暁の夢

□05 囚われの天女
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石がいくつも積み上げられた壁が囲む廊下を一人の少女が歩く。
わずかな灯火に照らされて
見える顔はどこか悲しげだった。






「...目が覚めた?」
「...シンアlove...」





鉄の檻で閉じ込められた牢に
閉じこれられたヨナ。
両手につく鎖をならしながら
起き上がる。





「...ここはどこなの?...ハクたちは?」
「...賊のアジトよ...、」






二人のあいだに静寂という名の沈黙が流れる。
それを破ったのはヨナだった。






「シンアlove、どうしてこんなことしたの?理由もなくあなたが私を攫うなんてありえないわ...」
「...............。」
「それに...、あなたはとても苦しそう...」
「っ!...、」
「ねぇ、話して頂戴?...」







シンアloveは歯を食いしばり、
爪がくい込んで血が滲む程拳を握り締めた。






「...あなた達には関係ない...」




そう、だれも巻き込んじゃダメ...
だれも傷つけたくない




「これは私の問題...だから、
放っておいて。」






いつもの"ヨナちゃん"と呼ぶ
無邪気な瞳はどこにもなく、
見下すような怪しげな光をまとった目でシンアloveは睨みつけた。





そうして、シンアloveはくるりと背を向け
来た道を戻っていった。

後ろから自身の名を呼ぶ
ヨナの声に切なさを感じながら...









ーーー







「どうシンア、ヨナとシンアloveのいる場所見える?」






そのころ、小城のそばまでやってきたハクたちは森の木陰に隠れながら、シンアの遠視能力で二人の居場所を探っていた。





「...見つけた...。地下にヨナがいる。
入口から入って奥にいくと右手に
階段がある...そこからいけば...」
「了解っ!ヨナを助ける班は
雷獣とキジャ、シンアloveとギジュンのところにいくのがシンアとジェハとジェハloveと俺。ヨナを救出したのち雷獣たちはキジャの四龍を見つける能力で俺たちに合流。
いーい?」
「ゼノは?(にこぉ」





ジェハloveの作戦にみんなはこくりと
頷き戦闘体制に入る。





「白蛇、足手まといになったらおいてくからな」
「なにをいう。貴様こそ足手まといにならぬように気をつけるがいい」



「ジェハは右、シンアは真正面
私は左、それぞれ門の前の敵を撃退したのちハクたちが通れるように
道をあけていく。
必ずシンアloveとヨナを助け出しましょう」
「(コク」
「二人を汚い男の手から救いださないとね」


さらりと前髪をかきあげていうジェハ。




「......。」
「ん?ジェハlove、もしかして妬いちゃった?」
「違うわよ!ただ呆れただけ!」




ゴスっとジェハにパンチをくらわせるジェハlove。それにたいして嬉しそうににやけるジェハだった。







「...シンアlove...助けるから...」




きゅっとアオを優しく握り締めながら呟くシンア。
そんな彼の肩に手をのせジェハとジェハloveはこくりと頷いた。






「いくよ!みんなっ
3...2...1...突撃!!」






ユンの合図とともに潜んでいた
茂みから飛び出し、小城の門へと
駆け抜けていく。







「あ?!なんだお前ら!!ぎゃあ!」
「どっからでてき、ぐぁあ!!」



「せいっ!!」
「はっ!」
「はぁ!」




いきなり出てきたスウたちに驚いた門番たちは、慌てて手に持っていた剣や槍を構えるが、
ジェハloveが扇をとりだし、それを人振りすると無数の刃が飛び出し男たちの
急所に次々と突き刺さった。




正面へ突撃していったシンアも、
目でおうのもやっとの早さで次々に
敵を切り倒していく。

右手のジェハも華麗に飛翔し
得意の暗器で男たちを倒していく。






「今だハク!キジャくん!」






ジェハの叫びとともにハクと
キジャ、ゼノが飛び出し中央の
あいた道から小城に侵入した。





前方から押しかけてくる敵を
ハクの大刃とキジャの龍の手で
吹き飛ばしていく。


そしてジェハたちも応戦し、
ハクたちは奥に進んでいった。





「ヨナちゃんを頼んだよ!」
「ああっ必ず助け出してくる!」

「そなたたちこそ、シンアloveを頼んだぞ!」
「まかせて!絶対連れ戻すから!!」





お互いしっかりと目で覚悟を確認しあうと目の前の敵へと視線を写した。





「ユンくんとゼノくんたちは、は!
僕たちの後ろに隠れってゼノくんは!?」
「知らないあいだに雷獣たちの方についていっちゃったみたい!まったく、」
「はぁっ!...大丈夫よきっとゼノだもの」





ジェハloveが言うと、ユンとジェハはその言葉に微笑んで目を合わした。





「そうだねっ僕たちも先を急ごう!」
「シンア!シンアloveの居場所って待って!!」




ジェハloveがシンアloveの居場所を聞こうとシンアを振り返ると、目の前にいた男を切りつけて角を曲がっていくシンアがいた。
慌てて静止をしたが姿が見えなくなってしまう。

