Memory

□慌ただしい日々
1ページ/1ページ

昨日は、本当に忙しかった。
バクラをお風呂に入れるのに、すごく苦戦した。もう一人の僕は、晩御飯とか作ってくれていたし。本当、有り難い。


もう、夏休みに入って、八日目になるけれど。本当に毎日が楽しい。


遊戯君、ごめん。




「おはよう、了」
「あバクラおはよう。寝られた?」
「ああ。まあ、砂漠とは随分違うから、まだ慣れねーな」
「そう、だよね」
バクラは僕の部屋で、布団を敷いて寝てもらっている。もう一人の僕とは、一緒のベッドで。
「もう朝ごはん出来てるから。顔洗ってきて」
「分かったよ」
今バクラが着ている服。………………タオル一枚なんだよね。古代エジプトじゃそれでも平気だろうけど、それで街に出られたら………。
「ねえバク………、もう一人の僕。後で、バクラの服を買いに行かない?」
「………良いけど。お前、やっぱりその呼び方、無理なんじゃねーか?」
うっ………………。本当、そうだよ。全然慣れない。と、言うより、僕に似合ってない。
「バっくん、で良いんじゃねえか?それともバクラ君って呼ぶか?」
「うーん、………。まあ、バクラ君を短縮したら、バっくんになるし………。けど、………………」
「………なら、俺に新しい名前をくれよ。“バクラ”だって本当はお前の名字だ。せめて、………記憶がないなら、新しい、俺だけの名前が欲しい」
「バクラ………。うん、分かった。男らしい名前にするね」

なら、………………。


「ラレス?」
「うん。ラテン語で“守護神”って意味なんだ」
「守護神、か。俺に神って意味が相応しいかどうか、分からないけど。………決まりで良いぜ」
僕の頭を撫でるバクッ、ラレス。


お願い、記憶なんて、蘇らないで。



三人での朝食。バクラはまだ箸が使えないから、パンにしといた。食パンに卵焼きを乗せて。僕とラレスはご飯に味噌汁に鮭の塩焼き。定番の朝食だよ。
「「いただきます」」
「?………………いただきます」
僕らの真似をして手を合わせて言うバクラ。何だか可愛いな。
「………」
黙って食パンを齧(かじ)るバクラ。
「食べられる?」
「ああ。これ、旨いな。何て言うんだ?」
「食パンって言うんだ」
「へえ〜………」
良かった。大丈夫そうだね。
「あ、ラレスっつったよな?確かにそれなら、間違えることもねーな」
「慣れればな」

ごめん、きっと慣れない。
何度も、何度も彼と、バクラと重ねて君を、呼んでしまうよ。


「なあ、これは?」
「これ?味噌汁って言う……、飲んでみる?」
僕の飲みかけだけど、バクラにあげた。
「ごくっごくっ……………。これも旨い」
「はぁー、良かった……。なら、今日の晩御飯から出すよ」
「おう、ありがとう」
優しい笑顔。本当に、盗賊王だったのかな?
「あバクラ。今日家に居てね?君の服を買いに行くから」
「服?あー………………、頼む」
「流石に上半身裸でずっと居られたら、了にも悪影響だ」
「てめぇ、それはどう言う事だ…?」
「……あん?やんのか?」
立ち上がる二人。まずい………!
「ちょっちょっと!止めてよ!二人とも!」
止めないと、家が無くなる………!
「………………了に感謝しろよ。ラレス君」
「良く言うぜ………」
全くこの二人は………。




その後、服を買いに行った。バクラは大柄だからな。そこら辺に注意して、二人で服を選んだ。


「あ、良かった。似合ってる」
「そうか?」
「まあ、俺様の方が格好良いけどな」
「うるせーぞ、ラレス」
変な睨み合いしないでよ!



慣れないだろうけど、もう一人の僕改めラレス、と呼ぶ事になりました。
盗賊王バクラは、バクラで。
僕は了のまま。

これで、呼びやすくなったよね………?







END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