Memory

□出会い
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彼が消えて、何処か安心していた。けど、寂しさは残った。また独りに、なってしまった………。



雨が淫雨に降る。
終業式が終わって、夏休みに入るから、足早に帰宅しようとしていた。

そんな、雨の降る日だった。

目の前に、アイツに良く似た人が、倒れていた。ずぶ濡れで。
「あのっ、大丈夫ですか?」
何故か、しゃがみ込んで、手を差し伸べていた。
彼は僕の手を掴み、じっと僕の顔を見つめていた。
「………………同じ、顔………」
「うん、不思議だね…………。家は何処?」
彼は立ち上がった。身長は、僕より少し上だった。
「……………分からない。自分が何処から来たのか…………、誰なのか…………」
「えっ…………」
なら、君は、どうして、

僕と同じ顔なの?
バクラじゃないの?









「入って?」
取り敢えず、彼を家に招き入れた。びしょ濡れの季節外れの黒いコートを受け取る。
「えっと、ちょっと玄関で待ってて?タオルとか持ってくるから」
急いで靴を脱ぎ、彼が着ていたコートを急いでハンガーに掛け、お風呂場に干す。バスタオルを持って、彼の所に行った。
「はい、拭いて」
無言で体を拭く。あ、そうだ。
「ちょっと待ってて」
「?」


「体拭いたら、お風呂場に行って。着替えを置いておいたから」
「……………ありがとう」
……………何で、そんな悲しそうな顔をするの。
彼は靴を脱ぎ、足早にお風呂場へ向かった。さて僕は、彼が来るまで、制服から私服に着替えるのを待とう。
えっと、取り敢えずお茶?いや、水にしよう。
「……………着替えたぜ」
「!バ、クラ……………」
「えっ?」
「あっ、いや、何でもないよ!」
ビックリした。……………黒いコート姿もそうだったけど、僕の服を着たら、本当にあの時のバクラだ…………。
「はい座って」
とにかく、話を聞かなきゃ。
「えっと、……………、本当に何も覚えてないの?」
「ああ。何故自分が雨の中、あそこに居たのか。何があったのか。……………自分の名前すら、分からない」
つまり、あの時に負けて、その魂が現代に戻されたって事?……………けどバクラには人間としての肉体は…………。
「……………ねえ、これ、分かる?」
バクラがずっと使っていたオカルトデッキを、彼に見せてみた。ダーク・ネクロネフィアや、ヴィジャ盤を見せた。
「何か、閃いたりしない?それか、引っかかっり……………」
「……………すまねえ。何も」
「そっか…………」
心の何処か、安心していた。なら、一緒に暮らしても良いかな?
「……………ねえ、僕と一緒に暮らさない?」
「えっ…………」
「行く宛が無いんでしょ?……………僕、独りなんだ」
「……………なら、世話になる」
「良かった〜。あ、なら、名前だね!……………カタカナで、バクラ、何てどう?僕の名字なんだけどね」
「……………それでいい。お前の名前は?」
「……………了、だよ」
「了か…………。よろしくな、了」
「うん、バクラ」 
僕らは、握手を交わした。

これから、バクラと暮らすことになりました。




END
 

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