すかさずジェハが後を追い
そのあとをユンとジェハloveも追う。






「待ってシンアくん。」




駆けつけたジェハがスタッとシンアの前方へと降り立ち行く手を阻む。





「焦るのはわかるけど一人で突っ走ったら危ないよ。それに、いつも冷静な君がそんなに取り乱して...らしくないよ?」
「......はやく...シンアloveを助けないと...
...守らないと...」
「...だけどここは僕たちと協力して行かないと...、それともなにか理由でもあるの?」






そうするとシンアは剣を握る拳に力をいれて、黙り込んでしまった。

その姿に何かを察したジェハは
ひとつ息をつくとこう言った。






「安心して、シンアloveちゃんを守りたいのは僕たちも同じ。
だから頼って?」
「...(コク」




「ジェハ!!」



追いついたジェハloveとユンは息を切らしながらジェハたちのもとでとまった。





「ハァ、どうしたの?」
「なんでもないよっ!ただ、シンアloveちゃんのことで頭がいっぱいになったシンアくんが暴走しちゃっただけ☆」
「......。」





パチンとシンアに向かってジェハはウインクをするとぜーぜーとするユンの背をさする。







「シンア、シンアloveの居場所はわかる?」
「...一番上の階にいる。」





するとシンアは上を指さした。




「そこにギジュンもいるはず、
行くよ!!」





回復したユンが先導をきって
それにつづきジェハloveたちも走っていった。











ーーー









「お頭!!侵入者です!!」





ドンッと重い戸を開いて賊の一人が
知らせをしにきた。






「そんなのはやく倒さんか。」
「いえ、それが...恐ろしく強え奴らでして...おそらくあの赤髪の女の仲間かと...」
「っ!」
「...ほぉ...。」







黒いヒゲをさすりながらギジュンは
意味ありげに笑った。
そして次の瞬間、となりにたっていたシンアloveの頬を思いっきり殴った。






「くっ...ぁ...」
「てめぇがどうせ後をつけられたんだろ、あぁ!?」
「ぁあ!っ!」




倒れ込んだシンアloveの体を踏みつけるギジュン。
そしてシンアloveの髪を掴み自身の目と彼女の視線を合わせる。






「ふっ...お前の大事な仲間は皆殺しだ。」
「!?」



そしてシンアloveをほおり投げると
部下たちに命じた。



「赤髪の女を連れてこい!!
やつを人質に仲間を皆殺しにする!!」






すると周りにいた賊達は掛け声をあげて地下へと向かい駆け出していく。







だめっ...このままじゃ...
ヨナちゃんも...みんなも...


...そんなこと、させない

絶対っ絶対に!!!






すると、シンアloveは軋む体を振るい立たせ部屋の後ろにある出口へとむかった。







「!どこにいく!!
あめらぁ!行かすな!
掴まれろ!!」





ギジュンの声とともに、走っていくシンアloveの後を追っていく男たち。




後ろから押し寄せる男たちの足音の波から逃れるようにシンアloveは階段を駆け下りる。















「ヨナちゃん!!」
「!シンアlove...、どうしたのその傷...」
「逃げるよ!」








ドカンッ






もっていた二刀流の小刀で
檻を破壊し、ヨナの鎖を外すと
彼女の手をとって走り出した。






「ハクたちが乗り込んできて、
倒すためにためにヨナちゃんを人質にしてみんなを皆殺しにする気なの!ここにいたらみんな死んじゃう!」
「ハクたちがっ...」




ドドドド





「まちやがれ!!!」
「っ!こっちにも!」






道を変えてもその道から追っ手の
賊たちがきてしまう。







「こっち!!」
「うん!」






ヨナをつれて奥へと進んでいき、
とある部屋へと入った。
そして鍵を閉める。






「...ここから逃げて」
「...ここ...」






シンアloveは古びた暖炉のしたへ
ヨナを入らせて右手にある壁の石を
外していった。







「ここ、抜け道になってて通っていくと小城の裏手にでるからっ」



そして見えた小さな扉を開け、
ヨナを押し入れる。




「っ...シンアloveも...っ!」







ドアがとうとう破られてぞろぞろと
男たちが入ってきた。





「捕まえろ!!」
「逃がすな!」



「ヨナちゃん!早く行って!」
「シンアlove!!」
「...大丈夫っありがとう...」







そういって扉をしめ男たちに向き合い、両手に小刀を構え立ち塞がる。













「シンアlove!!シンアlove!!返事をして!」




ドンドンと扉を叩いてもびくともせず、いくら呼んでも返事はなく、聞こえてくるのはシンアloveの戦う声と男たちの声と激しい戦闘の音だけだった。







あの数...いくらシンアloveが強くても、
一人では無理よ...。



以前の崖でおきたハクの様子を思い出し体が震えわすヨナ。






そうだっハク、ハクたちが助けに来てくれているんだわ!

ここをぬけて裏手にでてハクたちに合流すればリムを助けられる。


そうすれば、弓だって手に入る。






待ってて、シンアlove。
必ず助けるから...











そうしてヨナは暗く冷たい小さな
石のトンネルをはって進んでいった。









ーー

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