進撃の巨人
□貪欲に
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『リヴァイ兵長!』
リヴァイにパタパタとエレンは駆けて行く。リヴァイはそれに気づくと窓掃除の手を止め、振り向きエレンを見た。
『もう終わったのか?』
『はいっ!兵長に教えてもらった通りの順番で掃除をしました!』
『…そうか』
エレンは飼い主を見るようなキラキラした目をリヴァイに向けた。その表情をエレンがリヴァイ以外に見せる事はない。
リヴァイは目を細め柔らかい表情をしてエレンの頭を撫でた。
…その場を立ち去った。
けれどしばらくの間にキラキラした瞳が瞼を離れなかった。
…何故か胸が苦しくなった。
ーーーーーー
それはある日の朝の事。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
エレン・イェーガーの部屋に叫び声が響いた。
その叫び声に叩き起こされ、エレンの部屋に真っ先に着いたのは天敵であるジャンだった。
「何だようせぇな!!」
ドカッと起こされた怒りを扉にぶつけながら勢い良く開ける。
「…っジャン!」
額に皺を作りキレているジャンにエレンは何の躊躇いもなく抱きついた。ジャンは急な突撃に驚き、抱きつかれた衝撃を受け後ろに倒れた。ドカッと痛々しい音を響かせ頭をぶつけ少し涙目になりながら、訳が分からず自分の腹の上にいるエレンを睨む。
「痛てぇだろうがっ!何しやがんだよ!」
ジャンが叫ぶと、エレンがカバッと顔を上げる。エレンの表情にジャンは固まった。
そこには顔を真っ赤し涙目に上目遣いで自分を見つめてくるエレンがいたのだ。ジャンは固まり、口をパクパクと魚のように開閉する。
「…どうしよジャン…!俺…っ、こんなの初めてでっ」
どうやら動揺しているらしいエレンにジャンは固まった思考を懸命に巡らす。
(何だこの体制!何でエレンの野郎俺に抱きついて来やがる!てか何で俺の腹の上にいんだよ、おかしいだろどう考えてもそもそも何で赤面して涙目になってんだよてか何で上目遣いなんだよキモいんだよ男のお前がしたってキモいだけなんだよどうせならミカサにされたいわ!!)
バクバクと大きく脈打つ心臓と真っ赤な顔を誤魔化すように心中で悪態をつく。
「もしかして俺何かの病気なのか…!?…っ死にたくねぇよ!まだ一匹も巨人を駆逐出来てねぇってのに…!!」
エレンの深刻な内容にジャンは逸れていた思考を呼び戻し、カバッと寝転がっていた身体を起こしエレンの肩を掴んだ。
「どういう事だそれ!説明しろ!!」
ジャンの焦った様子にエレンは素直にコクンと頷いた。