私と貴方の恋愛事情

□困難を乗り越えた先には希望が待っている。
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 幸村精市。

 男子テニス部主将。

 文武両道を重んじる我が校において、正に模範的生徒。

 高校生とは思えぬ物腰の柔らかさと、周りに対する気取らない優しさが好評。

 男子テニス部ファンクラブ(非公式)の幸村部門の人数は常にトップクラスであり、過激派も多数存在している。

 …と、以上が幸村精市の調査結果である。

「これは、なんつーか…」

 中々凄いな。漫画みたいだ。少女漫画。

 …ていうか。

「ファ、ファンクラブ?」

「…知らないのあんたくらいよ」

 この現代日本にそんなもんがあるんですか。ていうかそれ丸っきりアイドルやんけ。

 しかしまあ、気持ちは分かる。あれは格好良すぎる。反則だ。

「でもさあ、あんた何であいつの事を好きになったわけ?」

 みっちゃんの質問に頭を傾げた。

「さっき言ったじゃん」

「いや、顔がタイプなのは分かったけど」

 それ以上何があるんだというんだ。いや、顔がタイプだからとか我ながら理由最悪だけども。

「あんた中村君とは性癖の相違、…ああ、いやむしろ同類だったから別れたんでしょ?」

 ………。

「はっ!」

「今気づいたんかい…」

 ああっ!みっちゃんが物凄く冷めた目線を送ってくるっ…!これが幸村君なら性的な興奮が沸き上がってくるかもしれない。いや、むしろ美形であれば多分沸き上がるわ。…あれ、ますます私ビッチじゃね?

 しかし…、そうか。言われてみればそうだ。

 申し分ない、むしろ私には勿体無い彼氏であった中村君と別れたのだって、性癖の問題だ。

 そりゃあクリーンな付き合いしてる時は然程問題は無いだろう。実際私だって学生の間にそんなつもりはない。ただ、結婚とか、もしくは性行為をするにあたって、これは避けては通れない道だ。

 まあ勿論中村君とそんなに長く付き合う保障なんてありはしないけど、けれどもしそうなった場合、いつか必ずその問題に直面してしまうのだ。

「ああ、切ない」

「あんた自分がMな事をよくもまあそんだけ偉そうに語れるわね」

「いやあ…」

「誉めてないから」

 しかし、聞く限り幸村君とやらはSではなさそうだ。実際私だって彼の物腰の柔らかい所は目撃しているし、きっと噂通りの御仁なんだろう。

「…ど、どないしようっ…!」

「いや、こればかりはねぇ…。諦めなさいよ」

「みっちゃんだって彼氏いるじゃん!」

「私は私も彼氏もノーマルだからね」

 ごもっともだ。

「で、でもなあ、つ、付き合ったりまではいかなくても、お話とか、ちょっとだけでもいいから仲良くとかしたいとか、さ…」

 恋する乙女なんだよ私…。流石にさ、その…、ファンクラブとかいる人と付き合わないまでも、ちょっとだけでもいいから接点とかほしかったり、ね…?

「…まあ、言いたいことは分からなくもないけど、ちょっとそれは難しいかなあ」

 みっちゃん曰く、ファンクラブは幸村君に近寄る女子への警戒が半端ではないらしい。故に、下心の有無に関わらずファンクラブからの激しい制裁を喰らわされるそうだ。なにそれ怖い。

「あっちから近付くならまだしも、有り得ないしねぇ…」

「だねー…」

 なんて言っていたら。

「ちょっ、遊佐っ…!」

「どうしたのカルピス」

 カルピスってあだ名ね。

「やっ、柳君がっ、テニス部の柳君があんたの事呼んでるよっ…!?」

「…は?」

 みっちゃんがブッ!とお茶を吹き出した。汚いよ、とか思う思考の余裕すらありはしなかった。

 …きっかけなんていうものは、案外身近にあるのかもしれないな、なんて感慨に耽ってしまう今日この頃。




名前変換少なっ…。

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