オリジナル
□キライキレイスキスキキライダイスキ
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「どうですか、九重先輩…今はもう部長でしたね。」
「君が呼びやすいほうで構わないけれど…、随分うまくなりましたね。」
「ありがとうございます」
とある高校の一室、
職員室の隣にある和室では茶道部が活動をしていた。
以前までは部員も少なく廃部も目前、存在を知るものすら少なかったこの部は、いまや人気部の仲間入りを果たしていた。
理由は
部長にあった。
日本文化を好む九重浩幸(ここのえひろゆき)は一年前茶道部に入部した。
部員は当時3人、3年生が引退し部員が一人となった茶道部に危機感をかんじ、
新入部員募集のためとった行動が、
着物を着るというものだった。
茶道について知ってもらいたいとはじめた和装での部活動。
たしかに部員が増えはしたがほぼ全員が
部長目当てだった。
抹茶をたてる手付きなど誰もみてはいない。
ただ部長を眺めては黄色い声をあげる女子部員ばかりだった。
その中に一人入った男子部員、酒井真(さかいまこと)、
彼は違った。
一生懸命に茶道を学ぶその姿、浩幸はとても嬉しかった。
そんな後輩が自分に指導をしてほしいと頼んできた。
断る理由がどこにあろうか。
「飲んでみてください。」
「では、いただきます。…とても美味しいですよ、香りがよくたっています。」
「ホントですか!?」
「酒井く…真くん。二人の時は敬語はやめていいですよ?」
「あー、なんかこの部屋にいるとさ、なんかちゃんとしなきゃいけない気がして、面倒かったんだよ」
「その方が君らしいですね」
「…先輩も敬語やめればいいのに」
「だから、私はこれが癖になってるんです」
真は浩幸への距離をつめると耳元で囁いた。
「でも、その方が恋人っぽいじゃん」