リボーン

□どうやら敵に恋をしてしまったようです。
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ーーーーーー



 12時過ぎにオレは目を覚ました。実際は寝ていた訳ではない。

 起き上がると自分の家から持ってきた便せんと鉛筆をカバンの中から取り出した。そしてオレにしては綺麗な字で便せんに鉛筆を走らせる。

「…これでよしっ、と」

 便せんにはこう書いた。


 ー皆へー


 探さないでください。




 まるで家出する奥さんみたいな内容だが、これ以上にオレの意志を伝える内容は思い浮かばなかった。仕方ない。オレはバカだったのだ。
 便せんを地面に置き、飛ばされないようその上に石を置くとその場を静かに離れる。

 そして寝ている皆が見えなくなると、遠くへと走り出した。痛いのも怖いのも、もう沢山だ。これからは平和に生きていきたい!
 その一心で。



ーーーーーー



 大分走ったと思う。
 歩を進めようとすると脚はフラつくし、体力も正直限界に近い。自分の運動能力の無さを恨んだ。
 でも、そんな事よりも今は逃げなきゃならない。もっと遠くへ行かなければダメツナのオレの脚では簡単に追いつかれてしまうだろう。

 もっと遠くへ…!と足を進めると、

 いきなり地面が傾いた。



 否、自分が足場を踏み外したと気付いた時にはもう遅かった。


 オレは崖から落ちた。崖と言ってもせいぜい四、五メートル。

 しかし流石ダメツナ。四、五メートル落ちただけで身体は傷だらけ。そしてお運悪く落下した時に、石で頭を打ってしまった。

「……い…っ」

 声を出そうとするだけで頭に痛みが反響する。痛い、ものすごく痛い。目の前もクラクラするし、何か考えようとするだけでも痛い。感じたことのない痛みに身体が縛られて動けない。それどころかだんだんと瞼が重くなって来た。

 …オレもしかして死んじゃうのかな?なんて悪い思考に発展してしまう。頭は痛いし、眠気が襲ってくる。けれどその眠気に身体を預けてしまうとすると嫌な予感がする。何か分からないが、嫌な予感がするのだ。
もしかしたらコレは寝たら死んでしまうとか、そういう予感ではないか。
 そう考えついて必死に眠気に抵抗する。
 ─寝たらダメだ…死んじゃうかも。ってそれは雪山とかか。あー何かリボじぃやゴクデラ君や山本とかの顔が浮かんでくる。あれ?これ走馬灯?いやいや、まだ死にたくないよ。早死ににも程がある。ってあれ?オレそういえばゾンビじゃなかったけ?あ、じゃあ死なないじゃん。良かった良かった。じゃあこのまま寝てもいいよね。てか、もう意識…が……──────。


 オレは眠気に耐えられず、ソンビでも死ぬことだってあると言うことを隅に追いやりつい意識を手離してしまった。

 完全に意識を手離す前、視界の端に黒い見覚えのあるマントが揺れていたのにも気づかず。




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