Memory

□四日目
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バクラが来て、四日目。
バクラは昨日買った服を、嬉しそうに着ていた。全く、子供だな〜。
僕はキッチンでお昼ご飯を作っていた。今日のお昼は、簡単な炒飯かな。
バクラはソファーに座って、テレビをつけて、何かを真剣に見ていた。
何を見てるのかな〜。

っ………、

バクラ、何でそれをじっと見つめているの?まさか記憶が・・・・。

『7月の第一土曜日から始まりました、古代エジプト展。大英博物館からの貴重な品々を一目見ようと、沢山の人が来日しています。』
「エジプト………、何か引っかかる…」

その言葉だけが、僕の胸に突き刺さった。

僕が怖がっていること。それは、バクラの記憶が蘇って、この僕が望んでいた日常が崩れる事。またバクラが、僕から離れて行ってしまうと言う事。
もう、一人になりたくないんだ……!

「死者の書………」

バクラが言う、一言一言が、僕の胸に突き刺さる。
そんな時だった。
「いって〜……」
「!どうした了!!」
僕はバクラに気を取られ過ぎて、包丁で指を軽く切ってしまっていた。
「大丈夫か?!」
「大丈夫、大げさだよ?」
「しかし……!あ、あれは?あの、」
「絆創膏?それならあそこの棚の、一番上に入ってるよ」
バクラは慌てて救急箱を取りに行く。僕はその間に、水で血を流していた。………こんな傷、君の心の痛みに比べたら、全然大した事無いのに。
そして蓋を開け、絆創膏を取り出して、僕の方に持って来てくれた。
「俺が貼ってやる」
慣れない手つきで、絆創膏を貼ってくれる。
「………よし」
「ありがとう」
僕はまた、まな板に向かう。だけどバクラが包丁を取り上げた。
「俺がやってやる。野菜を切るだけだろ?」
「そうだけど………、そう、だね。なら、やってもらおうかな」
言葉で説明して、慣れない手つきでバクラはキャベツやベーコンを切っていく。僕は野菜やご飯を炒めるだけ。

ありがとう、バクラ。



そうして仲良く作って、二人で食べて、洗って。
あ、テレビは消した。だって、………

バクラが消えたら、僕は、どうやって生きて行けばいいの?
君という人に出会ってしまったから、僕は一人ではいられなくなってしまったんだ。
だから、ずっと傍に居てよ。




それからしばらくして、バクラは窓の外を見つめていた。また外に、行きたいのかな………?

「また外に、行きたいの?」
「あっあぁ………」
やっぱり、エジプト展?
嫌だよ、僕は反対だよ?
君の記憶なんて、蘇らなくて良いから、僕の傍に居てよ………………


「………………けど、了が嫌がるなら、俺は外にはいかねーよ」
「バクラ………」

記憶がない君は、本当に優しい。僕を一番に思ってくれて。

「良いよ、行こう?外を見よう?」
「………ああ」
「ならさ、電車に乗って、何処か他の所に行こう」
「でんしゃ………………?」
ああ、そうだった。まだ電車や飛行機とか、普段見れないものに関しては、説明とかしてなったっけ。
「そう、電車。きっと気に入るよ?」
「そうか!なら早速行こう!」
「今からじゃ遅いよ?明日朝10時ぐらいに出掛けよう?」
「………………了が、そう言うなら」
今から電車に乗って、秋葉原を目指したら、絶対に夜遅くなっちゃうし。
「なら、ゲームしようぜ!」
「そうだね」
ゲーム。勿論デュエルだよ。………あの時バクラが使っていたオカルトデッキは、今のバクラに渡した。
僕は新しく自分のオカルトデッキを造ったんだ。

「デュエルスタート!」

さて、勝たないとね!!






END

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