月と星の恋

□4 光の世界への帰還
1ページ/1ページ




昔身寄りのない女の子二人がいました。
その2人はとても愛らしく綺麗な歌声を持ち
たちまち有名な小学生アイドルとして
一躍時の人となったのです。

しかし、そんなふたりを不幸なことが襲います。

学校での人気者の男の子が二人の女の子のうち
黒い髪の子に告白をしました。
しかし、女の子はごめんなさいと断ります。
気落ちした男の子を偶然、もう1人の茶髪の女の子が励まします。
その可愛さに今度はその子を好きになってしまった男の子。

その男の子にずっと片思いをしてきた
気の強い女の子はそれを耳に挟み、
アイドルで可愛い、人気者の男の子に告白され
想いを寄せられた二人に深い嫉妬を覚えました。

それから、小さな村で子供が少なかった小学校
ではあっという間にウソの噂が広まり
女の子2人がいじめられました。

家である施設に帰ってもそれは変わりませんでした。
次第にアイドル活動もやめて塞ぎ込むように
なってしまったのです。

そんなある日‥‥2人に迷惑をかけたとおもった
男の子はその日の先生からもらったプリントを
届けようと施設までいこうとしました、が‥‥

その日は雨が酷く土砂崩れがおき、
男の子はその下敷きになってしまったのです。

それを聞いた女の子2人はとうとう心が壊れてしまいました。黒い髪の子は目を閉ざし、茶髪の女の子は声を失ったのです。

「眼瞼痙攣と失声症をわずらったんだよ」

そう話していたのは月城。
その隣に黒月。グラビとプロセラに彼女たちの過去を話していたのだ。


「あいつらにとっては恋愛ていうものも、
つらいものなのかもしれないな。」
「どうにか普通の女の子に戻って欲しいんだけど‥‥」
「大丈夫ですよ!この恋くんが名前に恥じぬよう
2人を絶対に元に戻して見せます!な、駆!」
「うん!それに、俺達だけじゃなくて
みんなもいるし」


周りを見渡すとみんな心は同じという表情をしていた。


「あ、そういえばなんでー、
黒月さんと月城さんが二人の面倒見ることになったんですか?」
「あれ?いってなかったか」
「苺愛ちゃんも藍媛ちゃんも、元は
ツキノ芸能プロダクションのアイドルだったんだよ?」

‥‥‥‥はい!!!!?!

みんな声を揃えて叫ぶ。

「その時から仲が良くてね。
ここにしか身寄りがなくなった2人を引き取ったんだよ」
「元から妹みたいだったしな」


まさかの先輩アイドルだったという事実に驚くのだった。

そしてまた、マネズとグラビとプロセラによる
あらたな作戦が動き出していた。


ーーー


「ただいまぁ」
「おかえりっ」


グラビの住む階の共同スペースに
午前仕事を終えた藍媛が帰ってきた。
今日は休日、みんな忙しくてめったに揃っていないのに珍しく何人かがいた。
その中には上の階にすむ、プロセラメンバーも。


「葵、涙、始に春、海と夜も
どうしたん?
なんか、珍しいメンバーな気もするんやけど、」
「やぁ、たまたま休みがかぶったんだよ
ね!海さん!」
「夜動揺しすぎだ。(ひそひそ
よ、夜のいうとおりたまたまだよ。
たまたま。」
「なんか隠してへん?」
「隠してないよー!ね!始!」
「はぁ、お前らなぁ‥‥
たまにはみんなで出かけようって集まったんだよ
で、もうすぐ帰ってくるであろう藍媛を待ってたんだ。」
「始、」


すると藍媛の腕をちょいちょいっと涙がひっぱりながら話しかけてきた。
そしてもう片方の手をとって葵が歩き出す。


「ほら、藍媛いこ?」
「支度が終わったら下に集合ねっ」


突然のことで首をかしげながらも
藍媛は部屋に戻りいそいで支度をした。

ーーー

オシャレしすぎたかな?

