NO.6
□存在意味
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夕方、一人でベッドに横になり本を読んでいると戸が開いた。
「お帰り紫苑」
「邪魔するぜ」
噛み合わない会話。
昼頃イヌカシの犬についていった紫苑は
イヌカシにつれられて帰ってきた。
顔が赤く、身体に力が入っていない。
「…どうかしたのか?」
「あー…、おれもよくわかんないんだが…、先に紫苑を寝かせた方がいいか。」
イヌカシは強制的に俺をベッドからどけると紫苑を横たえる。
意識も朦朧としているようだ。
「…風邪か?」
「あぁ、この状態の紫苑が言ってたことなんでよくわかんねぇが、
犬洗いをしてたら、洗い終えた犬が川に飛び込んで水を掛けてきたらしくてな、
しばらくは止めたんだがあまりにしつこいもんでやり返したら、他の犬も一緒に水掛けてきたらしくて…
おれが見たときは全身ずぶ濡れだった」
「…犬と水遊びしてて風邪引いたって?」
「…あぁ」
「……」
…この時期に水遊びとか、何を考えているんだ。
なにも、考えていないんだろうな。
この西ブロックで風邪を引くのがどれほどのことか、その立派な頭をつかって考えればすぐにでもわかるだろうに。
「まぁ、看病でもしてやってくれ」
「言われなくてもそれくらいするさ。…イヌカシ」
「なんだ?」
「ありがとう」
「うわっ気持ちわりぃ。おまえさんに面と向かってお礼なんて言われなくないね」
「おれだって言いたくはないさ」
「第一、紫苑をつれてきたのだってそういうのじゃなくて、ただ帰りにぶっ倒られちゃかなわねぇから…」
「はいはい、わかったから」
「…まぁ、用件はそれくらいだ。それじゃあな」
そういって出ていったイヌカシ。
ベッドで熱に喘ぐ紫苑に目をやる。
まったく、天然と言うには度が過ぎてないか。
ここには風邪薬なんてものはないから、風邪を引いたなら、あまりとれはしないが栄養をとって、しっかり休むしかない。
とりあえず、
スープでも作っておくか。