短編

□君のバスケ
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部活帰り、あたしは気分が悪かった。


真っ暗な夜に一人、ストバスで遊んでいた。


だけどゴールには届かないあたしの身長。


152センチのあたしは何も届かない。


“あんたちっちゃいのによくバスケやってるね!”


先輩はほめたつもりで言ったんだろうけど・・・


もう一度チャレンジをする。


ゴールのネットでも・・・!


そう思って足に力を入れて、ジャンプする。


しかし、ネットには掠りもしない。


「何してんスか・・・」


着地しようとしたと同時に後ろから、誰かの声が聞こえた。


驚いて、足がひねる。


ドサッとおとを立てて、しりもちをついた。


声の主を見ようと後ろを見ると、


「き、黄瀬くん・・・」


バスケが上手で、顔も良い、黄瀬君だった。


おまけに、身長も高い・・・


「女バスの子っスよね?」


地面に落ちていたボールを片手で持つ黄瀬君。


あたしは小さく頷く。


「自主練なんて、えらいっスね。」


そう言ってニコッと笑った。


あたしは立ち上がって、鞄を持って出ていこうとする。


「あれ?帰っちゃうんスか?」


不思議そうな顔をする黄瀬君。


あたしのあとを追いかけてきた。


「つ、着いてこないでっ」


「何でスか?」


「…」


何でって…


見てわかんないの!?


「…黄瀬くん、大きいし。」


あたしはそう小さく呟いた。


「へ?」


黄瀬君の間抜けな声が聞こえた。


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「ふはっ」


暫くの沈黙のあとに黄瀬君の笑い声が聞こえた。


ひどい!


本気で悩んでるのに・・・


「ハハッ、かわいいこと言うっスね!」
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