Memory

□違う世界での彼
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昨日、了とラレスは風呂場で何かしていたらしい。まあ、大体の検討は付くけどな。

それが俺様の心を、乱した。

「………………出掛けてくる」
「え、何処に?」
玄関へと向かう。前に買ってもらったクツって奴を出して。
「………散歩だ。ついでにこの世界を見てくる」
「ちゃんと帰って来れる?」
やたらと了が、心配そうに俺様に付いて来る。
「………大丈夫だって。俺様は盗賊だ。記憶力は良いんだ」
ポンッと了の頭を撫でる。
「………、そ、だよね………。気を付けて」
「おう。じゃ、行ってくるぜ」



ったく、これが本当に盗賊王かよ。にこにこ笑顔なんか振りまいて。
けど、不思議だ。了が相手だと、本気で怒ったり、ディアバウンドを召喚しようとも思わねー。………………本当に、俺様は、新しい道を、作って行けるのか………。

それにしても、空が高いな。
日本、か。随分砂漠と気候や人が違うんだな。皆肌の色が白い。
それに、進化したな。車だっけ?あの走ってるやつ。すげーよな。たった数千年違うだけで………。いや、随分の時、か。
さて、街に出たのは良いが、何しようか………。

今、了には会いたくねえ。勿論ラレスにも………。

「あれ、獏良君………?」
「あん?………!!てめぇは!ファラオ………!」
俺様を呼んだやつは、ファラオだった。
「え?(違う、獏良君じゃない!それに、バクラ君でもない………)ちょっと待って!僕はファラオなんかじゃないよ!」
「何だと?だってその顔つき………。っと、確かにファラオに良く似てはいるが、幼いか。それに声も、違うか………」
微妙に、何か違う。ならこいつも………?了と同じなら。
「ふぅ………………。えっと、僕は武藤遊戯。獏良君の友達だよ」
「ああ、了のか。俺は………バクラだ」
「え、そうなの?」
「………………そう言う事か。おい遊戯、だっけ?どっかちゃんと話せる場所とかねーか?」
「そうだね、立ち話じゃ。それに………、(みんながこっちを見てるし)付いて来て」





遊戯に連れられて来た場所、ファミレスって言う場所らしい。
「(本当はバーガーワールドが良かったんだけど、こっちのバクラ君、あれを食べるとは思え無かったし………)あ、お金とか持って来てる?」
「ああ。これだろ?了がくれたから、あるぜ」
俺は財布ってやつを遊戯に渡した。
「………結構入ってるね。良かった、僕今日少ししか持ってなくて。流石に二人分は払えないから」
財布を俺様に返した。
「だが、どうもまだこいつの使い方を知らねえんだ。………………今まで盗みだけをして来た俺様には。教育なんてしてる暇なんて、無かったからな」
「…バクラ君………。取り敢えず、何か飲もう?」
「ん?あぁ………」
っつっても、何が何だかさっぱり………。
「(ここは僕が頼んであげた方が良いのかな?)ねえ、僕が頼もうか?」
「……ああ、任せるぜ」
「分かった(僕はコーラで平気だけど。バクラ君、何なら飲めるんだろう………?うーん)」

窓の向こうの世界。硝子の向こうの世界。俺様が見て来た世界とは、随分違う。明るく、人々が平和に暮らしている。

「………これは?」
遊戯に任せていたら、何だか変な飲み物が出て来た。
「えーと、コーヒーって言うんだ。このミルクを入れると、甘くなるよ」
「苦いのか………」
飲んでみるか。
………………それほど苦くはねーか。
「これ気に入ったぜ」
「良かった………」
「遊戯が飲んでるのは?」
「ああ、これはコーラって言うんだ。………今度ばくっ、了君に飲ませてもらいな」
「おう」
「………それで、バクラ君。いろいろ聞いてもいい?」
「……ああ、良いぜ」


それからしばらく、俺様は今までの事を全てこいつに話した。



「………そう、だったのか………。なら君が想ってる疑問は、きっと合ってるよ。僕はファラオの来世、つまり生まれ変わりなんだ」
「そう、か………。………………安心しな、遊戯。俺様はお前に、復讐の刃を向けるつもりはないさ」
「ははっ、安心したよ。………これから、本当にどうするの?」
「さあな。………過去の世界に帰れるなら、多分帰った方が良いんだろうな。けど、帰り方なんてわからねー。なら、こっちの世界に居座るしかねーって事さ」
「………うん、きっとその方が、了君にとっても、良いと思うよ」
「そっか………」
了………。
「ねえバクラ君。もし良かったら、この後一緒に来てくれない?」
「ああ、良いぜ」
何処に行くんだ?
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