英雄伝説

□プロローグ
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夜とは違う暗闇。
暗い、暗い闇。
そんな暗闇の中カチャリと扉の開く音が響いた。
バタンと扉が閉まる音が聞こえた後にカツカツと足音が定期的に響く。
そしてピタリと足音が止まった。
「さて、今年も頼むぞ。大切な『先見の巫女』よ」
「……今年は例年通りの何ら変わりません」
「……ふむ。ならばいつが“豊作”なのだ」
「…………今から、数年後の新生児……です」
「そうか」
嬉しそうな男の声が響いた後にジャリと鎖が動く音が聞こえた。
「……貴様には何も出来んよ」
嘲ける様に男は告げた。
「………………」
「それではまた、我々が来た時にはぜひ頼むよ」
『先見の巫女』よ、と男は締めくくりカツカツと離れて行った。
バタンと扉の閉まる音が聞こえ、静寂が広がる。
「っ……すまない」
巫女は辛そうにそう言うとガシャリと手に付けられた鎖を鳴らしながら自身の首へと動かした。









あれから数年後、月に照らされながらも夜道に赤い髪をした子供を抱え荒れた地をジャリジャリと進む人間がいた。
「……このあたりで十分か?」
そう言いキョロキョロと辺りを見回すと近場にあった子供が横になるには少し大きめの石の上に子供を置く。
「さて、今日の仕事は此処までだったな」
子供を置いた人間はそう言うとパチンと『姿くらまし』をしてその場を去って行った。
その場に残ったのは月明かりを浴びながら今だ目を閉じて寝ている子供だけであった。

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