なんておもいながら軽やかな気持ちで
一番後ろを歩く藍媛。
案の定先頭を歩いているメンバーはみんな
何故か自分が降りてきたときからそわそわしていた。


「あの‥‥」
「ん?どうした!」

海が返事をすると、みんなをくるりと藍媛を
振り返る。
藍媛は俯きながらつぶやいた。


「‥‥ウチが降りてきた時から
みんなそわそわしとるけど、
服‥‥似合ってへん?(しゅん」


涙目からの上目遣い攻撃。
ズキューンという効果音が何故か聞こえた。
たちまちみんなの頬が赤くなり
挙動不審なやつまでではじめた。


「‥‥そんなことないよ」


そういって進んで歩こうとした涙は電柱に顔面強打。心配して駆けつけた葵もコケかけた。


「よく似合ってるよ
お前のその格好が可愛くてみんな困ってただけだ
心配かけてごめんな。」


よしよしと藍媛の頭を撫でた始。
さすがリーダー。誰もが心の中で思ったのだった。


「ほんと?
ありがとう」(にこ

みんなの心の声(やっぱ笑顔カワイイ)


気を取り直して目的の場所へとむかった。



ーーー


目的地周辺になったところで、
右手を葵が、左手を涙が握り
エスコートをした。

そして数メートル進んだところで立ち止まる。


「着いたぞ。藍媛。」


始の声が聞こえたと同時に、
鼻をある香りがくすぐった。
昔1度だけ見たことがあるものにそっくりだった。


「この、香りは‥‥‥‥桜?」
「そう、わかるか?」
「今藍媛の周りには沢山の桜が広がってるんだよ」


海と夜の優しい声が耳に届く。
不思議と藍媛は上を向く。


「上には雲一つない青空が広がってる。」
「桜がちってすごい綺麗だよ、藍媛」

春と葵も綺麗な風景を言葉にしてくれる。


「目を開けてみて、藍媛」


そして涙がそういった。

藍媛の瞼が密かにピクリとする。
長いまつ毛が揺れて、瞼を開けようとしたとき‥‥


「だめっ!‥‥怖い‥‥」


バッと下を向いてしまった。
酷く目が乾いて痛い。
心拍数があがって手に変な汗をかいてしまう。

そんな震える手を涙と葵が優しく握った。


「大丈夫、俺達はここにいるよ」
「藍媛は1人じゃない」
「葵‥‥、涙‥‥」
「大丈夫何も怖いものはないよ」
「みんな見守ってるからな」
「俺達しかいないから安心しろ」
「さ、開けてごらん?」
「夜、海‥‥始‥‥春‥‥、」


私は彼らの顔を目を見たい。
ちゃんとこの目で見てたくさんお話がしたい、

逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、
頑張るんだよ‥‥ほらっ

周りはかたずをのんで見守っていた。
藍媛は思い切って上を見上げた。
そして大きく深呼吸をしたあと、
何年かぶりに瞼に力を込めた。


そして‥‥ゆっくりとその瞼が開かれて
綺麗な黒い瞳がのぞかせた。

「あい‥‥た。」

涙がぽこりとつぶやいた。

ぼんやりとした感覚が頭を刺激する。
眩しくてチカチカした。
目の前に広がるのは綺麗な青色。
そこに一つのピンク色が舞い落ちてきた。

桜の花びら‥‥?

一つ一つのものを言葉とともに頭に
認識させる。
そして落ちていく花びらに目線を合わせていき
顔を下げていくと、、、、
沢山の笑顔が桜の前に広がっていた。


「こんにちは
俺が弥生春ですっ。」
「俺が皐月葵」
「俺が文月海だ。」
「僕が涙だよ」
「あらためまして
俺が長月夜ですっ」
「始だ。」


そして藍媛はその大きな黒い瞳を
揺らし泣き笑いしながらいった。

「もうっ、みんなかっこいい顔してるんだから」

そしてその瞬間みんながやったーっと
それぞれ喜んだ。


「失敗したらどうしようかと思ったんだよ」
「どういうこと?夜」
「みんなで藍媛が見たいっていってた桜を
見に行ったら目が見えるようになるかもって
海がいいだしたの」
「涙、桜を見たらどうかって提案したのはお前だろ?」
「ふふっそれでつれだしてくれたん?」
「無事に藍媛ちゃんの可愛い目があいて
よかったね。」
「春‥‥可愛いなんて//」
「よかったな、見えるようになって」
「これからはいつでも目を見て話せるね」
「始、葵、ありがとう
みんなも、ありがとう」


さーてっ無事藍媛の目が見えるようになった
ところで、夜が持ってきたお弁当で
みんなでお花見しよー!
となり、シートをひいて沢山のお弁当を
囲んだ。

藍媛はみんなの眩しい笑顔と、
満開の桜とその対象てきな青空を
その目に焼き付けるのだった。


「真っ暗な世界とはお別れ
光の世界に、ただいま」





ーー

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