英雄伝説

□三話
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朝日が昇り俺は目を覚ました。
(……ね、む)
ゴシゴシと目を擦る。
「起きたか」
エスタはすでに起きていた。
剣を持って俺を見ている。
「…………」
「まずは朝飯を取りに行くぞ」
「…………」
「おーい、起きてるか?」
「……ぁい」
コクリと頭が揺らぐ。
「…ダメだな。しばらく待つか」
エスタはよっと、と言いながら腰を下ろした。
「なぁんで拾ったんだろうな……」
頭がボーとしていて何も処理されていない。そんな中でエスタの独り言を右から左に聞き流していた。
「この俺が言葉分かんねぇガキに言葉教えて、飯食わせて…あけぐにぁ“喧嘩”を仕込んで……」
「ホント、人生何処で変わるか分からねぇな、親友」
「…………」
「……いい加減起きろ!」
エスタは俺に寄ってきて頭を叩いた。
「うっ……あ?」
「やっと起きたか」
行くぞ、とエスタは言い出ていく。
俺は立ち上がりエスタの後を追いかけた。
エスタは昨日出会った場所へ来ていた。
「……?」
俺はキョトンと傾げる。
「……よく見ておけ!食料はこうやって得るもんだぁ」
エスタは左側の草むらから出てきて襲って来た奴をその場でクルリと一周回り、襲って来た奴と向き合ったかと思えば瞬時に首を跳ねていた。
ブシャャァと赤い液体が吹き出す。
赤い液体はどんどんと吹き出し地面を赤く染めていく。
「……えすた、これ?」
俺はエスタを呼びながら赤い液体に触る。
「ん?……ああ、血か?」
エスタはアッサリと教えてくれた。
「ち?」
「ああ。それはな人間には必要なもんだ。それがいっぱい、そうだなぁ…今と同じくらい流れたらもう生きる事は出来ねぇ」
「……?」
「まだ分かんねぇか……」
エスタは俺の顔を見て笑った。
「よっと……」
エスタはヒョイと首がない体を抱えた。
「ちょっと川があるところに行くぞ」
エスタはスタスタと歩いて言った。
(あ!……)
俺は置いていかれないようにエスタの後に続いた。
しばらくすると俺よりずっと先を歩いていたエスタが急に立ち止まった。
「着いたぞ」
エスタの横に行き前を見ると青くすんだ川がサラサラと流れていた。
「わぁ……」
「気に入ったか?」
「ぅい!」
「……今度はうかよ」
「……?」
「まぁいい。飯が先だ」
エスタはこう言って体を抱えたまま川へと向かった。
エスタは川でジャブジャブと剣を洗い、その洗った剣を使って体を別けはじめた。
「えすた……?」
「人間ってのはな、食えるんだ。よく見とけ。いずれお前にも必要になる技術だ」
エスタはこう言ってザクザクと切り進める。
エスタが切れば切るほど周りが赤い血に染まっていった。
「よし、こんくらいか」
エスタは切り分けたいくつかの肉を側に置きながら言う。
「後は剣を洗ってすぐに離れるぞ」
獣や他の奴らが取りこぼしを狙いに来るからな、とエスタは言いながら剣を洗っていた。
エスタは何度もうん、うん、と言い振り返った。
「ラク、行くぞ」
エスタは俺の手を掴む。
「走るぞ」
エスタは駆け出した。
「!?」
俺は急いで駆け出す。
「ハァ……ハッ」
エスタはとても早く俺がエスタの元へと着いた時には息が切れていた。
「此処まで来れば平気だろう」
エスタは俺を見る。
「……大丈夫か?」
「ハァ……ハッ……」
俺は隣で座り込む。
「……少し休憩するか」
エスタは腰を下ろした。
「飯、食い終わったらまた“喧嘩”やるからな」
俺はコクン、と頷く。エスタを今度こそ一殴りしてる!
「で、その後は勉強な」
「…………やた」
「ダメだ。今もきちんと話せてないし、分からない言葉も沢山あるだろう?」
「…………」
エスタは立ち上がる。
「まだ座っていていい。だが動くなよ?俺は薪を拾ってくる」
エスタはタッタッと走って行った。
(はや……い)
俺はゴロンと寝転がる。
「そ……ら」
俺の目の前には青く透き通る空。そして青い空にフワフワに白い雲が浮かんでいた。
「…………」
ボー…と俺は空を見上げる。けれど暇だとか暑いとかそういうふうには思わずにただ、ただそうするのが当たり前……みたいに感じていた。
いつまでそうしていたのかは分からない。ただユックリと進んでいく雲をいくつも見ていた時に不意に声がかけられたのだ。
「おら、起きろラク」
ゲシッと軽く足で頭を踏まれる。
「むぅ……」
俺はエスタが足を除けるとすぐさま立ち上がる。……また踏まれたくないし。
エスタは片手を薪で一杯にし、もう片手で肉を掴んでいた。
「……戻るぞ」
エスタはこう言った後にクルリと背を向けて駆け出した。
(わ……と……)
俺は置いて行かれないように急いで駆け出した。

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