なにこれ理不尽過ぎるよ。

□意味が分からないよ!
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 さっちゃんは言った。

「ハンバーグが食べたい」

 私は言った。

「じゃあひき肉買って帰ろう」

 さっちゃんは首を振った。

「○○スーパーのひき肉じゃないとやだ」

 …いやさっちゃんそこ家と正反対の場所なんだけど。

 私は激しく嫌な予感を感じとり一目散に逃げた。

「桂里買ってきて」

 0,1秒で捕まったけど。





――――――――





 現在、池袋のとあるスーパーに私は向かっている。

 ひき肉をゲットするためだ。

 ていうか私の近所のスーパーのひき肉とどう違うんだ。同じだよ。絶対ただの嫌がらせだよ。

 さっちゃんに駆り出されると、最近ろくな事がないんだよなあ。

 池袋最強なんじゃないかと言われてる2人に絡まれちゃったし(あれ、折原さんは新宿か)、あと最強って言われて会ってないのは、首なしライダーか。あれ、黒バイクだっけ。まあ、どっちでもいいか。

 まあ、流石に黒バイクには会わないだろう。噂だと人外だとか言われてるし。




―――――――




「………」

「………………」

 会っちゃったよ。

 え、皆予想できたの?え、なんで教えてくれなかったの、ちょっと。

 何故か首なしライダーは私を見つめて佇んでいる。ていうか、この人スタイルめっちゃいいんだけど。私の胸囲とウエストの大して差のない体への挑戦か。よろしいならば戦争だ。…ていうか首なしライダーって女だったんだ。

「あ、あの…?」

 とりあえず会ってしまったのはもう仕方ないんだが、何故かスーパーに向かおうとする私の行く先を通せんぼしてるから通れない。早くひき肉買って帰りたいんだが。

 私がオロオロしていると、急にPDAで何かうち始め、私に突きつけた。

『ちょっと頼みがあるんだが』

「(喋れないのかな?)頼み、ですか。まあ、できる限りは協力します」

『助かるよ。少し道を聞きたいんだ』

 …なんだろう。凄い普通の人なんだけど。PDAで会話してるって事以外は凄く普通だ。

『○○スーパーという場所を知っているか?』

「あ、そこ私も行くところなんですよ、夕飯買いに。良ければ一緒に行きますか?」

『良いのか?』

「ええ、旅は道連れと言いますし」

 なんか使いどころ違う気もするけど気にしないでおこう。

 私と首なしライダーはスーパーに向かって足を進めた。

「あ、そういえば、お名前聞いてもよろしいですか」

『セルティ・ストゥルルソンだ』

「すとろーそんさん?」

『ストゥルルソンだ。セルティでいい』

「セルティさんですね。私は颯真桂里っていいます。よろしくお願いしますね」

『桂里か。よろしく』




――――――――




「はー、やっぱりセルティさんが黒バイクの人だったんですね」

『ああ、どうやら周りからはそう呼ばれている様だな』 

 数分歩きながら話していたら、セルティさんとは随分仲良くなった(気がする)。

「セルティさんは何の用でスーパーに?」

『ああ。同居人が最近忙しいからと言ってろくな物を口にしないんだ。何だか知らんが、私の作るものなら食べれるらしい。だから私が何か作ろうと思ってな』

「同居人?女性ですか?」

『いや、男だ』

「マジですか」

 それ絶対男の方下心あるよ。まあ、セルティさんスタイルも性格も良いし、分かんなくはないけどさ。ていうかそんなあからさまな態度受けといて気付いてないのか?

「もしかして彼氏さんですか?」

『は、は!?そ、そそそそんな訳がないだろう!』

「仲良さげですし」

『あ、あいつは私をからかって面白がるのが好きなだけだ!断じて、その様な関係はない』

 …なんか物凄い反論を食らってしまった。なにこの人、ツンデレ?

 ていうか、その同居人の下心に気付いていない辺り、天然なのかもしれない。こんな大人っぽいスタイルの人が天然…。これは同居人も下心持つよな…。

「でもセルティさんの格好でスーパーとか目立ちそうですね」

『………』

「?…セルティさ、」

『しまった!言われてみればそうだ!』

「…はい?」

 セルティさん曰く、目立つという概念が無かったらしい。…やっぱり天然だなこの人。

「良ければ、材料教えてくれるなら、私が買いましょうか?」

『!?ほ、本当か…?』

 何故この場面で嘘つくんだ。

「勿論です。あ、お金は払ってくださいね」

『あ、ありがとう!桂里は恩人だ!』

 セルティさんに何かめちゃめちゃ感謝されて、材料を私が買ってきた(多分カレー)。

『本当にありがとう』

「大した事してませんよ。あ、そうだ」

『?』

「良かったらメアド交換しません?これからも、色々お話しましょう!」

 言った後で、「なんかナンパみたいだなこれ…」と急に恥ずかしくなった。ていうか積極的過ぎるよ私!多分セルティさんが久しぶりに会った常識人だから(存在が非常識だけど)かもしれない。

「あ、あのやっぱり…」

『………』

「…?セルティさん?」

『桂里はなんて良い奴なんだ!』

 ハグされた。なんでだ。

 セルティさんという友達ができ、今日という日は幕を閉じた。

 ていうか、結局首から上はあるんだろうか。ないのだとしたらどうなってるのか。今度会ったときに聞こう。


 

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