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□魔女っ子☆ツナたん
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[家事編]


オレ…獄寺隼人は現在中学二年で一人暮らし。
出逢った縁というのもあり、オレは、修業の為に人間界で暮らすことになった10代目(まだ候補らしいけど、その辺は気にしない)と一年間同居することに。
一通り家の中を案内した所で、彼女が言った。
「家に置いてもらう代わり…になるかわかんないけど、家事はオレにやらせてもらえるかな?」
客人にそんなこと頼めるわけもないけれど、彼女の猛烈なお願いの為、オレはそれに甘えることにした。

食器の場所や掃除用具、洗濯機の動かし方。
色々わかりやすく教えたつもりではいるし、いくら魔女とはいえ彼女もしっかりしているから大丈夫だろう。

――――と思った翌日の夕方。
帰宅したオレの目に飛び込んできたのは。綺麗な部屋の数々とは対照的に、散々な状態のキッチンだった。

「じゅ、10代目?!一体何があったんですか?!」
「も、もうすぐ…獄寺君が、帰ってくると思って…ご飯、作ろうとしたんだけどっ…焦がすし…材料上手に切れないし…もう、わけわかんなくなっちゃって……」
床にへたり込み、すすり泣く10代目。
「ぐすっ…魔法みたいなの、使ってもいいんだけど…一応禁止されてるし…やっぱり、修業に関係のない事で使うのってよくない、から…」
それで一からこなそうとしたわけですか、貴女は。

「め、迷惑かけて…ごめ…」
「とんでもありません!」
まだ涙が止まらない彼女と目線を合わせ、にっこりと笑ってみせる。
「誰だって、人が見ていないところではズルしたくなるものですよ。なのに、貴女はそれをしないで御自分の手で何とかしようと頑張ったんでしょう?素晴らしいことじゃないですか」
叱咤の言葉がオレの口から出なかったことに驚きを隠せないでいる10代目は、何とも言えない表情だった。
「少しずつ…慣れていってくださいね?オレで出来る事なら、お手伝いしますから」

彼女は「ありがとう」と一言だけ呟いて、またしばらく泣いた。





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