暁の夢

□14 祭火の夜
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山賊の集落といってもガラの悪い
男たちのたまり場いうわけでなく、
普通の村などと変わらなかった。
毎日自給自足の日々で女は家事
男は狩りや農作物の栽培などに追われていた。

しかし、今日の夕方はやけに忙しそうにしていた。
集落の真ん中に位置する広場では何やらおおきなキャンプファイヤーが準備されいた。
気になったヨナたちは村人にたずねると、


「今夜は祭りなのさっ
毎年行われるんだけどね?
"正義"を忘れないために祭り火をたいて踊って歌って夜を明かすのさ!!」
「わぁ!素敵楽しそう!!」
「私もそう思う!」
「昔は毎年ジェハlove様の演奏を楽しみにしたもんさ」


懐かしそうな目をするおばさんを見るなりヨナとシンアloveはいいことを思いつきおばさんに"それ!叶うよ!"
といって駆け出していった。





ーー



「祭火で演奏?」
「ええっ!」


頬をそめてヨナは思いっきり返事をした。


「集落の人達、みんなあなたの演奏を聞きたがってるの!
だからジェハloveが演奏して、シンアloveが歌う
そして私が舞を踊るなんてどうかしら!」
「へー、素敵じゃないか
僕も混ぜてよ」


そこに現れたのはサラサラ髪を手で華麗にはらりとさせたジェハだった。


「つまりジェハも演奏に参加するってことだよね?」
「そのとおりだよシンアloveちゃん
僕とジェハloveで美しい愛の旋律を奏でようじゃないか」
「あ、愛って何よ!!」


そのあとジェハloveは少しだけ表情を曇らせて黙ってしまった。
不可解に思いつつもすぐに元に戻りジェハloveは口を開いた。


「…私祭りの主催の人にこのこと伝えてくるわっ」


そうしてその場を去っていったのだった。
その背中をみてシンアloveは目を細めると


「ごめん、私もジェハloveちゃんについてくね!じゃ!」


そして彼女の後をおって駆け出していった。


「どうしたのかしら、シンアloveたち」
「…」


訳がわからずいうヨナの横でジェハは二人が走っていった方角を見据えるのだった。



ーー



「ジェハloveちゃん」
「…シンアlove、ついてきたの?」
「うん、それにしても盛大なお祭りだね!こんなに装飾されて今から歌うのがすごく楽しみだよ」


ジェハloveのとなりに追いつくと周りを無邪気な瞳で見渡した。
それに微笑みながらジェハloveは口をひらく。


「もう傷はいいの?」
「ユンくんのおかげでこのとおり!」
「クスッ、前から思ってたけど
シンアloveのそういう素直な言動一つ一つが羨ましいわ」
「…え?、そかな」


ありのまますごしているシンアloveは言っていることがわからず首をかしげた。
そのあとふと疑問を思い出し口にした。


「私も前から思ってたことがあったんだけど…ジェハloveちゃんて、ジェハに対してだけ態度違うよね?
ただの照れ隠しだけでなくなんか…
こう、上手く言えないけど…それだけでない何かがあるっていうか」
「……………」


