月と星の恋

□9 大人な温泉ロケ
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朝と夜が涼しくなってきたこのごろ。
木々も赤や黄色に色づき秋がやってきた。

付き人の仕事をはじめて半年が過ぎた
苺愛と藍媛は、すっかり慣れて
最近では積極性もましていた。

そして今日、彼女達は月城たちはほかの仕事があるためグラビとプロセラの年長組の仕事についていくようにと言われていた。

内容は一泊二日の温泉ロケである。
予定では朝7時に起床、8時半には出発予定なのだ。

ただいまの時刻は朝7時5分、
白き魔王様を起こしに海が部屋へとやってきていた。気持ちよさそうに寝ているであろう隼がいる個室をあける。


「あー、やっぱり。
隼ー朝だぞー。」
「ん〜」
「こーら布団に潜るな!」

バッ

くるまる布団を剥がした途端
海の顔はひきつった。
そこには隼に抱き枕にされてきもちよさそうに眠る苺愛の姿。


「苺愛!?」
「んぅ?‥‥あぁ、おはようございます
海さん。」
「お前なんで隼のベットに、」
(↑後で起こしに行くつもりだった)


すると彼女は目を擦りながらむくりと起き上がった。

「んー、怖い夢を見ちゃってっふぁ!」
「さぁむ〜い〜」
「て、こーら隼!
苺愛をベットにひきづりこむな」

苺愛からひきはがすとしぶしぶ
隼はあくびと伸びをしながら起き上がった。


「やぁ、おはよう海」


ーーー


春の笑い声がひびく。

「隼たちもだったんだね」アハハ


グラビの共同スペースで朝食をとる
年中組と苺愛と藍媛。
そこにいる始は少し不機嫌気味であった。
春も同じ体験だったと口を開く。


「藍媛も始の部屋にいて、
同じようにガッチリ抱きついちゃってるもんだから、起こす大変さが2倍」
「それで不機嫌さも2倍デーと」


呆れた感じで笑う海。
そしてまだ眠そうな藍媛の頭をなでた。

「お前も怖い夢見たんだって?
大丈夫だったか?」
「うーん。心配いらへんよ〜
大丈夫」
「なら、出発までに眠気覚まさないとなっ」


すると食パンを食べながらこくこくと
頭をゆらしだした苺愛。

「‥‥」
「おや?苺愛は寝ちゃったみたいだね
もっかい僕と一緒に安眠「「だめです」」ちぇ」
「ふぁ〜、なんでもいいが早くしないと
遅れるぞ」


海と春に突っ込まれてぶすっとする隼。
のんびりなみんなになんとか覚醒した始が
声をかけた。


ーーー


「集合場所は〇〇やから、ここからタクシーで」
「タクシーの手配終わりましたっ」

今回はマネズが車をまわせないためタクシーでいくことになっていた。
そして準備を終えた始たちは集合場所までついた
みんなはそれぞれロケ車に乗り込み、
目的地へとむかった。

景色はたくさんの大きなビルから
赤や黄色の山へと変わった。
そして今回取材する静かな温泉へとやってきた。


「スケジュールを説明します。
今日はこのあとオープニング映像をとったあとすぐに温泉につかり撮影を行います。そして
夕食の撮影をします。なんカットかとったあとは普通に食事をとってその後はオフの予定です。」
「宿泊する部屋は四人相部屋で菊の間やから
間違えないようにな。ウチと苺愛は隣の牡丹の間におるからなんかあったらくるように、
‥‥以上」


プチ関西弁で喋る藍媛は敬語が苦手で、
これで大丈夫かな?と不安そうに苺愛を見る。
藍媛の喋りは穏やかでゆっくりなため、敬語でなくても物腰やわらかに聞こえるため苺愛は大丈夫だよっと口パクした。


「それでは、収録にむかってくださいっ」
「「「「はいっ」」」」



ーーー


撮影は無事に終了。

始にカニをあーんとするサービスシーンを
披露する隼や、春の本体が鍋に入ってしまうなど
なんだかんだあったがいいものになった。

そして、ちゃんとした夕食タイムにはいる。


「食事は藍媛たちも一緒にとることになってるんだよね?」
「そうだ、春。
‥‥そろそろくるんじゃないか?」


始のよみどおり先に温泉につかってひと休みした
藍媛と苺愛が浴衣を着て部屋に入ってきた。


「みんなおつかれさまですっ
わ、おいしそぉ」
「カニさんや新鮮なお刺身まで
ウチ、お刺身大好きなんよ!」
「お前達ここに座れ
苺愛は焼き魚なら食えたよな?
藍媛はこの刺身が好きだったよな」


ひょいひょいとよそって、苺愛たちのまえに
料理をおいてくれる海。


「へへっ海兄ありがとぉ
んーっとろとろ〜」
「僕オススメのこの魚もあげるよ
きっと、ほっぺがおっこちてしまうよ
ほら、あーん」
「へ!」
「ほら、あ〜ん」
「あ、あー、ん?」


戸惑いながらも口を開けて隼に魚をもらう苺愛。
すると口の中に上品な味がひろがる。

「おいしい!い、今まで食べたことない味‥です」
「そぉ?ならよかった」


ニコッと満足げに笑う隼。

一方藍媛たちのほうは
春の心配をしていた。


「春、大丈夫やった?
お鍋におちて熱かったよね」
「藍媛、俺のメガネに話しかけるのは
やめてくれないかな?」
「大丈夫っ春にとっては春(メガネおき)
のところにいるのが一番安全やからね」
「こーらー!」


