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□六日目
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今日の最高気温、32℃だって。まだ7月中旬だよ?暑すぎ………。
バクラはアイスを食べながら、外を見つめていた。黄昏てるのかな………………?
そんな時、電話の音が鳴り響いた。
「はい、獏良です」
『獏良君!僕…、遊戯だよ』
「!遊戯君………」
『あのさ、今から一緒にお昼ご飯食べない?………もう一人の獏良君とも一緒で良いから』
「それは………!」
やはり、隠せなかった。あの時、遊戯君と出会ってしまった。バクラの存在が、ばれてしまった。
「………ちょっと待っててくれない?」
『あ、うん(………どうしても、もう一人の獏良君に会いたいんだ、僕は。確認したいんだ………)』
僕はバクラに聞いてみた。君に会いたい男の子が居るって。
「………別にいいぜ?どうせ俺の記憶は無いんだ」
「そっか………。………、あ、遊戯君。ば、バクラ、行くって」
『良かった!じゃ……1時にバーガーワールドに来て!』
「うん、分かったよ」
電話を切る。

心が痛かった。
遊戯君に、バクラを会わせると言う事が………。
けど、バクラ自身が良いって言ったんだから。僕は見届けるしかない。





そして、1時近くになった。遊戯君は先に居て、席に座っていた。
「ごめんね遊戯君。ちょっとこいつが服選んでてさ……」
「ううん、大丈夫だよ。………………早速、聞いても良い?」
バクラは頷いた。
「君は、千年リングの闇の人格の、バクラ君なの?」
「………………さあな。俺は記憶がねーんだ」
「記憶がないって………」
「……………話せば長くなるけど、話すね」
ここまで来たら、もう後戻りは出来ない。





途方もない話を遊戯君に話した。遊戯君は、う〜んと頭を悩ませていた。
「……って事は、やっぱりまた飛ばされて来たのかな?」
「多分そう言う事になるね。………」
バクラは水を飲みながら、外の景色を見つめていた。
「けど、良かったね、獏良君」
「!!どうして?!僕は望んでいなかったんだよ?それなのに………………!!それに比べて君は、望んでいるもんね。アテムに会いたいって」
「そりゃ、会いたいよ。けど、……………僕達は、二度と出会えなくてもいい。悔いの残らないデュエルをしたかった。だから、……会えなくても、それは、仕方の無い事だよ」
「どうして……!」
君はそんなに強いんだ………………。僕には、無いよ…………。
「獏良君……………」
僕は自分が憎い。だって、会いたくも無かった人物に、会ってしまった。けど彼には記憶が一切無くて。拠り所も無い彼を、家に招き入れた。そして、独りじゃなくなったからって、家族気分を味わったりして。
本当は遊戯君だって、こんな事をしたいって思ってる筈なのに………。
「………了。お前、俺を助けて、後悔とかしているんじゃねーか?」
「そんな訳ないよ!寧ろ、大歓迎だよ!!………」
こんな時、素直に笑えたら、良いのにね。今の僕に、笑うと言う事はとても難しかった。
バクラはそんな僕の頬に、手を触れた。
「……」
「………やっぱり、記憶がないから、優しいね」
「?えっと……、」
「僕は武藤遊戯」
「………武藤。昔、前の俺は、こんなんじゃ無かったのか?」
「うん。ぶっきら棒で、口は悪くて。残忍で………。けど、僕は今のバクラ君の事が好きだよ」
遊戯君………………。
「ありがとな、武藤」
「いえいえ」
ぱくっとハンバーガーを食べる遊戯君。………本当にアテムがそこに居たら、良いのにね………。
本当に、現実は甘くないんだね。





それから楽しい団欒が続いた。大体30分くらい、かな?バクラの失敗事とか、沢山話した。

そして、帰ることにした。
「今日はありがとう、二人とも!」
「こっちこそ、ありがとね!」
手を振り、遊戯君と別れる。今日は、色々と大変だったな………。まあ、まだ2時だけど。
「暑いから、早く帰るぞ」
「あ、待ってよ!」
先に歩き出すバクラを追いかけた。





END

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