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□雨=告白
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『雨=告白』

「あ……」
「どうしました、10代目?」
「雨、降ってきた」
「ぁ……ほんとですね」
 10代目のお部屋で今日出た宿題を一緒にしていた時に、10代目が開いていた窓を閉めようと立ち上がった時に、外が雨を降らせた。
「…………」
「10代目?」
 10代目は無言で外を眺めたままで、俺は不思議に思い立ち上がった。失礼かと思ったが横から10代目の顔を覗くと、その表情はなぜか優しくて、やわらかくて、今にも泣きそうな表情に、俺は不覚にもそんな10代目を綺麗だと思った。
「じ、……10代目、どうされたんですか?」
「……思い出したんだ、あの時のこと……」
「あの時?」
「……獄寺君が、俺に告白してきた時のこと…」
「え…………?」
 俺は10代目の口からその言葉が出た瞬間、胸を締め付けられる気持ちがあった。
 そう、確かに「あの時」も「雨」が降っていた。

『10代目っ……俺……』
『獄寺君?』
『俺っ、あなたが好きです!愛してます!』
『え……』
『もうあなたをボスではなく、恋人としてこれからを共に生きたいです!!』

「夕立が来て、雨宿りしたバス停で突然告白してくるからびっくりしたよ?」
「あれは……濡れた10代目が素敵で、なぜか口にしていて……」
俺は恥ずかしさから目線を逸らしていると、10代目が俺の胸の中に顔を埋めながら背中に腕を回してきた。
「俺は嬉しかった。もし、あの告白がなかったら、この時間もないし、獄寺君の温かさも知らなかった」
「10代目……」
「雨を見ると、必ずっていうほど思い出すんだ。獄寺君のこと」
「…………」
「好きだよ、獄寺君。これからもずっと……」
「……はい、俺もです。愛してます、沢田さん」
 俺は、今まで以上に彼を愛していける、生きていけると核心した。
 そんなことを胸に、彼の唇に「雨」の落ちる速さよりも、ゆっくりと愛を送り込むようにキスを交わした。

END

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