わしゃわしゃと頭をかきまわされて
てへへっといたずら笑いをする藍媛。

「おしい奴をなくすところだった」
「ちょ、始まで!」
「まあまあほら、料理が冷めちまうぞ」
「「「はぁーい」」」


たくさんの料理を食べふうー、と一息つくみんな。すると隼が苺愛の手を取り立ち上がる。


「ちょっと夜風にあたりにいこうか。
ここの庭なかなか綺麗だったから見に行かないかい?」
「はいっぜひ!」


ーーー


「ふぁ〜ぁ〜
苺愛は〜ウチのことおいて
どこいった〜ん」
「苺愛は隼と一緒にでかけたぞっ
あぁ、完璧に酔っちゃてるな」


旅館で出された甘酒を飲んだ藍媛は酔ってしまいました。
机につっぷす藍媛に羽織りをかけてあげる海。

酔った藍媛はいつもより少しわがままになってしまっていた。

「海〜」
「どうした?」
「春さんをここにつれてきなしゃいっヒック」
「‥‥俺?」
「‥‥おおせのままに」


そして彼女のまえに春を座らせる海。
しかし間違っていたらしく藍媛がぷくっと頬を膨らます。

「ちがう〜メガネ置きじゃらくて、
は、る、さ、んですっ」


あーそういうことかと理解した始が、
メガネ置きから春をはずし、丁寧に
彼女の前におく。


「よいしょっと
これでいいか?」
「くるしゅうない〜」

黒の王様にこんな態度とったとあとで知ったときには藍媛はきっと相当後悔するだろう。


「春さんきいてくださいよぉ〜」

なぜかそこから春さんにひたすら話しかける藍媛
内容はどれも始たちのことばかり。


「ふふっそれでね?
ウチはそう言ったんよ
そしたらねぇ?始は〜きにするなっていって
ものをとってくれたんよぉー?」

春が優しいとか、海に肩車してもらった話など
聞いていてみんなが恥ずかしくなる話ばかりだった。


「かっこい〜でしょ?
ふふっウチはね〜みんなが大好きなんよ〜」
「はいストップ!もーストップ!」
「春落ち着け、」

恥ずかしさに耐えられなくなり春は
自分の本体をとりかえす。

「あ〜春さん!」

すかさずとりかえそうと手を伸ばす藍媛。
しかし身長差があるため手は届かない。

「めっ!」

春は指を前につきだして抵抗する。
するとむっすりと膨れた藍媛は春をおいかける。
海の周りでぐるぐると追いかけっこをはじめる2人。


「こーら危ないぞ」
「春さんかえし‥‥わっ」

足元がふらつき倒れ込む藍媛。
危ないと始がかかえこむ。


「っと‥‥ん?」

そのまま始の膝へ倒れ込んだ藍媛は
そのまま規則正しい寝息をたてはじめた。


「寝ちまったか
まったく、お騒がせだな」

なんて笑いながらもう1度羽織りをかけなおして
あげる海。
むにゃむにゃと幸せそうに眠る藍媛の寝顔をのぞきこんだ春はおやすみといいながら頭を撫でた。


「じゃ、責任もって部屋につれていって
あげてね始。」
「春‥‥、。‥‥わかった。」


ーーー


「わぁーっ綺麗!」

夜の庭園へとやってきた隼と苺愛。
落ち着いた雰囲気があり、だけど華やかな
和風感があった。

「ふふっ始さん似合いそうですね
あ、新くんとかもかな?」
「喜んでもらえてなにより」


楽しそうにあたりをみる苺愛。
和服なだけに少し大人びた姿、夜の月の下というのもあってやけに綺麗に見えた。


「苺愛は、少し大人っぽくなったかな?」
「へ?わ、私ですか?」
「来た時は怯えた子うさぎさんみたいで、
今にも孤独死しそうな感じだったからねぇクスッ」
「そ、そんなでしたか?」
「今となっては話せるようにもなったし、
僕達の目を見て笑顔も見せるし‥‥」
「ふふっ少しでも成長できてるなら、
すごく嬉しいです。これも、隼さんたちのおかげなんですよ?」
「それはどういたしまして」
「大兄みたいに大好きなお兄ちゃんばかりです」
「お兄さん‥‥ねぇ」


少し進んだところでベンチに座る。
星が綺麗な夜空を眺めながらふと
苺愛が口を開いた。


「私、はやく大人になりたいんです」
「それはまた、どうして?」
「‥‥私、ずっと臆病で今でも臆病で
ずっとずっと大兄や奏さんに守ってもらって藍媛ちゃんの後ろに隠れて生きてきたんです、
‥‥でもそんな自分から変わりたくて。
ふふっマイペースでもいいから隼さんみたいにかっこよく成長したいですっ」
「‥‥どんなふうに?」
「んー、藍媛ちゃんとか‥‥始さんみたいな
こー‥‥色気のある感じに‥‥」
「‥‥」

ふふっと笑って苺愛は言葉を続けた。

「なーんて、冗談で‥‥」
「それなら、隼さんが大人にしてあげようか?」

魔王様の瞳でそーっと頬を擦る隼。
見事に固まった苺愛にぷふっと吹き出した。


「冗談だよっ
苺愛の反応は面白いね」
「か、からかわないでくださいよぉ///」

びっくりしたぁーとドキドキする胸を抑える苺愛

肌も冷たくなってきたため、そのあと
隼に手を引かれて自室の方へと歩き出したのだった。



ーーー


おまけ
菊の間と牡丹の間の
あいだの廊下にて。


「はじめはじめはじめーー!?
なんで藍媛をお姫様抱っこしてるの!?」
「隼、うるさいぞ
‥‥寝たから部屋まで連れてきた。」
「藍媛ちゃんほっぺ赤いよぉ?海兄」
「甘酒で酔っちまってな
朝起きたら元に戻ってるだろうから安心しろ」
「夜遅いしみんなもう寝ようか」



ーーー

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