月と星の恋

□5 届け私の声
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ただいまっ

心の中で呟く苺愛。
午前の仕事が終わって寮へと帰ってきた。

あれ?

Procellarumの共同スペースへとやってきた苺愛は
とある違和感に気づいた。
机の上にいくつかおいてある台本みたいなもの、
それを手にとってみると、そこには見覚えのあるタイトルが書かれていた。


(これって、、、恋くんたちがでる
番組の台本!?)

今日収録のロケ番組、
出演するのはプロセラから隼と郁と陽、
グラビから恋と駆と新の6人。
その6人が昨日の夜このスペースで打ち合わせをしていたのだ。

(もしかしたらそのまま置きっぱなしにしちゃったのかも‥‥)

あいにく今日はその収録現場への付き人の
仕事はなく、今日はこれからオフの日だった。
時計を確認すると収録まで一時間程度だった。

今からタクシーひろって急げば間に合うかもしれない!

電話帳をひらいて名前登録してあったため
一番上にいた"新くん"をタップし
メールをうちこむ。
こういう時に自分が喋れず電話できないのが
悔やまれた。


"今、ツキノ寮にいます。
皆さん台本忘れてますよね!
今から急いで届けるので待っててください!"

とうちこみ送信ボタンをおした。

(タクシーで行けば20分くらいでつける!)

そして急いでツキノ寮をでたのだった。


ーーー



ピロリン

「苺愛?」


その頃台本がないことにみんなして
真っ青になってたころ、苺愛からのメールが届いた。その内容に新はほっとするとみんなに説明する。


「台本、苺愛が今届けに来てくれてるって」
「ほんと!?新」
「よかったぁ、もー恋がみんなの持ってくって
置きっぱなしにするからー、」
「やぁ〜汗」


ぽりぽりと頬をかく恋に郁が声をかけた。

「まぁまぁ、俺達も注意がたらなかったわけだし」
「郁の言う通りだなー
女の子に物を届けさせるなんて、
男として情ねぇなぁ」


やれやれ、と自分の情けなさに頭を抱える陽。
それに対し駆と隼も口を開く。


「苺愛には申し訳ないことをしたねぇ、
慌てて怪我でもしないといいけど」
「とにかく苺愛がくるのを待ちましょう!」

そしてそわそわした様子で待つのだった。


ーーー


そのころ、


「しまったなー、事故かな」


最悪なことに苺愛ののったタクシーは
渋滞にはまってしまっていた。
全然進むことがなく、携帯の時間を確認すると
もう15分がたっていた。


(どうしよう、、
このままじゃ間に合わないよ、
目的地まで走った方がはやい)


いくら運動苦手な苺愛の足でも
この様子ではがんばって走った方が
確実に間に合う。


『運転手さんここで降ります!』
「お客さん!?」

そしてお金を渡すとすぐさま降りて走り出した。

(おねがいっ間に合って!)

手に持っている携帯でもう1度時間を確認すると
本番30分前をしるしていた。
やばいと真っ青になって、
走るスピードを早めた時だった。

ヒールが地面の石にひっかかり
体勢が崩れて転んでしまった。

声にならない悲鳴をあげて
転んでしまい、手に持っていた携帯が
道路へと滑っていってしまう。

ぁ、と思った瞬間、

バキッ

通りかかった車が携帯を踏み潰し、
粉々になってしまったのだった。


(う、う、嘘でしょぉ〜)


ーーー


"ただいま電話に出ることができません。
電源が切られているか、圏外に‥‥ツーツーツー"

「‥‥出ない」


新は不審に携帯を見つめる。ほかのメンバーが
電話をかけても同じだった。
心配で汗が止まらない恋は同様を隠せないでいた。


「どうしよう、苺愛になんかあったのかも」
「どうやらここに向かう途中で
事故があったみたいです!」


駆が調べた携帯のニュース画面をみせる。
すると郁がもしかしたらタクシーをおりて走ってきてる途中に何かあったのかもと、口にした。


「探そう、みんなして手分けをして」

隼が言った後すぐにみんなは二手に分かれて走り出した。



ーーー


そのころ苺愛は擦りむいた膝を気にしながら
走っていた。

(あーもー、なんでこんなことになっちゃったんだろう)


歩道橋を登り、反対の道へと走っている時だった。下の道路に見覚えのある人たちが見えたのだ。



「そっちは見つかったかー!」
「こっちもまだ!陽たちは!」
「こっちもだめだー!」


(陽に、郁の声?)

