「……ん?幸村今なんて…」
「は? 全然違う花言葉なんだから?」
「…………」
花 言 葉 !?
「っええぇぇぇぇぇえ!?」
「うるさいなー…なんだよ?」
「っ…幸村、あのな。なまえが似とるって言っとるのは花のことじゃ。」
「……………………………え、」
俺がそう言うと、幸村は目を丸くした。
手を口に当てて俯く。
「……だからなまえあんなに粘ってたのか…」
「ああ、ちょっとは似とるってな…」
「…似てないけどね。」
「…おー」
「ま、全然似てないとは言えないか。」
幸村は数秒間考える素振りをみせると、1人頷いた。
「これは俺から謝らないとね。仁王、なまえは教室にいた?」
「…いや、多分…」
俺は視線を上に向けた。
なまえは多分屋上におる。
幸村も分かったのか、屋上に行こうと体を反転する。
…………ま、
「待ちんしゃい。」
その動きを幸村の肩を掴んで止めた。
「仁王?」
「俺が屋上に行ってなまえを中庭に行かせるぜよ。」
「はぁ…? なんで?」
なんでって…それは……
「なんでじゃろ?」
「いや俺が聞いてるんだけど。」
ああ、うん。そうじゃな…
でもなんか…口から出てきたんじゃ。
幸村は俺を怪しそうに見ると、ため息をついて噴水のとこに座った。
「いいや、別に。よろしくね。」
「え、あ、おぉ…」
「でも5分で連れてくること。」
「逝ってくるぜよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「仁王漢字違う。」
俺は猛ダッシュで中庭を飛び出した。
早く屋上に行かな…本当に逝かされる!!
「……なに考えてるんだか…」
幸村は仁王が居なくなった中庭でそう呟いた。
再びため息をつくと顔を上に向け、屋上を見る。
「……またこんなつまらないことで喧嘩してたら…」
その先の言葉を飲み込んだ。
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