Short story

□夕花火【グレエル】
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かすれた風がふく。
小声で話している人の声やセミの声。
ただ私はじっと下を向き立っていた。

ほとんど夕日が沈みかける。
「もう、夜か。」
そんな事を呟いて空を見上げる。
今日はお祭りがある。
8月がもう終わろうとしている時期だ。
浴衣を着て、ギルドの前で待つ。

すると足元に人影が現れた。
ふと前を向く。
「グレイ―」
そう呟いた。
鼓動がだんだんと早くなる。
そう、目の前に彼がいるのだ。
黒い髪で顔が整っており
今日は上半身裸ってわけでもなく
着慣れたTシャツを着ている。
そんな彼が静かに笑った。
「何、緊張してんだよ、エルザ。
 顔が赤くなってんぞ。」
顔が赤く―
いつの間にか私は彼に
見とれていたみたいだ。

「なっ!い、いくぞ!」
はいはいと答えられながら
お祭りの開催場所へと歩く。

ドキッと一回、
大きな音が心に響く。

今日は特別な日なんだ。
いつもと違うんだ。
今日こそ・・・

右手にギュッと力を入れて決意した。
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