池袋少女

□05 春は良きかな
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あったかくなってきたなー。

校舎の窓から見える桜の木を眺めながらパックのジュースをパコパコさせる。



「やぁ、何してるんだい」
「イザりん
やーさー、こー毎日生暖かい気が続くと…こーむずむずしない?」
「は?」
「発狂したくなるんだよね!
ぬるい!ぬるいよ!刺激が足らない!」
「確かにねぇ、
まぁでも気分転換になるようなことでも起きるんじゃないかな」




くくくと肩を揺らして笑うイザりん。
この顔はなにかを企んでいる顔だなぁ



「でも、まあそのぬるい空気に浸ってる人達はいるみたいだよ」



ひょいとイザりんが指をさした方向には少し先の廊下の窓際で同じく桜をみながら、のほほんとするシズりんとさやりん。




「…………。」
「………。」



「お互い無言なのに和んでるよ!!」
「シズちゃんの趣味は日向ぼっこだからねぇ、」




刺激が足らない!
青春しよーよ!!!



「平和な理由はもう一つあるんじゃない」
「あ、新羅りん」
「やぁ、最近臨也、静雄にちょっかいだしてないから。
静雄が暴れることもなかったし
それで平和んだとおもうよ」
「なるほど。」
「うん、まーね。」



あーぁ、UFでもおちてこないかなぁー。



ちろっとシズりんたちのほうを見てみれば日向ぼっこにママンまで加わっていた。



「もー、とりあえず百回くらい
イザりんバク転しといてよ」
「やだよ。」
「じゃあ暇なら採血でも「「やだ。」」」




そのころママンたちは。



「なんか、眠くなるなぁ」
「うん。」
「門田、お前もか。」
「おう。」
「平和だなぁ…」
「…京平、静雄が和んでる。」
「おっ。」




3人の前髪を春の風が揺らすのだった。





ーーー




そんな放課後
和やかな日の終止符をうつには最悪な状況。



「え、なにこれ。」



帰ろうとみんなで昇降口を出た途端、グランドにてガラの悪い大量の男たちに囲まれてしまった。



「おらぁ平和島静雄!
今日こそそのつらいただくぜ!!」
「覚悟しろ!!!」


ブッチ


平和に1日を終わらせることができると思っていた静雄。
しかし、最後の最後でこの有様に
今日はめいっぱいの血管を浮かせていた。



「てめぇ、ら、最近こねぇで平和だと思ってたら…」
「…これ、何?」


状況がわからない私は新羅りんに
耳打ちして聞いた。
それにさやりんも耳を貸す。



「あー、静雄に懲りずに喧嘩を売り続けているチンピラ達だよ」
「なるほどねー、シズりんに…」
「…クズ人間…」
「さやりん?」



ごぉっと黒いオーラを出しはじめたさやりん
あ、そーいえば人間大嫌いなんだっけ




「このゴミ虫どもがぁあぁあ!!」


ドカーーーーン


ありゃりゃりゃ、あれはこの間新調されたばかりのサッカーゴール…。



私たちは朝礼台のところにて
シズりんの喧嘩を眺めていた。
朝礼台には私とイザりんが座り、
その横でさやりんとママンと新羅りんは立っている。




「わぁぁあ!すごい!」
「……静雄、すごぃ」



私は足をぷらぷらさせて楽しんでいた。


「ところでイザりん、この人達の数
君がなにかしたんでしょ」
「えー?なんのことー?」



六花の唇をもらったバツだよ
なんて、そんなこと六花には言わないけど。



「……それにしてもこの量、
多すぎない?」



倒しても倒しても溢れてくる。
その人間のうずの中心で暴れ続けているシズりん。




「…私、シズりん手伝ってくる!」
「はっ!?ちょ、六…言っちゃった。」




後ろから新羅りんに止められる声が聞こえたけど私は気にしない!!



「へいへいボーイ達!
私の大切なシズりんに何喧嘩売ってくれちゃってるわけ?
覚悟はいーかクソったれ!」
「なっ!?六花!」
「んだこの女は!」
「やっちまえええ!!」



