短編

□言わない
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「黒子っちぃ〜!!」



後ろからとんでもない勢いでタックルしてきた黄瀬君。



思わず前に倒れてしまった。



横にいた青峰君はゲラゲラと笑っている。



「ちょっと聞いてよ!!」



半泣きの黄瀬君に思わずドキッとしてしまう。



「また振られたっス!!」



黄瀬君には好きな人がいる。



その恋愛相談を聞いている僕。



けど、僕は黄瀬君が好きだ。



黄瀬君はそれに気付かない。



青峰君は黄瀬君に対しての僕の気持ちを知っているらしくて、前にふと言われたのを覚えている。



「じゃあ諦めますか?」



「そ、それも嫌っス」



「もう一度言ってみたらどうでしょ う?
 思いが届くかもしれないですよ?」


そう言うと嬉しそうに笑う。



「もう一回言って来るっス!!」



元気そうに手を振って去って行った。



きっともう君に思いは届かない。



「良いのか?」



横から青峰君の声が聞こえた。



「何がですか?」



とぼけてみた。



「好きなんだろ。」



青峰君の顔を見ると真剣そうだった。



フッと笑った。



「好きですよ。」



「なら、」



「けど、彼の幸せの方が大事です。」



黄瀬君のことは好き。



だけど、きっとかなわない恋だから。



彼の幸せを願うから・・・



だから僕は“言わない ”



せめて、彼の大切な友達になろう。




(また振られたっス!!)
(じゃあ、友達から始めてみては?)
(・・・それもそうっスね、焦りは禁物っス!!)
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