黒子のバスケ

□確信犯
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「ひゅーがー」

「…んー?」

「ねぇ、ひゅーがー」

「……んー」


さっきからずっとこうだ。
明日は久々に休日で部活がない日だから、俺の家でダラダラすることになった。

けれど。

日向はずっと床に座ってベッドに寄りかかって座ったまま、戦国武将の本を読んでる。
俺もさっきまではベッドに寝転がって月バスを読んでた。
でも流石に一時間経つと飽きてくる訳で。

「日向ー」

「…」

ついに生返事も返ってこなくなった。
戦国武将と俺、どっちが優先だよって聞きたくなるけど…もし俺の望んでる答えが返ってこなかったらと思うと、怖くて聞けない。

俺は寝返りをうって日向に背中を向けた。


「…順平」

「……」

それでも返事はなし。


と、思ってたのに。
急に背中から温かいものに包まれた。
俺が大好きな、よく知ってる温かさ。

「…なに急に」

「それはこっちの台詞。いきなり名前なんて
呼びやがって…」

「だって日向ずっとその本読んでるし暇だったし」

日向が隣に寝転んでくる。俺を抱きしめたまま。

「つまり寂しかった、と」

「…別にそんなんじゃないし」

本当は寂しかったけれど。物凄く。

「ふーん?じゃあ何であんなに名前呼んでた?」

「……それは…」

後ろで日向がにやりと笑う気配。

「なに、本に嫉妬した?」

「そんなんじゃ!」

俺の馬鹿。
勢いで振り向いた俺は馬鹿だ。
家に帰ってきてから久しぶりに見た日向の微笑みに顔が赤くなる。

「…ばーか」

今度は正面から抱きしめられる。
悔しいから胸元に顔を埋めた。

「俺には伊月が一番だって言ってるだろ」

「…でも適当にしか返事くれなかった」

「あー…それは……」

なんでそこで言葉に詰まるのか。
それはつまり俺よりその本を優先させてたって事だろ。

「…もういいよ」

「伊月が嫉妬してくれるかなって思ったから」

「は?」

え、何言ってんのこいつ。

「だから、伊月がちょっとだけ嫉妬してくれ
るかなって」

「…確信犯かよ」

「したら案の定嫉妬してくれたし名前呼んでくれたし?」

…俺は日向の手の上で転がされてた訳か。なんかムカつく。

「だってお前こういう時くらいしか名前呼んでくんねーじゃん」

「…じゃあもう呼ばない」

「えっ!?ちょ、伊月!!」

「絶対呼ばない!」

とかいってもなんだかんだで俺から呼んじゃうんだろうけど。

「いーづーきー…悪かったって!」

再び背を向けた俺に必死に抱きつく日向。
その様子が本当に面白くて、拗ねてたのももう吹っ飛んだ。
だから顔だけ振り向いて必死な顔にキスしてやった。

「……伊月…?」

「ばーか」


たまに喧嘩したりとか、突き放したりとかしても、なんだかんだいって日向が好きなんだ
って。
日向も同じくらい俺の事思ってくれてたら嬉しい、かも。
 
 

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