私と親友。


□7話
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 クラスで談笑していた時、ふと他の人の愛美への反応が気になった。

「ねえ、私の前に転校してきた人が居るんでしょ?」

「え?ああ、本庄さんのこと?」

「関わらない方がいいよ!最低なんだから!」

「水無月さんみたいないい人には無縁な人だよ」

 どうやら、最悪らしい。

 はて、一週間やそこらで、何故こうも印象が悪くなるのだろうか。ましてや、クラスも違うのだから、接触する機会なんてほとんどないだろうに。

「俺らのせいじゃろ」

「あら、仁王君」

 私と話していた女子たちは、突然の仁王の登場にキャアッと歓喜の声を上げる。…五月蝿い。

「どういう事?」

「あいつ俺らに付きまとうかからなー」

「まあ、俺らが悪いっちゅーのは正確には違うがのう。俺ら人気が高いから俺らに付きまとう奴は学校中から嫌われるんじゃ」

「なにそれ凄い」

 成る程。なんとなくだが、納得した。理解しがたいけど。要するにテニス部っていうのはアイドル的なポジションで、抜け駆けする者には制裁があると。怖いな、それ。

「なら、仁王君達と接触している私は危ないのかしら?」

 付きまとうだけでそれなら、それなりに上手くいってる、ましてやテニス部のマネージャーの私なんて、格好の標的じゃないだろうか。クラスの人達は、少なくとも好意的に見えるが。

「まあ、霙はまだそこまで目立って行動してないからね」

「それに下心無さそうだし」

「純粋な友情に見えるぜ?」

 皆の意見を聞くと、まあ、少なくとも大きな行動に出ない限りは大丈夫らしい。下心、と言われると、無いとも言い切れない。勿論彼等に恋慕の類いは抱いていないが、愛美の為、自分の為に彼等を利用しようとしているのだから、下心はあるといえばあるのだ。しかし、知られなければそんな事実は誰も気付かないのだから、どうでもいい事だろう。

「出会って早々に下心も何も持てないわよ」

「いや、そうでもないよ?仁王君達カッコいいし、学校の女の子の8割はテニス部レギュラーが好きだもん」

 頬を染め、仁王をチラチラ見ながら言うクラスメイトは、恐らく8割の中の人間なのだろう。どうでもいいが。ずいぶん、他の男の住みにくい学校だ。

「それはそれは、男性諸君は可哀想ね」

 他の学校の男子よりよほど可哀想だ。恋したら殆んどの確率でテニス部が好きな女子とか、たまったものじゃないだろう。知ったことじゃないけど。

「わあー、水無月さんわかってくれる?」

「顔は別に悪くないわよね、佐々木君とか。でもまあ、確かに仁王君達と比べると差は出るかもね」

「そうなんだよ!普通ならモテモテじゃないにしろ、浮いた話の1つや2つあってもいいのにさ、女子にとっての俺らなんて論外だぜ?」

「仕方ないじゃん、仁王君達は、その…カッコいいし」

 照れながら再び仁王をチラチラ見るこのクラスメイトは正に乙女だが、仁王の瞳は冷めている。可愛い子なのに、可哀想。

「ありがとうのう、西川。嬉しいなり」

「え!いや、その…」

 仁王の笑顔の言葉に、クラスメイトの西川さんは顔をますます赤くし、周りにいた子は嫉妬の目を向ける。女子って怖いな。

「あら、とんだ女たらしが居たものね」

「いつもだぜぃ。分かってやってるからたちが悪いよな」

「分かってなくてもたちが悪いけど」

 要するにたちが悪い。どうでもいいけど。

 だけど、これで分かった。最早彼らの中で愛美の好感度は最悪だ。じゃあ諦めるか?…馬鹿馬鹿しい。その程度で諦めるなら、最初からこんな事しない。

 テニス部を、愛美に好意的にさせる。絶対に。

 私は、その為にここにいるのだから。

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