うーんと頭を抱えながら一生懸命近い言葉を探しだそうとするシンアlove。


「…ジェハloveちゃん、ジェハのこと好きでしょ?」
「やっぱりシンアloveの鋭さにはかなわないわ…」


そして一息おいてそっとジェハloveは言葉を紡ぎはじめた。

お祭りの準備をする賑やかな声が遠くに聞こえる。

あたりにさぁっと風が吹き抜け
シンアloveはただ瞳を見開いた。


ーー




日も暮れ集落を照らすのはその中央に位置する広場で燃えさかる祭火だけとなった。
大勢の人がそれを囲いお酒を飲んだり踊ったり、ご馳走をほおばり会話に花を咲かせた。

太鼓の音や弦楽器の音色が響き心地よい音楽が流れる。
ふとその音楽の曲調が変わった。

ジェハの二胡の音とともに
中央から美しい女性三人が姿を表す。
その真ん中にいるジェハloveの姿に待ってましたと言わんばかりに集落の人達は歓声をあげる。

そしてもっていた笛を吹き始めると
そっと一歩ヨナが踏み出し、軽やかな足取りで舞はじめる。
それと同時にお腹に響くほどの激しい音があたりに響きわたった。


祭火を背に奏でられやがてシンアloveが様々な音を鳴らす楽器にまけずと歌声を響かせる。

ものすごい迫力に周りは圧倒された。
ジェハとジェハloveの噛み合った見事なセッション。激しく交互する主旋。
それを包むようにのせられるシンアloveの歌声。
それらすべてに合わせて全身を華麗に動かして舞うヨナ。


「娘さんたち、綺麗だね」
「ああ、このうえないくらいに輝いておられる。そうは思わぬかシンア…シンア?」


となりで同じく感動しているであろうシンアに声をかけるキジャ。
しかし、シンアはあるものに魅了されてキジャの問いに気づいていなかった。

その金色の瞳が見つめる先には凛と歌い続ける天女の姿。
彼女を見つめるシンアの顔は祭火のせいなのか淡く暁の色がかかっていた。


「…シンアlove、綺麗」
「…………」


その誰も気づいていないであろうほそりと呟いたシンアの言葉を微かに耳にしたユンは、その小さな胸をちくりと痛めた。
美少年の心に宿っている初恋という小さな欠片に気づいているものはいない。



そして、またハクもヨナの姿をしっかりと目に焼き付けるのだった。


ーーー



「お疲れ様さま!良かったよ三人とも」


三人がハクたちの元にもどるとユンが笑顔で迎えてくれた。


「ありがとう!ハク、見ててくれた?」
「ええ見てましたとも。だけど…
ちょっとその衣装露出ありすぎじゃありませんか?」
「?そうかしら」


ハクの言葉にキジャとユンも同意した。

「さ、さすがにそんな格好じゃあれだから…なにか羽織って…って言ったそばからジェハlove、シンアに抱きつかないの!!困ってるから!」
「ユンきゅんもぎゅーする?(にこぉ」
「だからぁ!//」
「?(きょとん」


そんなのをよそにシンアは恥ずかしさでジタバタとした。


「…ねぇハク、ジェハlove知らない?」
「?さっきまでそこに、」
「ジェハloveならさっき散歩してくるってあっちのほーにいったからぁっ!」


ゼノがひょいひょいと指を指した方角をみるとゼノにお礼をいってジェハはそちらにむかった。


ーーー


「そんな格好でいたら風邪ひいちゃうよ」
「…ジェハ」


そっと持ってきた羽織を彼女の肩にかけるとジェハは改めて近くで彼女の姿をみた。

羽織の間からでもみえる細い首に鎖骨、衣装でかすかに見え隠れする谷間にそのしたのくびれ、その下から伸びた綺麗な脚…いつもの服装では見られないところがあらわになっているためおもわずまじまじと見つめてしまう。


「……あ、あんまり見ないで!//
変態!(殴」
「痛い♡…それにしてもほんとにすごい衣装着てるね」
「…みんなが、張り切ってみたててくれて…でも、あんまり似合ってないから見ないで…」


きゅっと羽織を握り締めて隠すようにする。
すると急にその両手首を掴まれバッ広げられる。


「誰が似合ってないなんていった?
…とっても似合ってるよ」
「…ジェハ」


至近距離で見つめられて、目が離せなくなる彼女。
静かにその綺麗な瞳にジェハloveをうつすジェハ、やがてそのジェハloveの姿は大きくなっていき…
そっとジェハがジェハloveの頬に触れて、互いの息を感じる距離になったところでハッと我にかえりジェハloveは彼と距離をとった。


「も、もう…軽はずみなことはやめて…」

そしてその場から走り去っていった。
残されたジェハは肩をすくめて、ただ呆然と空に浮く満月を眺めた。


「…いつになったらわかってもらえるんだろうね」



そのつぶやきは静かな夜へと消えていくのだった。


ーー

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