本棚

□愛情込めて
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「ただいまー♪」
「お帰りなさい♪」
 この空気に慣れたのか、満面の笑みで迎えてくれた彼を見てオレは何だか嬉しくなる。本を読むのに下ろしていた腰をわざわざ上げてこちらに近寄って来てくれるのだから、それに応えないわけにはいかない。オレは笑って彼の腕の中に飛び込んだ。顔を見なかったのなんてマッサージをしてもらっていた一時間くらいしかないのに。
「何かスッキリした♪」
「それは良かったです。貴女は時々無茶をなさいますから」
「えー、君ほどじゃないよ」
 頭を撫でられ、オレは目を細める。いつの時も、この手がとても心地好い。
「いい香りですね」
「アロマオイルかな。何か塗ってくれてた。あと部屋もいい匂いしてたし……」
 言い終わらないうちに、彼の顔がオレの首筋に移る。香りが気になるようで、そこで何度も匂いを嗅ぐから息がとてもくすぐったい。
「っ、隼人……」
「プロはさすがですね。この香り、貴女にぴったりです」
「それはどうも……」
 離しません、と言わんばかりにがっちりホールドされて「はぁ…」と悩ましげな吐息を鎖骨に吐かれたので抗議の意味を込めて身を捩るけれど、こういうことをされている時点でもう何をやっても無駄だということもオレも彼も理解しているから、そのまま彼の手はオレのうなじや背中、腰までに伸びる。背中が粟立つのを感じて、オレは彼の腕をぎゅっと掴んだ。それが何のサインに受け取られたのかはわからないけれど、彼はそのままオレを抱き上げ妙に高級そうな木製のごついテーブルにオレの体を横たえた。
「確かに丈夫そうだけど…」
「お気に召しませんか?」
「折角綺麗なお姉さんに体ほぐしてもらったんだし、いきなり肩こりとかはちょっとね」
「なるほど」
 じゃあふかふかのベッドに行きましょうか。と笑って、オレをもう一度抱き上げた。


† † †

 
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