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□甘い香りで、いざなって。
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 まだ電気が点いていて明るい部屋の中、ほんのりとピンクに染まった頬に唇を寄せて温かく柔らかなそれを啄む。くすぐったそうに身を捩る彼女がとても可愛らしくて、額に、瞼に、耳に……あらゆる所に口付ける。とろんとした目を見て胸が締め付けられたオレは、心のままに唇に吸い付いた。
 目前のシャンプーや石鹸の香りは脳裏に彼女の清らかな裸体を瞬時に浮かび上がらせ、それはオレの下半身に直結する。
 早く彼女と繋がりたい。その思いが逸り、彼女のパジャマの上から胸に触れると、いつもと違う感触がした。
(下着を着けていらっしゃる…)
 しまった。さっきの彼女の言葉は幻聴か。先走った事を猛烈に後悔し、その場でオレは土下座をする。
「申し訳ございません!沢田さんのご都合を考えずに勝手な事を…!」
「あ、違っ、そうじゃなくて……」

 オレを見下ろす彼女が恥ずかしそうに、ちょっと、後ろ向いてて?と仰るので、オレは言われた通りに背を向ける。どうすれば良いのかわからないオレは、気に障ったことをしたのではないかというハラハラした思いに駆られながら彼女の声を待った。背後で聞こえる衣擦れの音が、こんな時でも不謹慎にもオレの欲を掻き立てる。
「もう、いいよ」
 声に恐る恐る振り返ると、彼女は耳まで赤くしながら、赤と白のギンガムチェックの下着に身を包んでいた。
「さ、沢田さん……」
「獄寺君……」
 オレの耳元で、オレの首に腕を回した彼女が言う。

「オレの事…好きなだけ食べて…?」

† † †

 御自宅にオレ達以外誰も居ないせいか彼女はいつもより積極的で、オレの部屋でしか聞けないような甘い声が部屋中に響く。それを聴いているオレの理性は首の皮一枚で繋がっていた。
「その下着…大変良くお似合いですよ」
「あ…っ、ホン、ト?」
「はい。脱がすのが勿体無いです」
「んん…っ、えへへ、嬉しい…♪」
 実際、勿体無くて上は着けたままだ。下の下着は剥ぎ取って、足元にある。汗ばんでいる胸元にキスをしながら、指で彼女の大切な部分を刺激すれば、僅かに腰を浮かせた。
「あ…あぁ…獄寺く…っ、は、あんっ!」
 指を締め付けられ、オレが先に堪らなくなる。指を引き抜き避妊具を着けた自身をそこに宛がった。
「すみません…もう…いい、ですか?」
「ん、いいよ…きて…?」
 その言葉が、合図。

 深く深く繋がって、荒い息とあられもない声が互いの口から零れ出れば、あとは一層高いところに登りつめるだけだ。誰も居ない彼女の部屋で、犬猫のようにただひたすら彼女を抱く――――ああ、なんて幸せんだろう。
「っは、沢田さん……沢田さんっ」
「アァッ!ご、くでら、く…獄寺君っ、ああ、ダメぇ…もう……っ!」
 しがみついてくる彼女に愛おしさを感じ、オレは一際腰を動かした。

† † †

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