英雄伝説

□六話
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(…………あれ?)
ジンジンと太陽が照り付ける中、俺はエスタと一緒に食料(動物か人間)を探している時だった。
(……きのせいかな?)
ちいさくて、きらきらして……うすいそらをはなち、なんかぽわぽわしたかんじがつたわる。
それはビュンビュンと不定期に、しかし物凄いスピードで飛んでいる。
そして、きらきらとしているそれには嘴があった。
(…………とり?)
俺は隣でキョロキョロと辺りを見回しているエスタの服をグイグイと引っ張る。
「えすた、あれ」
なに?とビュンビュン飛ぶやつを指しながら聞く。
「ん?…………何の事だ?」
そう言ってエスタはキョロキョロと指差した辺りを見る。
「あれ!」
俺は指を飛んでいるところを的確に指差す。
「……何もいないぞ?」
暑いから何か幻覚を見たんだな。少し木陰で休もう、とエスタは言って俺の左手を掴み木陰へと歩く。
(…………えすたにはみえないのかな?)
あんなにもきらきらしているのに。
ドサリ、と木陰に着いたエスタは座る。
「ほら、ラクも座れ」
俺はエスタの言う通りに座るが、目はずっとあのキラキラを追っていた。
(…………あ!)
キラキラがビュンビュンと俺の近くへとやって来る。
(そーっと……)
俺はユックリとキラキラに向けて手を伸ばす。
(もうすこし……)
俺はあと僅かなキラキラへと必死に手を伸ばす。
「あ…………」
しかしキラキラはビュンと俺の手から上へと避け、逃げた。
「にげちゃった……」
(あと、すこしだったのに)
「…………ラク?」
エスタはまだ見えるか?と眉を下げ心配そうに聞いてくる。
「いたのににげた」
「…………そうか」
もう少し居るから、と言ってからエスタはゴロリと横になり、目を閉じた。
(つかまえたかったな……)
むぅ、とモヤモヤした気持ちのまま、ゴロリと横になる。
「…………あ」
横になってから、上を見上げた時だった。
「…………いた」
生い茂っているように沢山ある葉っぱの中、キラキラが太陽の光りに反射しながらも飛んでいた。
(……でもとどかない)
精一杯手を伸ばしても全然足りなくて、空を切るばかり。
(……むり、なのかな)
俺は少しずつ腕を下げる。
「さわりたいな……」
俺はポツリと呟く。
それがあのキラキラにも聞こえたかは分からないがビュンビュンともうスピードで下りてきてちょこん、と俺の手の上に留まった。
「うわぁ…………」
手に乗ったキラキラはよく見て見ると羽は長いが体は小さくて丸く、鋭く嘴が伸びている鳥だった。
俺の手に乗ったキラキラの鳥は先程みたいに逃げる事はせず、長い嘴を長い羽へと当てて羽を整えていた。
(触っても……大丈夫かな?)
そろそろと手を伸ばし鳥に近づける。
そして、そっと触るとフワリとした感触が伝わった。
「うわぁ……」
その感触が気持ちよくて、二度、三度と撫でて行く。
俺がニコニコと笑いながら撫でていてもキラキラの鳥は嫌がる様子を見せず羽を整えている。
「きれい……」
綺麗なキラキラの色に見とれながらも俺は満足するまで撫で続けた。





「またねー!」
隣でいびきをかき始めたエスタを無視し、満足するまで撫でた俺はキラキラな鳥から手を離す。
キラキラな鳥は手を離した瞬間にビュンと何処かに去って行った。
「えすた……」
俺はクルリと振り返りエスタの元へと向かう。
「えすた!!」
エスタの元へと着くなり俺は大きな声を出しながらブンブンとエスタを揺する。
「えーすーたー」
「…………んあ?」
ああ、ラク……と言いながらエスタは目を擦り、起き上がる。
「寝てたのか……」
ボリボリと頭を掻きながらエスタは言う。
「まだ陽はある……か」
空を見ながらエスタはこう呟いた。
「ラク、行くぞ」
そう言ってエスタは立ち上がった。
「今うろつけば鳥か兎くらいはいるかもしれん」
最も、陽が暮れるまでだからな、とエスタは続ける。
「陽がオレンジ色で一部が沈み始めたら“家”まで戻って来い」
迷子になったら動くなよ!とそう言ってエスタは駆けて行った。
(はやく、いかないと)
じゃないとかえれなくなる。
俺は食料を見つける事と同時に帰る事を意識しながら駆け出した。

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