リボーン

□消えた君と残った想い
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「僕が知っている“今”の沢田綱吉には程遠い」


 綱吉は地面に倒れ伏しながら雲雀を見る。傷だらけの綱吉に対し、雲雀の方は今までの戦闘を全く感じさせない。
 二人はいつものように修行をしていた。激しい戦闘な筈なのだが、雲雀は子供の手を捻るかのように簡単に綱吉をねじ伏せてしまう。

 橙色と黄色に彩られた瞳でするどく雲雀を睨んでいる。


「悔しいなら僕に勝ってみたら?」


 麗しく微笑む。笑顔とは云いにくい歪んだ肉食獣がする笑みには迫力と色気が噴き出す。まるで自分を惑わかすかのような顔に警戒心を露わにする。



「まぁ、無理だろうけど」



 雲雀は歩み寄り、近くに立つとしゃがみふわりと髪を撫でた。琥珀色が揺れる。



 ひとしきり撫でると雲雀の手は、首へ。


 首を掴む。大人の手は大きく子供の細い首は雲雀の手に被われた。綱吉は様子を窺うように無反応だ。

 それが気に入らなかったのか、顔から表情は消え失せて手に力を込める。


「─────…っ」



 苦しそうに顔を歪める。

 すると更に手に力を込めた。爪の先が少し首に刺さり痛みを訴える。



「────ごほっごほっ!!」



 息苦しさに耐えかねて咳き込む。



「…苦しい?」



 真っ暗な瞳で綱吉の様子を観察する。綱吉は雲雀の手を振り払い、空気を吸い込む。いきなり大量に吸ったため盛大に咳き込んだ。



「ごほっ、ごほっ!!」



「…死にたくない?」



 息が落ち着くと雲雀を見つめる。首を絞めた非難の視線を送るが、雲雀は我知らずと云った様子で自分の質問だけを投げつける。



「生きたい?」



「…死にたくない。じゃなければ、修行なんてしていない」



 ハイパー化が解けていないので強気に睨むと雲雀は言葉にし難い複雑な表情になった。






「───それなら戦わなければいい。そうすれば死ぬ事はない」






 表情の瞳は真っ暗で感情が読み取れない。けれど絶望しているように感じた。悲しみと後悔と絶望とぽっかり心に空いた穴。それだけは感じ取れた。






「今のままだと確実に生き残れない。行き着く先は結局は死。君は死にたくないんでしょ?─なら、」






 雲雀は見下ろし、愛おしそうな瞳で綱吉を捕らえる。














「僕に、ずっと護られてなよ」















 ───お伽話の王子に護られる姫のように。







 君はただ笑って、僕のそばにいればいい。
















(今度は死なせない)


(その感情はオレに向けられていいものじゃない)










─『消えた君と残った想い』─






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