暁の夢

□07 綺麗
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この痛み...今までにどれだけ
体験しただろう

全身が鉛のように重く、
思うように動いてくれない。

流れでる血、あぁ...
これだけ流れても人間は
死なないんだ...


痛い、全身の骨が軋む...

下腹はどくどくと脈打つように熱く、激しい痛みを伴っている。




どこかへ意識が飛びそうになる...
いっそその方が楽なのに...






ゴスッボキャッ


「うぁあぁっ!」
「気なんか失う暇なんか
与えるかってんだ!おらぁあ!」




失いかけた意識が、
また激しい痛みで戻る。
力なく床に転がってもまた起こされて床に叩きたけれ何回も踏まれる。






「ヴッ...ゲホッ...けほ...」
「どうだ?いてぇか?
嘘つき少女さんよぉ〜」






前髪を鷲掴みにされて顔を
持ち上げられる。
視点の定まらない瞳で、
ギジュンを睨みつける。





「...っち、まだそんな目ができるんじゃねぇか!あぁあ!おらぁあ!」
「ぅう...ぁあ!」






苦しい、うまく呼吸もできない...

だけどここで諦める訳には行かない。





倒れ込むシンアloveに近づいたギジュンは
シンアloveの首を掴み、ジリジリと持ち上げた。
必死に掴んでくる手を剥がそうと、
試みるが力が入らず、みしみしと
ギジュンの指がシンアloveの首にくい込む。





「っぁ...カハッ...ぁっ」
「なめた真似しながって...
死ね...死んじまえぇ!!」






苦しいっ...苦しいよ...
頭がクラクラしてガンガンと痛む。
涙のたまる目で天井を
仰ぎ見る。






「...くっ...ぁ...」
「っ!!」






むちゃくちゃに暴れて、
右足でギジュンの頭に蹴りをいれる。




「っ!...っざけんなぁああ!!」






蹴りのいれた部分から、ツーっと
血がつたうのを見た瞬間ギジュンは
目を血走らせた。
そして、体のあらゆる部分の血管が浮き出るほどにリムの首を締め付けた。





「死ね!死ね死ねええ!!」






宙に浮いた足をばたつかせて、
必死にもがくシンアlove。





首の骨がギシギシと軋むのが
わかる、苦しい...もう...
だ...、、、












ダンッ

「リム!!!」




扉を開ける音とともに、
シンアの声が聞こえた。


あぁ、来てっ...くれたん...だ...




