下の歩道には車道を挟んで、
陽、隼、恋と駆、郁、新が
大声で話をしていた。

みんな汗をかいて肩で息をしていた。

(な、なんでみんながここに?)


「苺愛を見つけたら携帯に電話してくてください!」
「わかった!」


(駆、恋‥‥まさか私を探して!?
連絡がとれなくなったから‥‥
心配してくれたのかな)

必死で手を振るも気づいてもらえるわけがなく、
それぞれの方向に走り出そうとしている彼ら。
このままじゃ、入れ違いになっちゃうし
収録にも間に合わない、


「陽あっちのほうは探したかい?」
「郁、駆まだこっちの方が探してない」


みんな探すのに必死で、上にいる苺愛に
気づく様子がなかった。


「〜っ、っ‥‥〜!!」

苺愛は必死に叫ぶがヒューヒューと息が
なるだけで声が出てくれない。
そしてそのままみんなバラバラに走り出してしまう。

(届いて、おねがいっ
みんな!私は‥‥私は‥‥
私は、ここにいるよ!)


「いっくーーーん!!!」
「!?」

周りの車のエンジン音などの騒音があるにも関わらず、何処からか声が聞こえた郁。
急に立ち止まった郁に、新と駆が振り返ろうとしたときだった。


「新くん!駆くーーーん!!」
「「っ」」

2人も聞こえたのか足を止めて、耳をすませる。


「隼くん!‥‥恋くん!!
陽くーーん!!」
「っ、声?」
「なんだ!?」
「‥‥誰かが呼んでる?」


3人も確かに聞こえたソプラノの
声に耳を傾けた。
その声は止まることなく、自分たちの名前を呼び続けていた。


「いっくーん!!新くーーん!駆くん!
‥‥っ、隼くーん!恋くーん!
陽くーーん!」


みんなは声の聞こえる後ろを振り返る。
しかしそこには行き交う車しかない‥‥


「っみんなぁーー!」

ふたたび聞こえた声は上からして
上を見ると、、、
そこには歩道橋にたつ探していた人物が、


「「「「「「苺愛!!」」」」」」

「いっくん!新くん!駆くん!
隼くん!恋くん!陽くん!」



届いたっ‥‥私の声‥‥


ーーー


あれから無事収録は終わり、
携帯が車の下敷きになった苺愛は、
後日新しい携帯を買ってもらった。
ガラケーだった苺愛と藍媛は、いい機会だと彼女と一緒にスマホデビューをしたのだった。


そして‥‥


「「「「「「おめでとー!」」」」」」


苺愛の声が戻ったことにより、お祝いとして
例の場に居合わせたみんなでカラオケにきていた。


「やーでも苺愛ちゃんの声が戻ってほんっとによかったよなー。ね、陽くんて言ってみて」
「陽くん?」
「はいかわいーー!」
「陽気持ち悪い」
「新酷くね、
そんな事言ってぇ、苺愛ちゃんに
名前呼ばれてにやけてたのは誰かな?ん?」
「にやけてない」
「ふふっ」
「笑った声もかわいーなー」
「陽くんも新くんも仲いいですねっ」


苺愛のほっぺをつつく陽。
イチゴ牛乳を飲む新。

「ほんとはみんなで苺愛の声を取り戻そうって
計画してたカラオケパーティだったんだけどね」
「そうなの?かけるん」
「歌好きって聞いて俺が主催したんだよ!」
「恋くん‥‥ありがとぉ」
「さっ、今日はたくさん歌って
発散してね苺愛」
「いっくん、で、でも久しぶりだし
うまく歌えるか‥‥」
「僕は優雅にお茶を飲みながら
苺愛の歌を聞くのを楽しみに来たんだよ?
さぁ、苺愛。僕のためにその可愛いことりの
歌声を聞かせておくれ」
「隼さんってば、ハハ」
「ふふっ、じゃぁ隼くんのお言葉に甘えて‥‥」


苦笑いする郁からマイクをうけとり
自分の大好きな曲をいれた苺愛。
そしてスピーカーから優しい音色がながれだした。


「せーかーいはー恋におちてーいる」


世界は恋に落ちている、苺愛が大好きな曲。
そのふんわりした音色と鈴のような苺愛の声が
フィットしてとても綺麗だった。


楽しいことも、悲しいことも
嬉しいことも、怒れちゃうことも

たっくさんお話しようね!
みんな!


ーーー

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