私と親友。


□6話
1ページ/1ページ


 まずは愛美と会わなければならない。愛美は馬鹿だ。きちんと戦略を練らないと、賢いテニス部を落とすことは難しいだろう。

「…すみません」

「ん?あー、昨日の転校生」

 そう言われて、私は彼が昨日幸村を訪ねた時に話した人だということに気付いた。

「どうも」

「なんかマネージャーになったんだって?凄いじゃん」

「凄いかなあ」

「凄いって。今まで誰が言ってもマネージャーにさせて貰えなかったらしいし」

「はあ…」

 それは、初耳だった。しかし、納得はできた。成る程、だから愛美はなれなかったのか。いや、あの子の場合はそれ以外にも理由はありそうだが。

「で、また幸村?」

「ああ、本庄愛美って居るかしら」

 その言葉に、幸村のクラスメイトの男は顔をしかめる。

「…なんで?」

「え、…ああ、なんかマネージャー希望なんでしょ?お話し聞きたいなって」

 建て前を話しながら、内心では首を傾げた。愛美を訪ねることで、何故彼は不機嫌になるのだろうか。

「止めといたら?あいつ宇宙人だし」

「宇宙人、ねえ…」

 ああ、成る程。確かに、私の知っている愛美も宇宙人だったなあ。自分はお姫様だとか、特別だとか。痛々しい台詞が多かったのを覚えている。思春期の延長だと流して聞いていたが、止めさせておけば良かった。

「まあ、宇宙人でも異国人でもいいわ。私は会わないで他人を判断したくないの」

「ふうん…。まあ、いいけど。じゃあ、ちょっと待ってて」

「悪いわね」

 彼は渋々といった様子で窓際で孤立していた女に話しかけた。話しかけられた女が振り向き、顔が見えた瞬間、私は絶句した。

 あれは、本当に愛美なのだろうか…?

 私の知っている愛美は、あんな美しい少女では、なかった。

「誰ぇ?愛美忙しいんだけどぉ」

「…愛美」

「え」

 ああ、でも、確かに愛美みたいだ。何度注意しても、このしゃべり方は直らなかった。この、人がイラつくしゃべり方。

「え…霙?」

「…久し振り、ってほどでもないかしら」

「霙…?本当に霙なの?」

「あら、偽物なんていたのかしら」

「ああ、やっと霙に会えた!嬉しい!」

「…ここじゃ、あれよね。屋上に行きましょうか」

 あまり、私達が仲が良いことは知られたくない。今のところ、視線は集めていないし、声も聞こえていないだろうから、と私は愛美を屋上に促した。





―――――――――





「じゃあ、ブン太と雅治のクラスの転校生って、霙だったんだぁ」

「そういうことよ」

 私は屋上に着いて、愛美にこれまでの事を話した。

「でも嬉しいなぁ。ここには、パパもママももう居ないもん。それに、テニプリキャラも一杯いる!私と霙も、ずっと一緒に居られる!私超幸せぇ」

「……」

 【ずっと一緒】。

 …それは、出来ないんだよ。愛美。

「…そうね、愛美」

 でも、あなたは真実を知ればきっとその現実に耐えられなくなってしまうから。

「ずっと一緒よ」

 私は、【その日】が来るまで貴女を欺き続けるよ。

 全ては、私自身の為に。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