月と星の恋

□3 ようこそツキノ寮へ
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「では、今年度の文化祭ステージに
ついてですが‥‥」


聖カナリア学院の生徒会会議が
行われていた。
文化祭実行委員の苺愛と藍媛も
生徒会長の声に耳を傾けていた。
聖カナリア学院は特別な生徒が通う
ちょっと変わった学校なのだ。
精神的なキズを抱えた生徒があつまる学校で
不登校などで普通の高校に通えない子が集まっていた。
中でも苺愛や藍媛みたいに身体的にまで
精神的な障害を持っている子は珍しかったが、
そういう子も受け入れられる生徒も学校内も
とても平和な学校だった。

そんな聖カナリア学院の文化祭は
いつも11月に行われていて、
有名な学校だけにその文化祭も
盛大なものであった。

特に文化祭二日目の最終日の夜に行われる
文化祭ステージは、毎年有名な芸能人をまねき
学院内は大盛り上がりを見せる。


「今年もですが文化祭の入場者は
各生徒が渡すチケットを持った方のみに
します。」


まだ半年以上先の文化祭なのに着々と準備が進められていく。
生徒会員と文化祭実行委員のみんなが
配られた資料をみながら議題を進めていくと‥‥


「そして今年の文化祭ステージのゲスト候補ですが‥‥どなたか案はありますか?」


その一言で教室内にはざわざわしはじめる。


(ゲストか‥‥去年はあの有名歌手だったんだっけ?)
(んー、誰がいいのかなぁ、)

みんなが頭を悩ませていた、
すると様子を伺っていた一人の生徒が
手を挙げて口を開いた。


「あのぉ、グラビとプロセラなんて
どう‥‥かな?」
「『!?』」
「あら、Six GravityとProcellarum?
いいわね!」


一気に生徒会長の目が輝き、
教室内の生徒達も賛成の声を上げる。
その中で生徒会長が苺愛と藍媛のもとへやってきた。


「あなたたちのお兄さんって確かProcellarumと
Six Gravityのマネージャーだったよね?」
「えっと、」
「お願いっ頼んでみてくれないかなぁ?
ちゃんとしたお仕事の依頼だから学校側から
出演料ももらえるからさ!」
『うぅん、』


すると周りの人も話し始めた。


「プロセラとグラビの作詞作曲やってるんでしょ?」
「ひぇーすごーいっ!」
「いーなー会えたりするのかなー」


このあきらかに羨ましがられて注目の的になる
空気に恥ずかしすぎて二人とも下を向いてしまう。

この空気でさらに一緒に住んでて
付き人までやってるなんて死んでもバレないようにしようと心に決めるのだった。
というか、なぜマネージャーのことがバレてるのかもわからなかった。


結局いちようダメ元で聞いては見るとうことで
会議が終わった。



ーーー



その夕方、場所はまた東京。
事務所にいる兄たちの手伝いをすませていた。
そこで今日の生徒会の議題にあがった案件について話してみることに‥‥


『ねぇ、大兄』
「どうした?」
『あのね、今年の文化祭のステージなんだけど‥‥』
「あぁ、あのマスコミとかも来る盛大なやつか」
『うん、』


チラッと藍媛をみると、
察してくれた彼女が続きを話し始めた。


「今日の生徒会会議でな?それに出演するゲストに
Six GravityとProcellarumはどうかなって話が
でたんよ。」
「へぇっそれは光栄だね」
「奏‥‥、みんなもすごく乗り気みたいで‥‥
その、迷惑じゃなければ‥‥」
「いつも11月に行われてたよね?」
「うんっ」
「だって黒月、どうする?」
「どうするっていっても‥‥まぁ、
社長には話をしてみるか」
「『ほんと!?』」


