暁の夢

□10 忌み子の女の子
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今日もオレはあの女の子と
遊ぶ約束をしていた。
待ち合わせの更地の中心にある
木下でまっていると、
女の子がその木の上からシュタッと
降りてきた。





「おまたせっ、まった?」
「ううん、オレも...今来たところ。
...それ、どしたの?」





よく見ると頬や腕、足に
青いあざがいくつもあった。
それを指差して問うと
女の子は少し隠しながら言った。




「これ?...これはね、さっき
ここへ来るときに転んじゃって...
あ!そうだ!今日はアオに会えるんだよね!」




ポンと手を叩いて話題を変えた女の子。
オレはこっち、といって女の子の手を引いて家へと案内した。






ーーー






「アオっ」




家につくとオレは水を飲んでいるアオに呼びかけた。
アオはこっちに気づくとギロリと
みた。






「...友達、つれてきた。」
「ブゥーーーーッ!!」





アオはすごい勢いで水を吹いた。
それから、咳き込んでしばらくするとオレの胸ぐらを掴んで叫んだ。





「おま!なん、こいつどっから!
おおい!」
「...アオ、言葉喋ってない」




すると女の子があいだに
わって入ってきて、アオに
話しかけた。




「はじめましてっ」



にこりとわらう女の子に
アオは一瞬固まったあと、




「...お前...、」




何かを言おうとした。
だけど、いいかけて止まってしまった。それに対して女の子はわかっているような不思議な笑いをして首を傾げた。








それから数日がすぎた。
女の子は毎日お仕事の合間をみつけて、俺の家に遊びに来た。
この前きた村の人たちのお手伝いを
してるらしい。

アオに一緒に剣を教えてもらったり
たわいのない遊びを沢山した。
とても楽しかった。




「こら!また2本使って!」
「えへへっだって、二刀流の方が
使いやすいんだもん!」


「うめぇ、」
「...おいしい...」
「ご飯は基本あるもので自分で作ってるからっ(森だけど...)」


「アオぎゅーっ」
「邪魔だ寝付けねぇ、どけ」
「ぎゅー」



ご飯を食べたりお昼寝したり
ほんとに楽しかった。

だけど、女の子は会うたびに
いつも生傷があった。
どしてあるのか聞いても、
女の子は転けたからとしか
言わなかった。



そんなある日、アオが
俺に言った。




「いいか青龍。
強くなれ、そして...
アイツを一生守るんだ。」



アオの言いつけが新たに加わった。
オレは強く拳を握ってコクリと頷いた。

その日、アオが女の子に何かを
言っていた。
何を話していたのか聞いても
2人とも教えてはくれなかった。





楽しかった時間はあっという間に
流れて、女の子が帰る日になった。
最後のお別れをしに、
オレの家の前まできた女の子、
オレはなんて話しかけたらいいかわからなくて下を向いてしまった。




「......」
「またねっ」
「、え?」
「絶対にまた会おう!」




そういって女の子は
オレの腕に小さなお花で作った
腕輪をつけてくれた。
女の子は自分の腕にもついているそれをみせて笑った。




「約束っ」
「うんっ」




そして、女の子は里を
去っていった。



















そして







時は流れて











アオはオレに、
一人にしてごめん
と言って













いなくなった。















「ぅ...ぅ...」







アオのいない家で、
膝を抱える。

心にぽっかりと穴が空いたみたい。

目からいくつもの熱いものが
溢れ出てくる。



アオ...声を聞かせて








オレは...













ここにいるよ



















「...っ」





なんだろう?
今、風にのって誰かの声が聞こえた...


高い木の上にたって
聞こえた方角を見据える。




なにか、よくない音が聞こえる。
大きな...いくつもの...
足音?...

もう一つの小さな足跡...


手首の花の腕輪が
風でゆれる



あの子が、






危ないっ








無我夢中でとにかく走った。
いくつもの森、川、
道じゃないところもたくさん走った。
体中どこでいつできたのかわからない傷ばかり。
元の傷とできた傷の区別も
つけられなくなっていた。
だけど必死に走った。


ただただ、あの子が聞こえる方へ











沢山の木々が生い茂る中、
一筋の光が見えた。

その先を目指して走った。
そして、光を抜けると見えたものは...
沢山の人が倒れる中に、
ポツンと立ち尽くすひとつの影...


見つけた...



















空は曇天で、体中冷たい雨で濡れる。
でも、不思議と冷たさは感じなかった。全身が痺れていたから。
ああ、ごめんねアオ、
この力は本当に使ってはいけないものだったんだ。





ガサッ






音が聞こえた方をみると、
そこには…あの女の子が、いた。




「…あ…」




女の子はオレと目があうと、
泣き出してしまった。
どして、君がなくの?




すると、女の子はオレのそばまで
くるとそっと抱きしめた。



「...ありがとうっ…。
この里を守ってくれて、
ありがとう…。

ごめんね…」




痺れて感じないはずなのに、
不思議と暖かかった。











「何が…起こったんだ。」




騒ぎを聞きつけた里の人達がやってきた。
オレは力が入らなくなって、倒れてしまった。
それを女の子が支えて、座り込む。




「っ!お前は…クラン村の...!」



オレが視覚になって見えていなかった女の子をみると、里の人たち驚愕した。




「今すぐ青龍様から離れろ!!」
「そいつらを引き離しせ!!」




女の子は必死にオレを抱きしめて、
抵抗した。

オレは力が入らなくて、どうにかしたくても痺れて動かなくて...見ていることしかできなかった。


女の子の力じゃ勝てなくて、
どんどんはなされていく。




「いや!やめて!!」
「この!」





里の人の一人が女の子の
頬をぶった。
その隙にもう一人の里の人が
オレを女の子から引き剥がす。

地面に倒れたオレは必死に女の子に手を伸ばした。
だけど...届かない。




女の子の行方を捜索していた村の人たちが里の人から知らせをうけて駆けつけてきた。
村の人たちは乱暴に女の子を連れていく。


抵抗する女の子を力づくで押さえつける。あぁ、あの傷は転んでできたんじゃなかったんだ。
女の子の悲鳴が耳に響く。

お願い…連れていかないで…
傷つけないで…その子は、
オレのたった一人の…









"アイツを一生守るんだ"





アオ…ごめんね
守れ、なかった。



また、熱いものが雨と一緒に流れる。



伸ばしても届かない女の子。
視界の悪い遠くへ、連れていかれる女の子。


徐々に届かない遠くへいって、






そして





見えなくなった。










残されたのは
無残に地面に散った
女の子の花の腕輪










お願い…つれていかないで…



















その後オレは何日も眠っていた。
意識の堺目で、数人の話声が聞こえた。





「そういえば、例の忌み子はどうなった」

「村の人達が出られないよう監禁したって」

「青龍様と関係をもっていたんだよな、恐ろしい」

「それについては手をうってあるらしい」

「どうやって」

「暴行をして精神的に追い詰め記憶を消したらしい」

「あの小さな体に...」

「でも、それでよかったのかもしれん」

「ああ、そんな記憶忘れた方がいい」




















守れなくてごめんね。




会いたいよ





せめて、
名前だけでも
知りたかった、














ーー

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