扉をあけた瞬間目に入った光景は、
ギジュンに首を締めれて宙に浮いたシンアlove。

そして、次の瞬間彼の手を解こうと
爪をたてていた手や腕から力が抜け、ぐったりと下に落とされた。








「ぁああ!!」






シンアは駆け出しギジュンに
切りかかる。
ギジュンはリムを投げると、
持っていた剣でそれを受け止めるが
あまりの力に後ろへと押される。














「リム!!」
「これはひどい...すぐに手当て
しないとっ」






リムのもとに駆けつけた
ユンは、リムを仰向けにすると鞄のなかから救命道具をだし
手当を始める。






「リム...」
「大丈夫。絶対に死なせないから。」






口に手を当てて悲惨な光景に絶句するヨナ。目に涙をためて震える彼女に、ユンは真の通った声色でそう言った。










一方、そのころギジュンは
シンアの剣に押されていた。








「...ちっ、おおい!てめぇらぁ!!」






ギジュンが声を荒らげると、
どこから現れたのか階段で見た
薬付けにされた村人たちがシンアに襲いかかってきた。
彼らは斧や剣をもち、それぞれ
シンアに切りかかる。











「わっ何あれ!!
あんな量流石にシンア一人じゃ
無理だよ!」







リムの治療の途中でユンは
シンアの周りに薬付けになった村人が湧いているのに気づき、あせりをみせる。






「ユン、リムをお願い。
私はシンアを援護してくる。」
「...うん、気をつけてよね!」






コクリと頷くとヨナはシンアの
元へと駆けつける。
ある程度の距離で止まると、弓を構え、そして矢を放つ。



その矢はシンアに群がる村人に命中し、男は倒れた。
被害者である村人を撃つやりきれない思いをふりきりヨナは弓をひく。







「...っ...くっ」






押し寄せてくる獣化した
村人を切り倒すシンア。
するとそれに紛れて、四角から
ギジュンが彼に切りかかる。





隙を突かれたシンアはよけ遅れ、
脇腹を切られる。

そしてふらついたところを、
村人たちが押し寄せて上からおおい被さった。




しかし、次の瞬間村人たちは
宙をまいシンアがその中央から
現れた。






「...すごい...、あんな怒り狂った
シンア...初めて見た」
「...シンア...。」





普段の静寂で沈黙とした彼とは
かけ離れた姿に目を奪われる二人。









「んだよ!なんなんだよてめぇわぁ!!!!」




次々と村人を倒していく
シンアに恐れをなしたギジュンは
叫びをあげる。


そして、とうとう最後の村人を
切り捨てたシンアがギジュンに
向き合ったとき...






「っ!」





シンアは先ほどギジュンに切られた、左脇腹を押さえて跪く。





「くっ...ははははは!!
やっと聞いてきたか!
さっきてめぇを切りつけたこの
剣にはな、毒が染み込ませてあんだよ。全身の神経を麻痺させる...」







そして、跪いたシンアを
足で踏みつける。





「シンア!!」





ヨナが駆け寄ろうとしたが、
シンアの静止により足をとめる。




















...体が痺れる...
でも、こんなのよりもっと
鋭い麻痺を俺は知ってる...









ーー"綺麗ねっ貴方の目"ーー









顔も思い出さない少女の笑顔の残像が瞼に浮かぶ。










ーー"......綺麗"ーー









俺の目をまっすぐにみて、
優しく微笑むリム。




二つの笑顔が重なるーーーー






リム......













バッ





「な、なんだよ!!」




急に面に手をかけたシンアに
怯えたギジュンは、踏みつける足を
おろし後ずさる。


そして、シンアは立ち上がると

面を外して顕になった金色の瞳でギジュンを見据える。






「......な、なんだ!!
み、見るな!!や、やめてくれ!!!うああぁぁああああ!!!」






ギジュンは涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら尻もちをつき、
後ずさる。
じりじりとシンアは近づき、
ギジュンをみる目を逸らさない。

ギジュンもまた、その瞳から
目を逸らすことができないでいた。







「ぁ、あぁああ!」





もう足が麻痺して動かないギジュンは必死に手ではい、その瞳から逃れようとする。





そのあいだを縮めるように
目の前まできたシンアに恐怖が
頂点まで昇る。




「ぅ、やめろ...ぁああぁぉああ!」




そして、かろうじて握り締めていた
剣を構えてシンアへと振り下ろす。




「「シンア!!」」





グサッ





肉体を貫く、独特の音がして
ヨナとユンが目を見開いたとき。


ギジュンの手から剣がおち、
彼の体がピクピクと痙攣する。







「私の、大事な仲間を傷つけるのは
許さないっていったはずよ...」



「きっ...さまぁあっ...ガハッ」






背後からシンアloveが小刀で、ギジュンの
心臓を貫いていた。
後ろをぎろりと見て、ギジュンは
血を吐き出す。

そして、シンアloveが小刀を
引き抜くと同時に

ギジュンは力尽きた。















「終わったのね...」





ヨナは緊張がとけ、その場に崩れておちて座り込む。








「.........っ」
「っシンアlove!」






倒れ込みそうになったシンアloveを
シンアが抱き抱える。






「...シンアlove......」






目の前で目を閉じたままのシンアloveに心配そうにシンアは彼女な名を呼ぶ。








すると、ゆっくりと目をあけて
シンアloveとシンアの視線が絡まる。









「シンアlove...」
「ふっ...やっぱり...
シンアの目は.........綺麗っ」








そっと右手を伸ばしてシンアの
頬に触れる。











そして、今度こそシンアloveは意識を手放した。













ーーー

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