やったーっと喜ぶ彼女達。
じつは彼女たちも自分たちの学校に
彼らが来てくれたら嬉しいなと考えていたのだ。


「まだきまった話じゃないから
内密にな。あとあいつらにもまだ話すなよ?」
『はぁーいっ!』


そして時間をみると時計の針は
夜の18.00をさしていた。


『あ、そろそろ帰らないと!夜くんが、
ご飯の支度して待ってくれてる時間だ。』
「ウチも葵くんがご飯作って待っとる」


せっせかと帰り支度をはじめるふたりを慌てて
月城と黒月がとめる。


「ま、まって二人とも!」
「も、もう少し手伝っていけ」


よくわからないが止められたためしぶしぶお仕事を手伝った。
そして日は暮れて時刻は19時半。

お腹もペコペコだ。
そろそろいいよとふたりは車で送ってもらった。

ツキノ寮までつき車を降りる。


「今日はおつかれさま
ありがとうね」
「ま、せいぜい楽しめよ」
「『?』」


そういってマネズ2人は帰っていってしまった。
意味が理解できないままツキノ寮のドアを開ける。

すると入口には黒田と白田がいた。


『きゃわわぁ〜
二人ともただいまぁ♡もふもふー♡』


うさぎ好きの苺愛にとってふたりは
最高の癒しであった。
そして階段から今度はヤマトが降りてきた。


「ぁ!ヤマトちゃんただいまぁ」

ネコ好きの藍媛もヤマトを抱き抱えて
優しく撫でた。


にゃっと鳴いた後藍媛の腕から飛び降りて
階段を駆け上がる。
それに続き黒田と白田もあとを追う。


『あ、まって!』


いそいで追いかけて階段を駆け上ると、
何故か3階のProcellarumの共同スペース前の
扉で止まっていた。
そしてヤマトがにゃーといって扉を鼻でつつく。


「あけてってこと?」

にゃーっ

ぱちくりとふたりして瞬きをしたあと、
そーっと扉をあけるふたり。



\\(パーン!)//

《ようこそ!ツキノ寮へ!!》

「え、」
『ぷぎt+ほ』

あまりの驚きに変換をミスる苺愛。
グラビのみんなとプロセラのみんなが
クラッカーをならして歓迎してくれたのだ。

頭の上に紙くずをのせながらぽかーんと立ち尽くす2人。


「黒月さんも月城さんも足止め成功したんだなぁ」
「新ひやひやしてたもんねっ
あらためて二人とも、ようこそ!ツキノ寮へ!」


にこりと笑って拍手する葵と新。


「いやぁーサプライズパーティ大成功ですなぁ!」
「俺と恋と郁と涙で飾り付けしたんだよ!」
「いっくんが上の方やってくれた」
「涙たくさん折り紙おったりしてくれたよな!」


『恋くん、かけるん、いっくん』
「る〜い〜」


もうこれだけで二人の涙腺は決壊し始めていた。


「俺らの可愛い妹みたいなもんなんだから
なんかあったら頼れよ!」
「俺も相談にのるよっ」
「メガネが頼りなかったら俺にいえ
家族みたいなもんなんだからな」
「いいこと言うじゃないか始ーっ
苺愛ちゃんに藍媛ちゃん、困ったことがあったら
いつでも隼さんのところへおいで。
朝まで優しく頭をなでてあげるからね」

『隼ーー』
「始、」


もうここにきて二人の涙腺は完全に崩壊した。
あらあら泣いちゃったと焦るみんな。
しかし、すぐその不安は消えた。


「ぁり‥‥が‥‥と‥‥」


小さな声が聞こえた。
それは藍媛のものでなく、
愛らしいソプラノの声。


「今、喋った?!苺愛!」

駆がかけよってきた。
苺愛も驚いて声をだそうとするがひゅーっと
空気の音しかしなかった。

奇跡的に喋れた苺愛。
それに周りも喜んで乾杯だ乾杯だと
騒いだ。


「ほんと、みんなありがとぉ
ウチもいつかちゃんとみんなと目を見てお話がしたいな」
「きっとできる。藍媛なら」
「涙‥‥ありがとう」


それからというものお祭り騒ぎのようなパーティは夜遅くまで続いたのだった。



ーーー

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