私と親友。


□1話
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 目が覚めた時、私は見知らぬ部屋に一人ねそべっていた。

 洗面所に行き鏡を見たとき、ああ、私は本当に異世界に来たんだ、と実感した。

 高校で切った筈の髪が長かった。高1の時に事故にあって出来た傷が消えていた。大学受験をしている筈の私の姿は中学生のときのそれで、私が今居るこの場所が異世界である、ということを深く実感した。実感せざるを得なかった。 

 あちらの世界に居る家族と友人を思い出して、私は泣いた。此処には誰も居ないのだと、嘆いた。そして、もう泣かないと決めた。

 此処には、愛美が居るから。

 愛美の願いを叶えて、愛美の幸せになる姿を見届けて、私は元の世界に戻るのだと、心に誓いをたてた。

 愛美を幸せにするために、きっと私はテニスの王子様のキャラクター達と深く関わることになるだろう。自ら、彼等と触れ合う事になるんだろう。でも、私の心の深くには関わらせない。此処に、未練は残す気はない。何時かは去るのだから、大切なものはいらない。必要なのは、愛美を幸せにしたい気持ちと、もとの世界への執着だから。





―――――――





「君がもう一人の転校生かい?」

「私は転校生ですけど。…もう一人って…?」

「ああ、実は先週もう一人転校生が来ていてね。いやあ、【偶然】同じ時期に二人転校生が来るなんて珍しいね」

「偶然、ね…」

 愛美は、どうやら先週転校したという設定らしい。まあ、そうだよな、と1人納得する。同じ日に赤の他人が二人同時に転校してくるなんて、流石に可笑しいだろうから。

「…先生」

「ん?なんだい?」

「お尋ねしたいことがあるんですけど」

 愛美が既に居るならば。私も、早く動かなければならない。

「テニス部のマネージャーって、この時期でもなれますか?」

 愛美の為に。自分の為に。
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