なにこれ理不尽過ぎるよ。
□可愛い人だなあ、人外だけど。
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最近、よく黒バイクことセルティさんとよく遊んでいるかもしれない。
「あ、セルティさん」
『すまない、桂里。待たせたか?』
「いえいえ。お仕事お疲れ様です」
待ったのは事実だから否定はしないけどな。わざわざ蒸し返すほど嫌な性格はしていないつもりだ。
「今日はどうしましょうか」
『あ、あのな。桂里』
「はい?」
セルティさんは少し悩むような仕種の後に、意を決した様に私に向き直った。…なんだなんだ、そんな改まって重大な事を言うように。私は「今日は何して遊びます?」という意味で訊ねたのに何故にマジレス。
『う、うちに来ないか…!?』
「………はい?」
思わずキョトンと目を点にした私に罪は無いと思うんだけど、そんな私を見てオロオロしているセルティさんを見るとなんとなく申し訳ない気持ちになる。なんかごめん。
『い、いや!変な意味ではないんだ!ただたまにはいいかな、とか、今日は誰も居ないから…』
「とりあえず落ち着いて下さい」
いやマジで。
さっきまでは全然そうじゃなかったのにセルティさんが弁解すればするほど変な意味に聞こえる。天然なのかなやっぱり。
スタイル抜群の天然。…これは流行るな。
「いいですよー」
『!』
「セルティさんの家ってどんなんですかね。楽しみです」
事実、想像が出来ないし。楽しみというよりは気になるな。
私が笑いながらそう言うと、セルティさんはいきなり私に突撃してきた。
「ぐふおっ!」
『なんて桂里は良い奴なんだ!私は感動したぞ!』
さいですか。いや、あの、セルティさん首絞めてるんですけど。
「絞まってる絞まってる!」
『す、すまない!』
まあ、とにかくセルティさんの家に行ってみよう。わくわく。
――――――――――
さあ、着きましたセルティさんの自宅。
『ま、まあ、ゆっくりしてくれ』
「うおおお…」
結論を言うと、吃驚した。
凄く広い。デカイ。これはあれだわ。所謂高級マンションという奴だ。私には縁の無い類いの場所だわ。
「凄く立派なお家ですね!」
『そ、そうか?』
「はい!感動しました!」
そりゃあもう。思わずキョロキョロ見渡してしまうほどだよ。いやあ、羨ましいなあ。
「同居人さんは居ないんですねえ」
『ああ、今日は仕事で遅くなると言っていた』
「へえ」
大変そうですね、と相槌をうちながら、私は気になった事を訊ねてみることにした。
「セルティさん」
『なんだ?』
「ヘルメット、取らないんですか?」
『!』
部屋の中じゃ邪魔じゃありません?と訊ねると、『いや、それは、その』とPDFに打ち込みながらオロオロとし始める。そんな重大な事を言いましたかね、私は。
「セルティさん?」
『…これを見たら、多分桂里は吃驚する』
「吃驚?」
なんだろう。顔に痣があるとか?もしくは人相が悪いとかそんなんだろうか。
「吃驚されると困るんですか?」
『…吃驚して、嫌悪するだろう』
そんなに酷い人相なんだろうか。まあ、誰にでもコンプレックスはあるんだろうし。
「吃驚はするかもしれないけど、多分嫌悪はありませんよ」
『!』
「セルティさんですからね」
あれ、私良いこと言った、と感動したら、セルティさんも感動したらしく、めっちゃ抱きついてきた。あれデジャヴ。セルティさんの豊満な胸で圧死する。
『桂里!大好きだぞ!』
「あ、私も好きですよ」
私がそう言えば、セルティさんは暫くした後に、意を決した様にヘルメットに手を掛けた。
「え…」
ヘルメットの下にあったのは、どんな人相なんだ、と期待した私の予想の斜め上をいくものだった。
「ない…だと」
人相っつーか首から上がありませんでした。
まじか。どうなってんだこれ。ぱねえな。
「セルティさん」
『………』
「一つ、お訊ねしてもいいですか?」
『なんだ』
疑問に思っていた事を告げる。
「どうやってヘルメット被ってたんですか?」
『………は?』
「いや、だって。どう見ても首から上が無いですよね。バイクとか乗ってますけど、これヘルメットぽろって落ちません?」
だって引っ掛かる場所がないんだから、慣性の法則的にさ。あれ、慣性の法則で合ってるっけ。私物理3(10段階評価)なんだよなあ。
『怖くないのか?』
「え。ああ、首無いことですか?まあ、噂は聞いていましたし、もしかしたらな、とは思ってましたから」
流石にちょっと吃驚はしましたが、と言えば、セルティさんは感極まったように震えた。
『ずっと友達でいてくれ!』
「?いいですよー」
一生ものの友達(人外)が出来た今日この頃。
…結局、どういう構造になってたんだろう、あれ。