3人の男たちがこちらに向かって鉄の棒を振りおろしてくる。



フワッ
軽やかに交わして私は男たちの顔らへんまでジャンプするとくるんと回転して回し蹴りを食らわした。
片足をついてまた1人そしてまた1人。



「ほっ!」
「ぐぉおっ」
「へへんっ」



ペロッと唇を舐める。
やっぱり楽しい!
この軽やかな感じがたまらない、




「…お前」
「へへっシズりん、手伝うよ」
「…怪我すんなよ」
「おうよ!」




シズりんと背中合わせになり目の前の男たちに向かって走り出す。










「おい、どーする。」
「さぁっ、あーなった六花は止められないから。」
「……」



その光景を見ていた門田は頭を抱えた。
そしてとなりの沙闇は瞳を輝かせて見入っていた。
臨也はそんな沙闇に声をかける。



「面白いでしょ
シズちゃんも六花も」
「………うん。」
「沙闇はあーゆー感じのが大好きなんだっけ?」
「大好き…」


「あ!」



会話の続きは新羅の声で途切れた。
なにがあったのかとおもい、静雄と六花が交戦するグランドを眺めると、




「へっ、これで手だせねーだろ」
「っち…」
「ごめーん…シズりん
滑ってよろけたら捕まっちゃった」



チンピラの一人が六花の首にナイフをあてて片腕で首元を押さえつけていた。
や、まぢ気持ち悪い
手、回すなや






「どーするードタチン」
「…どーするもこーもねーだろ。
助けにいく。」
「くくっ、言うと思ったよ。」



すると学ラン二人は、
門田は拳を構えて臨也はナイフを構えてチンピラの渦へと歩き出していく。



「…かっこいぃ」
「え?なんかいった?沙闇」
「なんでも…新羅、なにそれ」
「これはみんなの救急用品」
「…なるほど。」




さて、私はどうしたものか。
前方にチンピラの渦をかき分けて(もちろん蹴散らして)イザりんとママンがこっちきてるけど、このままじゃシズりんが手出されちゃうよね。




「新羅りん!ちょっと試したいことがあるんだけど!」




大きな声で言うと新羅はこっちに耳を傾けてくれた。



「やってもいーい?」
「はぁ、もー勝手にしてよ」
「ありがとっ!」



にこっと笑うとグッと首を締められた。



「ごちゃごちゃうるせー!!」
「うるせーのはあんたらだ!
おりゃぁ!」(背負い投げ
「100点。」



どしゃーーーんと男を地面に叩きつけた。必殺背負い投げ!
となりではいつの間にやら、ここにやってきていたさやりんが100点のプレートをパッとだしていた。




「なっ、くく、お前は全く」
「へへ!褒めて褒めてシズりん!」



私の背負い投げをみてシズりんは呆れたように笑った。


「っ!お前いつの間に!
あぶねぇからどいてろ!」
「…………。」



そして沙闇がきたことで焦るドタチン。
そんなとき後ろから沙闇めがけてバットを振り下ろす男。



「おらぁああ!」
「………」


ぬるりと後ろをむき人間(ゴミ)を睨みつける。
その目に男は一瞬にして怯む。



「黙れ腐れ虫」


プシュー

「ぎぃやぁあぁ!」



すると男は目を抑えて叫び、
地面へ崩れ落ちていった。



「うっそ!何それさやりん!」
「……特性の雑菌スプレーだよ。
これを浴びれば腐れ虫たちは有無言わなくなるのっ(にこ」
「うっわ!はじめてみたさやりんの笑顔!」



とてもとても愛らしい笑顔でした。



「…たくっ、怪我すんなよ」苦笑
「うん、京平」


そのころ私とシズりん、さやりんのいるチンピラ達のうずの中心部へとたどり着いたママンとイザりん。



「さて、みなさん準備はおけい?」
「とっととゴミ虫を片付けてノミ蟲を潰す」
「やだなぁシズちゃんてば」
「たく、めんどくせー」
「腐った虫を土に返す。」



チンピラ達に向かってわたし達は背を向けあい輪をつくる。
静雄はラフなかっこで立ち
門田は首を捻って構える。
臨也はナイフを前へ突き出す。
さやりんはいつもどおりの無表情で相手を見据える。
私も肩を慣らして構える。




「レディーGOーーー!!!」



私の掛け声とともにみんなは駆け出した。







ーーー






「みんなお疲れ様。」
「おぉ」
「あー、うぜぇ」
「まーまーシズりん終わったんだし」
「で、なんで六花は俺の膝で寝てるわけ?」
「もークタクタなのよ、
だからお膝かりてる」
「はいはい」
「沙闇怪我ねーか?」
「うん。あんなこえだめたちに触れられたくないから。」
「ちょwさやりんこえだめってw」
「私は京平、新羅、静雄、臨也、六花がいればみんな腐ればいいと思う。」



本日2度目の天使の笑顔。


「さやりん!私も同意だよ!
みんな大好き!!」
「あれ、今臨也が入ってなかった?」
「…確かに。」



新羅が指摘すると門田がこくりと頷いた。




「アハッ☆やっと俺も認められたってことかな?」
「…人間好きな臨也は好きくない」
「嫌われてやがんの
ノミ蟲野郎」
「シズちゃんてバカ?」
「あ゛ぁ?」
「まーまー!
ナカヨクネー」
「それサイモンのモノマネ?」
「ぶふぉw」



シズりんが吹き出した。
てゆーかイザりんの膝の上でモノマネするのも変か。


「モノマネしたのはこの口かなぁ?」
「イザりんいひゃひゃ」


いつぞやのほっぺつまみをおみまいされる。



それを見ながら新羅りん、ママン、さやりんまでもが笑った。
しまいにはシズりんまで。


「それにしても、沙闇笑うようになったな。」
「うん、…学校面白い。みんな好き。
京平が教えてくれたおかげだよ。
…ありがとう。(微笑み」
「…………おっ。」


「あれ?門田君顔が赤いけど
さっき怪我でもした?」
「なんでもねぇーよ!」
「ママンまっかっかー!」
「ドタチンてばやらしー」
「なんでだよ!」
「門田、がんばれ」
「はぁ!?」




いつまでもこんな6人で
入れたらいいね。



みんなとの絆ができあがって、
私達は高校一年の幕を閉じた。


そして、私たちはあらたな青春の扉をひらこうとしていた。







ーー

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